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聖なる愛と殺人鬼
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わたしの愛する人はとても美しい人だった。
でもどこか潔癖で変なところがあった。
わたしはどこにでもいる貧しい娘で、見世物小屋でストリップのようなショーを子どものころからやっていた。
わたしの姉も友達も時々、客に売春を働いていた。
わたしの容姿は平凡だが、ショーに出る時だけなるべく妖艶な化粧をする。そして際どい衣装を着て客の欲望を煽る踊り子をした。
ここにいるわたしはわたしではない。客のための娼婦で、見世物の商品だ。
わたしはわたしを育ててくれた見世物小屋の主人や、仲間たちのために、愛嬌をふるまき、年を誤魔化して大人の娘のふりをして彼らに媚びを売った。
わたしはまだ処女だった。
そんな汚いけど不思議な雰囲気を創り上げる見世物小屋は、わたしにとって最高のねぐらでもあった。
わたしより妖艶で豊満で美しい踊り子はいっぱいいる。
男も時には女より美しく踊り、客に性的なサービスを与える。
情欲でわたしたちは生かされる。愛欲で生きている子ども達。
そんな深海で、わたしは昏い目をした彼にあった。
わたしは当時、いなくなった仲間のダンサーを探していた。わたしの体は子どもの頃の栄養失調でなかなか身長がのびない。胸も薄くわたしは男を悦ばせることもできないとがっかりした。
ほとんどが、一夜の愛を楽しむが、時には本当の愛に繋がり、真実の恋人になる時もある。
わたしはそんなごくまれな人たちを聖なる愛の神様に愛されたんだと思った。
わたしはこどものころ、役に立つために処女を売ろうとしたことがある。でも男のあそこは大きすぎ、わたしのあそこは小さすぎた。お互いに痛かったので途中で止めた。
それから十年。わたしはいまだに処女である。
そんなわたしに時折天使のようにお菓子をくれる人がいた。彼は不思議だった。とても上品なところがあるひとだったからだ。こんなあなぐらにいていいひとではない気がする。彼はどこかへ行くんだろう。間違って来た王子様だ。
わたしはそんな夢想をした。
そんな私の夢想もあながち妄想ではなかった。彼の母親は貴族だったらしい。とても恵まれた人たちで、何か敵に敗れて、彼の母親は信じていた夫によって始めは高級娼館へ売られた。そのごろは妻は夫の所有物だった。夫は金銭に困ったのだ。だから家畜のように信じていた妻を呆気なくお金に換えて、売った。不要な妻と子どもも追加でつけて
夫はさぞや自由と金貨を持ってほくほくと懐を温かくしただろう。
裏切られた妻は繊細で、少し頭の回線がショートした。 時折、へらへらと客に夫の名前を呼んでは殴られていた。
彼はそんな母親を見てどう思っただろう。父親をどう思ったのだろう。
段々おかしくなっていく母親。母親はまた売られ、子どもはついて行く。
この場末の見世物小屋に彼らはやってきた。おかしくなっていたけどまだ美しい母親。その母親にそっくりな人形のような顔。なんだか無表情でわたしははじめは怖かった。
でも彼はわたしの姉を慕うようになった。わたしは安堵した。そして少し得意になった。
わたしの自慢の姉は、わたしより美しく聡明だった。この見世物小屋でも何故か穢れないような綺麗な人だった。
わたしの美しい姉が、美しい彼と付き合っている様を見るのは、楽しかった。
まるで何かの絵を見ているみたいで面白かった。
わたしにとってこの世界は怖いけど面白く刺激的な世界だった。
わたしはにやにやと恋人たちを見てうっとりと夢を見た。
周囲はわたしを変な娘といったが、わたしは生きているからこの世界を思う存分楽しむのだ。
わたしはいつも笑った。愛嬌があるわたしは客に愛された。時折、あそこや胸も触られたけどわたしはかまわなかった。笑っていたら、お金や少し高価な宝石を彼らはくれた。
わたしはその度にありがとうと思う存分微笑んだ。
彼らも嬉しそうに笑った。わたしは唯何も考えずに笑った。
わたしはそのお金や宝石を綺麗な自慢の姉や仲間に分けた。わたしのような体でも物好きな客は多いらしい。
姉はそんな私を見て、いいのかとためらうように言った。何を言ってるの。仲間だしわたしの大好きな姉だもの。
良いのよ。役に立てるんなら。 わたしは心から言った。
姉は、彼の母親の病の薬の足しにしていいかとすまなそうに言った。わたしは頷いた。姉が好きな人の母親だもの。仕方がない。わたしは安心してと言った。
しばらくして彼が姉に聞いた。母親のことをありがとうと涙をこぼして心から感謝をわたしに言ってくれた。
わたしはその時、はじめて綺麗な涙と思い、彼に恋した。
勿論、姉を裏切るつもりはない。唯ほんの淡い夢見る乙女の恋だ。それは私の宝物となった。
わたしは頭がおかしいとも言われた。でもこんな世界よ。どうせなら楽しむしかないじゃない。
どうしようもない悲惨な現実を見て何になるの。
わたしは最後までわらって死んでやると決めていた。
わたしの姉が病気になった。ここでは弱いモノから死んでいく。まさかわたしの姉が病気になるとは・・
彼の母親はすっかり頭が天国へ行ってから体だけはピンピンしていた。人間の体って頭ってどうなっているのかしら。私はもう不思議でたまらなかった。
わたしは見世物小屋の主人に頼んだ。姉の病を治す薬を下さいと。主人は酒をくらいながら客に高く処女を売れと言った。わたしはなるべく高く売ってくれる奴をお願いしますと主人に懇願した。
主人は少し奇妙な目をしながらわたしのあそこを見せろと言ってわたしは見せた。
主人はこんな小さい性器じゃ役に立たねえよと言った。わたしはかまわなかった。
わたしはなんとかして穴をあけるからと主人に言った。すると主人は下卑た顔をしてわたしに悪党らしい下衆な顔を見せた。わたしはこんな顔をする人もいるんだ。お話から出てきた悪人のステレオタイプみたい・・わたしは唖然となった。
「俺がしてやろう。」
わたしはその時、聖人バレンタインの話が浮かんだ。嗚呼そうだ。わたしは恋人の縁を結ぶ聖人になるんだ。
わたしは「お願いします。」と言って。香油でわたしの穴を少しづづ拡張していく主人に感謝した。いい加減わたしも処女を捨てたかった。わたしの姉も仲間も体を売っている。
わたしは痛みと恥ずかしさで頬を紅潮した。
「お前。可愛いな。」主人はわたしを宥めるように言ってくれた。頭の軽い娘に言う安い台詞。でもそんな安い言葉がわたしのなぐさめになった。
何回も主人はわたしの胸を弄び、穴を舌で拡げたり、道具で開けようとした。痛かったけど私は我慢した。
その結果、わたしの穴は大きい性器も入れるようになった。
わたしはありがとうと主人の頬にキスをした。
わたしは主人の言う通り、一番高価な金額を与えてくれる客にわたしの処女穴を捧げた。
処女だけが好きなひともいるらしい。変な男ばかり・・
男は醜かったけど、わたしには優しかった。でも性交は激しかった。
わたしは前もって香油を一杯性器にまぶして、媚薬を飲んだ。でなければわたしは耐えられなかっただろう。
わたしは準備をするのが好きなのだ。
男はわたしを壊す勢いで大きな性器をわたしの穴にあてた。
そして勢いよく差し込んだ。ギャアと誰かが叫ぶ。わたしの悲鳴だ。わたしは唇をかみしめて耐えた。
わたしは聖人にお願いした。今だけ聖人の心をわたしにお与えください。
神様はわたしの願いをよく聞いてくれる。わたしは彼の激しい性交に耐えた。
あそこは腫れ上がって、体は叩かれて青あざや黄色に変色していたけど顔だけはやめてくれた。
わたしは長袖のワンピースで傷を誤魔化して、わたしの処女を奪った男と激しい情交を何度もした。
だんだん彼は暴力的になってわたしは首を絞められこうするとあそこが閉まるぞと言われた。わたしは思った。
なんだ。じゃあ拡張しなければよかった。それとも彼はそういうことが好きなのだろうか?
わたしは何度も壊されそうになった。わたしの眼球が目から前に読んだ絵本みたいに飛び出そう。わたしは奇妙に滑稽なわたしの死を見つめていた。これがわたしの死か・・
わたしはやめてとかすかに懇願した。男は面白くなさそうに気まぐれにわたしの首を絞めるのを止め、思い切りわたしの顔を殴りわたしの穴いっぱいに射精した。
わたしははじめて男が嫌いになった。
男はわたしの放心した状態を見て、唾を吐き金をばらまいた。ほらよ阿婆擦れ。売女。これが望みだろ。
男はわたしを蹂躙してもいらいらして不満そうに怒っていた。何故あいつはいつも怒っているようなのか?
わたしにはわからなかった。でもこれでやっと大金を得た。
わたしは姉もこんな目にあったことがあるんだろうか?と思った。姉も苦しかっただろうな。仲間にも申し訳ない事をした。わたしは何も知らなかったんだ。あんなどうしようもないひともいるんだ。
わたしは痣だらけの顔を道化の化粧で誤魔化した。
引きずられた髪も鬘で誤魔化した。長袖のドレスで主人にはあまりこの事は言うなとわたしは口止めされた。
「あいつは、時々おかしくなる男だ。女を半殺しにしている。その分大金は持っている。あいつの家は資産家だ。」
わたしが見たこともないお金がわたしに渡された。「お前は小さな体でよく耐えたよ。すげえよ。お前。」
主人は子どものように目をきらきらさせてわたしを抱きしめた。
わたしは苦笑いしてよく死ななかったなと我ながら後で震えた。
わたしは派手な格好をして、姉と彼のいる部屋に言った。彼らは変わったわたしを見て驚いたようだった。
「どうしたの。その恰好。」
仲間が、目敏い女がわたしに叫んだ。わたしは元気に笑った。
「初めて客をとったわ。彼は大金を持っていた。そのお金で薬をかったわ。闇医者だけど連れて来たわ。」
わたしは主人に頼んで高価な薬と非合法だが腕利きの医者を取り寄せた。お金ってすごい。わたしが欲しかったものがやってくる。これで助かるかも知れない。
「ねえ。どうして。長袖のドレスを着ているの。髪もへんよ。何故そんなかつらをかぶっているの。何故道化の化粧をしているの?」
わたしの仲間の一番親しい女性カーラが心配そうにわたしに言った。
「いいから。なんでもないから。終わったから。」
わたしははははと笑いながら、誤魔化した。
彼だけが冷たくわたしを見据えた。ひやりとした。怖かった。
わたしは医者が姉の看病や丁寧な治療をするのを見届けて、嗚呼神様。お助け下さいと両手を組んで祈った。
すると、カーラもわたしの真似をして祈った。
彼だけが姉を心配そうに見て、わたしを嫌悪するように哀れむように見た。何故。そんな目を?
わたしにはわからなかった。
わたしはカーラに頼んで、ひそかに治療を手伝ってくれるようお願いした。
わたしはぼろぼろになった頭。ドーランを落として青あざだらけの顔。 ワンピースを脱いで傷だらけになったわたしの体を見せた。カーラはひいと叫んで顔をしかめたが、黙って「それが大金の代償かい。」と呟いた。
わたしは水が入った桶に布を濡らして痣だらけの体を拭いた。痛みはあったが、丈夫な体に感謝した。
カーラが手伝ってわたしの顔を丁寧に拭いてくれた。
優しく背中も拭いてくれた。
あそこはわたしが自分で洗うと言ったが、カーラは無言で見せろとわたしを脅した。
わたしはそっとカーラに見せた。カーラは蒼白な顔でわたしの性器を見た。相当ボロボロになっているらしい。
わたしはカーラが涙を流しながら、何度も何度もわたしの性器を綺麗にしようとしていた。
嗚呼。カーラ。貴女がこんなに優しかったなんで。わたしは知らなかった。わたしは何も見えていなかったのね。
カーラは苦しんでいた。
「なんであんたが!そんなことまで痛いことまでしてこんな酷いことまでされて・・・・」
「わたしの大好きな姉の危機よ。ほっといて。お金が必要だったのよ。」
「カーラも姉も売春をしていたでしょ。わたしも仲間よ。必要だったのよ。」
「あんたみたいなこどものような体に酷いことをする客は人間じゃないよ!最低最悪の客だよ!あたしはそんな酷い目にあったことはない!」
「嗚呼。でもカーラ。これで大金を掴んだのよ。姉も助かるわ。」
わたしが望んだとおり、姉はみるみる良くなった。わたしは嬉しかった。神がわたしの祈りを聞いてくれたのだ。
わたしは上機嫌になった。
そのかわりわたしはしばらく寝込んだ。痛みが消えないのだ。
わたしの優しい裏切り者。カーラはわたしの体を彼にばらした。カーラめ。おしゃべりなお人よしさん。
仕方がないか。わたしとつきあってくれる奇特な女だもの。
彼は蒼白になって、わたしの体を裸にして、ボロボロになった性器も見た。
彼は嘔吐した。気持ちが悪い気持ちが悪いと呻きながらわたしを見なかった。
血の底を這うような声をして彼はわたしを見た。
「だれがやった?」
わたしは言った。
「「名前も知らない。あんな男いるんだね。」
わたしは首を振った。もう終わったことだ。わたしは目を瞑った。
わたしの首に彼の細い綺麗な手がかかった。
「汚い。穢い。売女。なんでそんな酷い事をする奴にやらせた。金か。金なのか?何故 苦しめられる?
お前みたいなガキが・・」
わたしを貶め、わたしを思い嘆いているおかしな男。でも綺麗だった。
男はみんなどこかおかしい。わたしもおかしいと言われたけどもっと変なのは男ではと思った。
「あのねえ。わたしは大事なお姉ちゃんが死ぬのが嫌だったんだよ。だからわたしはわたしの望みを叶えてくれる
客を選んだ。お姉ちゃんはこうやって助かった。わたしも生きている。どれでいいじゃないか・・」
わたしは呆れながら、彼に母親のように宥めた。「もう終わったから。もうしないから・・あんなやつとは。」
わたしは嘆くカーラと彼に誓った。お姉ちゃんには見せないでとわたしは懇願した。恥ずかしいからだ。
わたしはどうなってもいい。いてもいなくてもいい子どもと思っていた。でもカーラと彼は思ったより優しくて純粋だった。
わたしなんかのために綺麗な涙を流してくれるなんでとわたしは嗚呼神様。わたしは盲目だったのね。
わたしの暴走で傷つけたカーラと彼の心。
わたしは大事な姉のためにこうやった。これがわたしの使命とも思ったからだ。
愚かな愚かなわたしの思い。それは優しいわたしを僅かでも思ってくれる人たちを傷つける行為だった。
わたしは心底思いを告げた。
「大好きよ。カーラ。大好きよ。お姉ちゃん。大好きよ。主人。大好きよ神様。大好きよ。貴方。」
わたしは最後に彼の名前と神様と言った。
「神様。わたしははじめてカーラと貴方たちの優しい思いを受け取ったわ。わたしは一方的だったのね。
ごめんね。貴方たちを傷つけた。」
カーラはやっとわかったかいとわたしに思いをぶつけた。
「あんたは。こどもだ。わたしらに何も考えずに与えて。わたしらはあんたから何かを奪っているんだよ。
あんたが傷ついて、あんたの大事な姉ちゃんは助かった。でも悔しいんだよ。情けないんだよ。なんでこうしないとわたしらは救われないのかって。嫌なんだよ。もう。」
「あんたは絶対酷いことをする客と寝るな。もう!」
わたしはカーラの嘆きと怒りを受け取った。なんだか体がポカポカしてきた。
嗚呼・・カーラはずっと悩んでいたんだ。お姉ちゃんも彼も苦しんでいたんだろうか?
わたしはごめんと言った。
体が良くなった姉はこの事態をカーラから聞いて、怒りと悲しみの表情で寝込むわたしを見た。
「貴方のお陰で助かったわ。でももうやらないで・・・」
わたしはごめんごめんと軽く謝った。大丈夫。すぐ直るから・・とわたしはまた嘘をついた。
姉は泣きそうな顔をしてしばらくわたしの傍らから離れなかった。
わたしはその間に、わたしの心臓がおかしいことに気づいた。
「お姉ちゃん。いつまでもここにいないでよ。疲れるから。お姉ちゃんの美味しいスープ飲みたい。
また作って。」
お姉ちゃんは嬉しそうに頷いて、カーラと台所へ行った。
その間、わたしはしばらく心臓に手を当てた。嗚呼。大量出血が止まらなかったからだ。わたしの変な身体は
あいつとの性交に耐えられなかったんだ。少しずつあいつはわたしの命を奪っていったんだ。
わたしはゆっくりと感覚がなくなっていく身体を感じた。麻痺を感じた。
心臓に激痛が走る。わたしは聖バレンタインになったんだ。
わたしの心臓ははじめて性交した男に息を止められた。ドクンドクンと脈打つ鼓動が少しずつ小さくなっていく。
わたしは最後に神様とつぶやいて、みんなに会いたいなと思いながら笑って息絶えた。
わたしは決めていた。こんな世の中笑って生きてやると。
わたしは楽しかった。彼らのような優しい純粋な人も居たことがわかってわたしは嬉しかった。
神様が与えた最大の贈り物だ。
わたしは自分の世界に生きている道化だった。
はじめて彼らの思いを受け取ってわたしは世界で一番幸福な子どもとして死んだ。
わたしの死に顔は綺麗だろうか?彼らを安堵させる微笑を浮かべているだろうか?
そうだといい。わたしの心臓は止まりわたしは死んだ。
聖なる日だ。2月14日だ。
スープを作っていそいそと持ってきたカーラとお姉ちゃんはわたしの異変に気付いて叫んだ。喚きちらした。
でももうわたしは何も言えない。
わたしは死んだからだ。
彼が来る。わたしが恋した姉の恋人。彼は呆然とわたしの微笑んだ死に顔。冷たくなってくる死体を眺めた。
姉とカーラは必死で温めようとわたしの体に縋り付く。
無理だ。神様が私を連れに来たのだ。
主人も呆然とわたしの死体を見つめた。
しばらくしてわたしは見世物小屋のなくなった人たちのいる墓所へ運ばれた。
なんだか寂しいところ。わたしは悲しくなった。
わたしは一番きれいな服を着て柩に入れられた。
なんだが死んだ後のほうが一番綺麗みたいわたしは? わたしはいま死者の意識として彼らの傍にいる。
お姉ちゃんが泣いていた。彼はお姉ちゃんを大切そうに抱いていた。良いなあ。
カーラも馬鹿。馬鹿と言いながら綺麗な花を摘みながらわたしの墓の周りを綺麗にしていた。
他の仲間隊も神妙な顔をして墓を見ていた。
わたしをはじめて犯した主人が気まずげに墓を見ていた。主人はわたしの好きなお菓子やブローチを墓に供えた。
さよなら。わたしは呟いた。
わたしはこれからどこにいくのかと思った。神様は?迎えが来ない?
わたしは途方に暮れた。
しばらくわたしはわたしの墓の周りを漂っていた。
すると、シャベルをもった彼が主人と共に夜中にやってきた。
何をするのかとわたしは不思議に思った。
なんと彼らはわたしの死体を掘り返した。そしてカーラとお姉ちゃんには黙ってひそかに死体処理人に頼んで
泥を落として生前より綺麗にしてくれと頼んでいた。
わたしの遺体に何をする気なの?狂ったの?もっとおかしくなったの?
わたしははらはらした。
わたしの体は清められた。わたしの体には以前よりもっと美しい衣装が着せられた。
信じがたいことが起こった。わたしの死体が彼に犯されたのだ。主人も気まずげに見ていた。
「ねえ。君は僕が好きだったよね。お姉ちゃんもすきだったけど僕には恋をしただろう。
でも君はあまりにも子どもだった。体も精神も・・なのにぼくたちを守ろうとして馬鹿みたいな女と思っていたよ。」
嗚呼。ばれてたんだ。わたしは舌を出した。ごめん。悩ませて。
わたしは落ち込んだ。
「ねえ。初めては主人と、とても嫌な奴だったなんで。可哀そうだろう。上書きしなきゃ。ぼくに恋していた
ガキだからな。俺の性器で清めてやらないと。」
ええええ・・わたしは驚いた。
わたしの死体は、彼の美しい性器で犯された。わたしは唯、唖然と見つめることしかできなかった。
わたしは亡霊。死者の意識だからだ。彼らには見えない。聞こえないだろう。
ねえねえ。貴方。もっと狂っている?もしかしてお母さんやお父さんのことやわたしのこと色々あって人格が壊れた?
わたしはああと思った。彼は優しくて純粋だったのに・・色々壊れて歪んてしまった。
主人も気まずけに彼から目をそらした。彼には逆らえないようだ。なんだか力関係を察してわたしは呆然となった。
「お前も彼女の初めてを奪った。命を間接的にとはいえ奪った人間だ。彼女ともう一度まぐわって聖なる行為をするんだ。」
わたしは呆れた。わたしの体はいつの間にか彼らの聖遺体となっている。そして死体との性交が聖なる儀式となっている。どこをどうしたらそうなるの?でもああ、わたしも聖バレンタインの事を思い浮かべた。
聖なるものっていったい・・?
わたしはこの不条理な現実に唯、映画のように観客として見つめることしかできなかった。
傍らには聖者たち。聖女たちが居た。 拷問にあって殉死した人たち。思い出した。聖者や聖女って大抵ろくでもない末路を迎える。悲惨な末路を。
まさか本当にわたしも聖者の末席にいるの?見知らぬ修道女の衣装を着た優しい女性が目を潰された顔を向けた。
ああ。宗教の弾圧のため、権力者に目を潰された聖女だ。
「ごめんな。ごめんな。」
主人は謝りながらわたしの性器に猛る性器を突っ込んだ。うわあ。気持ちが悪いだろう。死体だよ。それも子どもだ。普通の人は嘔吐する性交だよ!
なんと。彼は謝りながら冷たい遺体に射精した。狂ってるよ。狂ってるよ。わたしは突っ込まずにはいられなかった。これがまだ続くのか?聖なる者って。もしかしてものすごく悲惨な受難を味わった者じゃないのか?
わたしは、他の聖女に宥められながら呆然と見つめていた。
更に追い打ちをかけるように彼らは死体を剥製のようにすると言った。ナアニ、ソレ。
わたしは唯、わたしの内臓が全部とられて、剥製職人に綺麗に表れて、腐らない薬剤を入れられ固められる様を唯見つめていた。
わたしの剥製人形は不思議と生前より美しかった。
もう何も言うまい・・わたしは全てを悟った眼をした。ああ。お姉ちゃん。カーラ気を付けてね。
貴女たちの親しい人は狂って壊れていますよって警告したい。でも伝わらない。神様。これは何の罰なの?
お願いだからカーラとお姉ちゃんは何も知らない幸福を持ってほしい。
わたしは胸と腹が痛いよ!もうないはずの痛みが止まらない!
彼らは狂信者となった。わたしの聖遺体は大事に一番綺麗な部屋の中に隠された。
それから彼らは子どもを犯したり、赤ん坊を売る悪質な低劣などうしようもない屑を殺し始めた。
前々から、良心はあったが、弱くて見ないふりをしていた主人。そしてこどものわたしを犯した事実。
子どもが犠牲になってお姉ちゃんが救われたという事実は何か宗教めいた啓示が彼らにあったらしい。
主人は良心を取り戻し。わたしをもう一度犯すことで力が欲しかったらしい。
どうしても許せなかった悪を殺したかったらしい。でも勇気がなかったようだ。
わたしの死が勇気をもたらしてしまったらしい。
彼らは悪を滅ぼす屑を滅ぼす殺人鬼と化した。わたしを犯した客も惨たらしい拷問の末亡くなった。
わたしは嫌なやつだったけど・・あまりにも酷すぎて俯いた。
彼らはどうしようもない屑と悪を殺す殺人鬼を集めて、殺し続けた。
あのさあ・・あんたら。生きているときはわたしを頭のオカシイガキと見ていたよね。
なのに。なんで死んだら聖者と崇拝するの?
わけわからない・・
聖者と聖女が冷や汗を流しながら言った。『神様は時折そういう悪戯や試練を行うのよ。
聖は穢れと同じものよ。
抑えられない感情や、聖なる感情。美しい感情を芽生えさせたのは貴方なのよ。でもその分、復讐やどうしてもゆるせない悪や屑に対する嫌悪と殺意も高まるみたい。』
『あなたは世界を恨まなかったわ。あなたはあなたなりに大事な人を守った。それに貴方は満足して微笑んで死んだわ。それは奇跡なんだよ。貴方は聖なる資質があったから。』
『ほとんどの人は怨嗟しながら死んでいくわ。でも貴方はどんなに酷い目に合っても世界を恨まなかった。憎まなかった。感謝していたわ。カーラと彼の僅かな優しい心を守ったのは貴方のお陰。主人の腐った良心を芽生えさせたのは貴方のお陰。お姉様の命を救ったのもあなたのお陰。他の仲間たちも聖なる心に触れて生きようとしているよ。
果てまでしっかりとね。』
えええええ・・わたしは呆然とした。
そんな影響をわたしは彼らに与えたのか?
『それが聖者や聖女と呼ばれる者よ。』
わたしは神様の途方もない真理に呆然とした。今は唯死者の世界で聖者たちと戯れながら、神様を待つしかない。
でも同時にわたしは殺人鬼を生み出してしまった。いいのか?
わたしは矛盾に悩んだ。
聖女や聖者たちは微笑んでいった。
『そういうものなの。世界はびっくり箱なのよ。美しく醜い世界なの。殺人鬼となった人は、世界の汚さに耐えられなかったのよ。』
ああ・・わたしは異様に納得してしまった。わたしを売女と穢いと言いながら犯す彼。
彼は誰よりも純粋で聖なる意識に触れてしまったんだ。
それじゃあ殺人鬼になるのも無理はない。
聖なる愛に触れた彼は殺人鬼となった。こんな事あるか?いいの?
わたしは途方に暮れて聖女たちに尋ねた。
『なるようになるわ』
彼らもいつかは百年先には私たちの元へ来るわ。貴方は彼らの聖なる者として神様の元へ連れて行くのよ。
その時まで貴方は彼らの運命の行方を見届けるのよ。
わたしは愕然となった。嘘でしょう。わたしが彼らの魂を連れて行くの?
そうだよと言われて、わたしは聖なるものとして彼らの終わりを待った。
聖なる愛と殺人鬼。奇妙な奇妙な世界。これが私と彼らの物語の始まりと終わりだった。
でもどこか潔癖で変なところがあった。
わたしはどこにでもいる貧しい娘で、見世物小屋でストリップのようなショーを子どものころからやっていた。
わたしの姉も友達も時々、客に売春を働いていた。
わたしの容姿は平凡だが、ショーに出る時だけなるべく妖艶な化粧をする。そして際どい衣装を着て客の欲望を煽る踊り子をした。
ここにいるわたしはわたしではない。客のための娼婦で、見世物の商品だ。
わたしはわたしを育ててくれた見世物小屋の主人や、仲間たちのために、愛嬌をふるまき、年を誤魔化して大人の娘のふりをして彼らに媚びを売った。
わたしはまだ処女だった。
そんな汚いけど不思議な雰囲気を創り上げる見世物小屋は、わたしにとって最高のねぐらでもあった。
わたしより妖艶で豊満で美しい踊り子はいっぱいいる。
男も時には女より美しく踊り、客に性的なサービスを与える。
情欲でわたしたちは生かされる。愛欲で生きている子ども達。
そんな深海で、わたしは昏い目をした彼にあった。
わたしは当時、いなくなった仲間のダンサーを探していた。わたしの体は子どもの頃の栄養失調でなかなか身長がのびない。胸も薄くわたしは男を悦ばせることもできないとがっかりした。
ほとんどが、一夜の愛を楽しむが、時には本当の愛に繋がり、真実の恋人になる時もある。
わたしはそんなごくまれな人たちを聖なる愛の神様に愛されたんだと思った。
わたしはこどものころ、役に立つために処女を売ろうとしたことがある。でも男のあそこは大きすぎ、わたしのあそこは小さすぎた。お互いに痛かったので途中で止めた。
それから十年。わたしはいまだに処女である。
そんなわたしに時折天使のようにお菓子をくれる人がいた。彼は不思議だった。とても上品なところがあるひとだったからだ。こんなあなぐらにいていいひとではない気がする。彼はどこかへ行くんだろう。間違って来た王子様だ。
わたしはそんな夢想をした。
そんな私の夢想もあながち妄想ではなかった。彼の母親は貴族だったらしい。とても恵まれた人たちで、何か敵に敗れて、彼の母親は信じていた夫によって始めは高級娼館へ売られた。そのごろは妻は夫の所有物だった。夫は金銭に困ったのだ。だから家畜のように信じていた妻を呆気なくお金に換えて、売った。不要な妻と子どもも追加でつけて
夫はさぞや自由と金貨を持ってほくほくと懐を温かくしただろう。
裏切られた妻は繊細で、少し頭の回線がショートした。 時折、へらへらと客に夫の名前を呼んでは殴られていた。
彼はそんな母親を見てどう思っただろう。父親をどう思ったのだろう。
段々おかしくなっていく母親。母親はまた売られ、子どもはついて行く。
この場末の見世物小屋に彼らはやってきた。おかしくなっていたけどまだ美しい母親。その母親にそっくりな人形のような顔。なんだか無表情でわたしははじめは怖かった。
でも彼はわたしの姉を慕うようになった。わたしは安堵した。そして少し得意になった。
わたしの自慢の姉は、わたしより美しく聡明だった。この見世物小屋でも何故か穢れないような綺麗な人だった。
わたしの美しい姉が、美しい彼と付き合っている様を見るのは、楽しかった。
まるで何かの絵を見ているみたいで面白かった。
わたしにとってこの世界は怖いけど面白く刺激的な世界だった。
わたしはにやにやと恋人たちを見てうっとりと夢を見た。
周囲はわたしを変な娘といったが、わたしは生きているからこの世界を思う存分楽しむのだ。
わたしはいつも笑った。愛嬌があるわたしは客に愛された。時折、あそこや胸も触られたけどわたしはかまわなかった。笑っていたら、お金や少し高価な宝石を彼らはくれた。
わたしはその度にありがとうと思う存分微笑んだ。
彼らも嬉しそうに笑った。わたしは唯何も考えずに笑った。
わたしはそのお金や宝石を綺麗な自慢の姉や仲間に分けた。わたしのような体でも物好きな客は多いらしい。
姉はそんな私を見て、いいのかとためらうように言った。何を言ってるの。仲間だしわたしの大好きな姉だもの。
良いのよ。役に立てるんなら。 わたしは心から言った。
姉は、彼の母親の病の薬の足しにしていいかとすまなそうに言った。わたしは頷いた。姉が好きな人の母親だもの。仕方がない。わたしは安心してと言った。
しばらくして彼が姉に聞いた。母親のことをありがとうと涙をこぼして心から感謝をわたしに言ってくれた。
わたしはその時、はじめて綺麗な涙と思い、彼に恋した。
勿論、姉を裏切るつもりはない。唯ほんの淡い夢見る乙女の恋だ。それは私の宝物となった。
わたしは頭がおかしいとも言われた。でもこんな世界よ。どうせなら楽しむしかないじゃない。
どうしようもない悲惨な現実を見て何になるの。
わたしは最後までわらって死んでやると決めていた。
わたしの姉が病気になった。ここでは弱いモノから死んでいく。まさかわたしの姉が病気になるとは・・
彼の母親はすっかり頭が天国へ行ってから体だけはピンピンしていた。人間の体って頭ってどうなっているのかしら。私はもう不思議でたまらなかった。
わたしは見世物小屋の主人に頼んだ。姉の病を治す薬を下さいと。主人は酒をくらいながら客に高く処女を売れと言った。わたしはなるべく高く売ってくれる奴をお願いしますと主人に懇願した。
主人は少し奇妙な目をしながらわたしのあそこを見せろと言ってわたしは見せた。
主人はこんな小さい性器じゃ役に立たねえよと言った。わたしはかまわなかった。
わたしはなんとかして穴をあけるからと主人に言った。すると主人は下卑た顔をしてわたしに悪党らしい下衆な顔を見せた。わたしはこんな顔をする人もいるんだ。お話から出てきた悪人のステレオタイプみたい・・わたしは唖然となった。
「俺がしてやろう。」
わたしはその時、聖人バレンタインの話が浮かんだ。嗚呼そうだ。わたしは恋人の縁を結ぶ聖人になるんだ。
わたしは「お願いします。」と言って。香油でわたしの穴を少しづづ拡張していく主人に感謝した。いい加減わたしも処女を捨てたかった。わたしの姉も仲間も体を売っている。
わたしは痛みと恥ずかしさで頬を紅潮した。
「お前。可愛いな。」主人はわたしを宥めるように言ってくれた。頭の軽い娘に言う安い台詞。でもそんな安い言葉がわたしのなぐさめになった。
何回も主人はわたしの胸を弄び、穴を舌で拡げたり、道具で開けようとした。痛かったけど私は我慢した。
その結果、わたしの穴は大きい性器も入れるようになった。
わたしはありがとうと主人の頬にキスをした。
わたしは主人の言う通り、一番高価な金額を与えてくれる客にわたしの処女穴を捧げた。
処女だけが好きなひともいるらしい。変な男ばかり・・
男は醜かったけど、わたしには優しかった。でも性交は激しかった。
わたしは前もって香油を一杯性器にまぶして、媚薬を飲んだ。でなければわたしは耐えられなかっただろう。
わたしは準備をするのが好きなのだ。
男はわたしを壊す勢いで大きな性器をわたしの穴にあてた。
そして勢いよく差し込んだ。ギャアと誰かが叫ぶ。わたしの悲鳴だ。わたしは唇をかみしめて耐えた。
わたしは聖人にお願いした。今だけ聖人の心をわたしにお与えください。
神様はわたしの願いをよく聞いてくれる。わたしは彼の激しい性交に耐えた。
あそこは腫れ上がって、体は叩かれて青あざや黄色に変色していたけど顔だけはやめてくれた。
わたしは長袖のワンピースで傷を誤魔化して、わたしの処女を奪った男と激しい情交を何度もした。
だんだん彼は暴力的になってわたしは首を絞められこうするとあそこが閉まるぞと言われた。わたしは思った。
なんだ。じゃあ拡張しなければよかった。それとも彼はそういうことが好きなのだろうか?
わたしは何度も壊されそうになった。わたしの眼球が目から前に読んだ絵本みたいに飛び出そう。わたしは奇妙に滑稽なわたしの死を見つめていた。これがわたしの死か・・
わたしはやめてとかすかに懇願した。男は面白くなさそうに気まぐれにわたしの首を絞めるのを止め、思い切りわたしの顔を殴りわたしの穴いっぱいに射精した。
わたしははじめて男が嫌いになった。
男はわたしの放心した状態を見て、唾を吐き金をばらまいた。ほらよ阿婆擦れ。売女。これが望みだろ。
男はわたしを蹂躙してもいらいらして不満そうに怒っていた。何故あいつはいつも怒っているようなのか?
わたしにはわからなかった。でもこれでやっと大金を得た。
わたしは姉もこんな目にあったことがあるんだろうか?と思った。姉も苦しかっただろうな。仲間にも申し訳ない事をした。わたしは何も知らなかったんだ。あんなどうしようもないひともいるんだ。
わたしは痣だらけの顔を道化の化粧で誤魔化した。
引きずられた髪も鬘で誤魔化した。長袖のドレスで主人にはあまりこの事は言うなとわたしは口止めされた。
「あいつは、時々おかしくなる男だ。女を半殺しにしている。その分大金は持っている。あいつの家は資産家だ。」
わたしが見たこともないお金がわたしに渡された。「お前は小さな体でよく耐えたよ。すげえよ。お前。」
主人は子どものように目をきらきらさせてわたしを抱きしめた。
わたしは苦笑いしてよく死ななかったなと我ながら後で震えた。
わたしは派手な格好をして、姉と彼のいる部屋に言った。彼らは変わったわたしを見て驚いたようだった。
「どうしたの。その恰好。」
仲間が、目敏い女がわたしに叫んだ。わたしは元気に笑った。
「初めて客をとったわ。彼は大金を持っていた。そのお金で薬をかったわ。闇医者だけど連れて来たわ。」
わたしは主人に頼んで高価な薬と非合法だが腕利きの医者を取り寄せた。お金ってすごい。わたしが欲しかったものがやってくる。これで助かるかも知れない。
「ねえ。どうして。長袖のドレスを着ているの。髪もへんよ。何故そんなかつらをかぶっているの。何故道化の化粧をしているの?」
わたしの仲間の一番親しい女性カーラが心配そうにわたしに言った。
「いいから。なんでもないから。終わったから。」
わたしははははと笑いながら、誤魔化した。
彼だけが冷たくわたしを見据えた。ひやりとした。怖かった。
わたしは医者が姉の看病や丁寧な治療をするのを見届けて、嗚呼神様。お助け下さいと両手を組んで祈った。
すると、カーラもわたしの真似をして祈った。
彼だけが姉を心配そうに見て、わたしを嫌悪するように哀れむように見た。何故。そんな目を?
わたしにはわからなかった。
わたしはカーラに頼んで、ひそかに治療を手伝ってくれるようお願いした。
わたしはぼろぼろになった頭。ドーランを落として青あざだらけの顔。 ワンピースを脱いで傷だらけになったわたしの体を見せた。カーラはひいと叫んで顔をしかめたが、黙って「それが大金の代償かい。」と呟いた。
わたしは水が入った桶に布を濡らして痣だらけの体を拭いた。痛みはあったが、丈夫な体に感謝した。
カーラが手伝ってわたしの顔を丁寧に拭いてくれた。
優しく背中も拭いてくれた。
あそこはわたしが自分で洗うと言ったが、カーラは無言で見せろとわたしを脅した。
わたしはそっとカーラに見せた。カーラは蒼白な顔でわたしの性器を見た。相当ボロボロになっているらしい。
わたしはカーラが涙を流しながら、何度も何度もわたしの性器を綺麗にしようとしていた。
嗚呼。カーラ。貴女がこんなに優しかったなんで。わたしは知らなかった。わたしは何も見えていなかったのね。
カーラは苦しんでいた。
「なんであんたが!そんなことまで痛いことまでしてこんな酷いことまでされて・・・・」
「わたしの大好きな姉の危機よ。ほっといて。お金が必要だったのよ。」
「カーラも姉も売春をしていたでしょ。わたしも仲間よ。必要だったのよ。」
「あんたみたいなこどものような体に酷いことをする客は人間じゃないよ!最低最悪の客だよ!あたしはそんな酷い目にあったことはない!」
「嗚呼。でもカーラ。これで大金を掴んだのよ。姉も助かるわ。」
わたしが望んだとおり、姉はみるみる良くなった。わたしは嬉しかった。神がわたしの祈りを聞いてくれたのだ。
わたしは上機嫌になった。
そのかわりわたしはしばらく寝込んだ。痛みが消えないのだ。
わたしの優しい裏切り者。カーラはわたしの体を彼にばらした。カーラめ。おしゃべりなお人よしさん。
仕方がないか。わたしとつきあってくれる奇特な女だもの。
彼は蒼白になって、わたしの体を裸にして、ボロボロになった性器も見た。
彼は嘔吐した。気持ちが悪い気持ちが悪いと呻きながらわたしを見なかった。
血の底を這うような声をして彼はわたしを見た。
「だれがやった?」
わたしは言った。
「「名前も知らない。あんな男いるんだね。」
わたしは首を振った。もう終わったことだ。わたしは目を瞑った。
わたしの首に彼の細い綺麗な手がかかった。
「汚い。穢い。売女。なんでそんな酷い事をする奴にやらせた。金か。金なのか?何故 苦しめられる?
お前みたいなガキが・・」
わたしを貶め、わたしを思い嘆いているおかしな男。でも綺麗だった。
男はみんなどこかおかしい。わたしもおかしいと言われたけどもっと変なのは男ではと思った。
「あのねえ。わたしは大事なお姉ちゃんが死ぬのが嫌だったんだよ。だからわたしはわたしの望みを叶えてくれる
客を選んだ。お姉ちゃんはこうやって助かった。わたしも生きている。どれでいいじゃないか・・」
わたしは呆れながら、彼に母親のように宥めた。「もう終わったから。もうしないから・・あんなやつとは。」
わたしは嘆くカーラと彼に誓った。お姉ちゃんには見せないでとわたしは懇願した。恥ずかしいからだ。
わたしはどうなってもいい。いてもいなくてもいい子どもと思っていた。でもカーラと彼は思ったより優しくて純粋だった。
わたしなんかのために綺麗な涙を流してくれるなんでとわたしは嗚呼神様。わたしは盲目だったのね。
わたしの暴走で傷つけたカーラと彼の心。
わたしは大事な姉のためにこうやった。これがわたしの使命とも思ったからだ。
愚かな愚かなわたしの思い。それは優しいわたしを僅かでも思ってくれる人たちを傷つける行為だった。
わたしは心底思いを告げた。
「大好きよ。カーラ。大好きよ。お姉ちゃん。大好きよ。主人。大好きよ神様。大好きよ。貴方。」
わたしは最後に彼の名前と神様と言った。
「神様。わたしははじめてカーラと貴方たちの優しい思いを受け取ったわ。わたしは一方的だったのね。
ごめんね。貴方たちを傷つけた。」
カーラはやっとわかったかいとわたしに思いをぶつけた。
「あんたは。こどもだ。わたしらに何も考えずに与えて。わたしらはあんたから何かを奪っているんだよ。
あんたが傷ついて、あんたの大事な姉ちゃんは助かった。でも悔しいんだよ。情けないんだよ。なんでこうしないとわたしらは救われないのかって。嫌なんだよ。もう。」
「あんたは絶対酷いことをする客と寝るな。もう!」
わたしはカーラの嘆きと怒りを受け取った。なんだか体がポカポカしてきた。
嗚呼・・カーラはずっと悩んでいたんだ。お姉ちゃんも彼も苦しんでいたんだろうか?
わたしはごめんと言った。
体が良くなった姉はこの事態をカーラから聞いて、怒りと悲しみの表情で寝込むわたしを見た。
「貴方のお陰で助かったわ。でももうやらないで・・・」
わたしはごめんごめんと軽く謝った。大丈夫。すぐ直るから・・とわたしはまた嘘をついた。
姉は泣きそうな顔をしてしばらくわたしの傍らから離れなかった。
わたしはその間に、わたしの心臓がおかしいことに気づいた。
「お姉ちゃん。いつまでもここにいないでよ。疲れるから。お姉ちゃんの美味しいスープ飲みたい。
また作って。」
お姉ちゃんは嬉しそうに頷いて、カーラと台所へ行った。
その間、わたしはしばらく心臓に手を当てた。嗚呼。大量出血が止まらなかったからだ。わたしの変な身体は
あいつとの性交に耐えられなかったんだ。少しずつあいつはわたしの命を奪っていったんだ。
わたしはゆっくりと感覚がなくなっていく身体を感じた。麻痺を感じた。
心臓に激痛が走る。わたしは聖バレンタインになったんだ。
わたしの心臓ははじめて性交した男に息を止められた。ドクンドクンと脈打つ鼓動が少しずつ小さくなっていく。
わたしは最後に神様とつぶやいて、みんなに会いたいなと思いながら笑って息絶えた。
わたしは決めていた。こんな世の中笑って生きてやると。
わたしは楽しかった。彼らのような優しい純粋な人も居たことがわかってわたしは嬉しかった。
神様が与えた最大の贈り物だ。
わたしは自分の世界に生きている道化だった。
はじめて彼らの思いを受け取ってわたしは世界で一番幸福な子どもとして死んだ。
わたしの死に顔は綺麗だろうか?彼らを安堵させる微笑を浮かべているだろうか?
そうだといい。わたしの心臓は止まりわたしは死んだ。
聖なる日だ。2月14日だ。
スープを作っていそいそと持ってきたカーラとお姉ちゃんはわたしの異変に気付いて叫んだ。喚きちらした。
でももうわたしは何も言えない。
わたしは死んだからだ。
彼が来る。わたしが恋した姉の恋人。彼は呆然とわたしの微笑んだ死に顔。冷たくなってくる死体を眺めた。
姉とカーラは必死で温めようとわたしの体に縋り付く。
無理だ。神様が私を連れに来たのだ。
主人も呆然とわたしの死体を見つめた。
しばらくしてわたしは見世物小屋のなくなった人たちのいる墓所へ運ばれた。
なんだか寂しいところ。わたしは悲しくなった。
わたしは一番きれいな服を着て柩に入れられた。
なんだが死んだ後のほうが一番綺麗みたいわたしは? わたしはいま死者の意識として彼らの傍にいる。
お姉ちゃんが泣いていた。彼はお姉ちゃんを大切そうに抱いていた。良いなあ。
カーラも馬鹿。馬鹿と言いながら綺麗な花を摘みながらわたしの墓の周りを綺麗にしていた。
他の仲間隊も神妙な顔をして墓を見ていた。
わたしをはじめて犯した主人が気まずげに墓を見ていた。主人はわたしの好きなお菓子やブローチを墓に供えた。
さよなら。わたしは呟いた。
わたしはこれからどこにいくのかと思った。神様は?迎えが来ない?
わたしは途方に暮れた。
しばらくわたしはわたしの墓の周りを漂っていた。
すると、シャベルをもった彼が主人と共に夜中にやってきた。
何をするのかとわたしは不思議に思った。
なんと彼らはわたしの死体を掘り返した。そしてカーラとお姉ちゃんには黙ってひそかに死体処理人に頼んで
泥を落として生前より綺麗にしてくれと頼んでいた。
わたしの遺体に何をする気なの?狂ったの?もっとおかしくなったの?
わたしははらはらした。
わたしの体は清められた。わたしの体には以前よりもっと美しい衣装が着せられた。
信じがたいことが起こった。わたしの死体が彼に犯されたのだ。主人も気まずげに見ていた。
「ねえ。君は僕が好きだったよね。お姉ちゃんもすきだったけど僕には恋をしただろう。
でも君はあまりにも子どもだった。体も精神も・・なのにぼくたちを守ろうとして馬鹿みたいな女と思っていたよ。」
嗚呼。ばれてたんだ。わたしは舌を出した。ごめん。悩ませて。
わたしは落ち込んだ。
「ねえ。初めては主人と、とても嫌な奴だったなんで。可哀そうだろう。上書きしなきゃ。ぼくに恋していた
ガキだからな。俺の性器で清めてやらないと。」
ええええ・・わたしは驚いた。
わたしの死体は、彼の美しい性器で犯された。わたしは唯、唖然と見つめることしかできなかった。
わたしは亡霊。死者の意識だからだ。彼らには見えない。聞こえないだろう。
ねえねえ。貴方。もっと狂っている?もしかしてお母さんやお父さんのことやわたしのこと色々あって人格が壊れた?
わたしはああと思った。彼は優しくて純粋だったのに・・色々壊れて歪んてしまった。
主人も気まずけに彼から目をそらした。彼には逆らえないようだ。なんだか力関係を察してわたしは呆然となった。
「お前も彼女の初めてを奪った。命を間接的にとはいえ奪った人間だ。彼女ともう一度まぐわって聖なる行為をするんだ。」
わたしは呆れた。わたしの体はいつの間にか彼らの聖遺体となっている。そして死体との性交が聖なる儀式となっている。どこをどうしたらそうなるの?でもああ、わたしも聖バレンタインの事を思い浮かべた。
聖なるものっていったい・・?
わたしはこの不条理な現実に唯、映画のように観客として見つめることしかできなかった。
傍らには聖者たち。聖女たちが居た。 拷問にあって殉死した人たち。思い出した。聖者や聖女って大抵ろくでもない末路を迎える。悲惨な末路を。
まさか本当にわたしも聖者の末席にいるの?見知らぬ修道女の衣装を着た優しい女性が目を潰された顔を向けた。
ああ。宗教の弾圧のため、権力者に目を潰された聖女だ。
「ごめんな。ごめんな。」
主人は謝りながらわたしの性器に猛る性器を突っ込んだ。うわあ。気持ちが悪いだろう。死体だよ。それも子どもだ。普通の人は嘔吐する性交だよ!
なんと。彼は謝りながら冷たい遺体に射精した。狂ってるよ。狂ってるよ。わたしは突っ込まずにはいられなかった。これがまだ続くのか?聖なる者って。もしかしてものすごく悲惨な受難を味わった者じゃないのか?
わたしは、他の聖女に宥められながら呆然と見つめていた。
更に追い打ちをかけるように彼らは死体を剥製のようにすると言った。ナアニ、ソレ。
わたしは唯、わたしの内臓が全部とられて、剥製職人に綺麗に表れて、腐らない薬剤を入れられ固められる様を唯見つめていた。
わたしの剥製人形は不思議と生前より美しかった。
もう何も言うまい・・わたしは全てを悟った眼をした。ああ。お姉ちゃん。カーラ気を付けてね。
貴女たちの親しい人は狂って壊れていますよって警告したい。でも伝わらない。神様。これは何の罰なの?
お願いだからカーラとお姉ちゃんは何も知らない幸福を持ってほしい。
わたしは胸と腹が痛いよ!もうないはずの痛みが止まらない!
彼らは狂信者となった。わたしの聖遺体は大事に一番綺麗な部屋の中に隠された。
それから彼らは子どもを犯したり、赤ん坊を売る悪質な低劣などうしようもない屑を殺し始めた。
前々から、良心はあったが、弱くて見ないふりをしていた主人。そしてこどものわたしを犯した事実。
子どもが犠牲になってお姉ちゃんが救われたという事実は何か宗教めいた啓示が彼らにあったらしい。
主人は良心を取り戻し。わたしをもう一度犯すことで力が欲しかったらしい。
どうしても許せなかった悪を殺したかったらしい。でも勇気がなかったようだ。
わたしの死が勇気をもたらしてしまったらしい。
彼らは悪を滅ぼす屑を滅ぼす殺人鬼と化した。わたしを犯した客も惨たらしい拷問の末亡くなった。
わたしは嫌なやつだったけど・・あまりにも酷すぎて俯いた。
彼らはどうしようもない屑と悪を殺す殺人鬼を集めて、殺し続けた。
あのさあ・・あんたら。生きているときはわたしを頭のオカシイガキと見ていたよね。
なのに。なんで死んだら聖者と崇拝するの?
わけわからない・・
聖者と聖女が冷や汗を流しながら言った。『神様は時折そういう悪戯や試練を行うのよ。
聖は穢れと同じものよ。
抑えられない感情や、聖なる感情。美しい感情を芽生えさせたのは貴方なのよ。でもその分、復讐やどうしてもゆるせない悪や屑に対する嫌悪と殺意も高まるみたい。』
『あなたは世界を恨まなかったわ。あなたはあなたなりに大事な人を守った。それに貴方は満足して微笑んで死んだわ。それは奇跡なんだよ。貴方は聖なる資質があったから。』
『ほとんどの人は怨嗟しながら死んでいくわ。でも貴方はどんなに酷い目に合っても世界を恨まなかった。憎まなかった。感謝していたわ。カーラと彼の僅かな優しい心を守ったのは貴方のお陰。主人の腐った良心を芽生えさせたのは貴方のお陰。お姉様の命を救ったのもあなたのお陰。他の仲間たちも聖なる心に触れて生きようとしているよ。
果てまでしっかりとね。』
えええええ・・わたしは呆然とした。
そんな影響をわたしは彼らに与えたのか?
『それが聖者や聖女と呼ばれる者よ。』
わたしは神様の途方もない真理に呆然とした。今は唯死者の世界で聖者たちと戯れながら、神様を待つしかない。
でも同時にわたしは殺人鬼を生み出してしまった。いいのか?
わたしは矛盾に悩んだ。
聖女や聖者たちは微笑んでいった。
『そういうものなの。世界はびっくり箱なのよ。美しく醜い世界なの。殺人鬼となった人は、世界の汚さに耐えられなかったのよ。』
ああ・・わたしは異様に納得してしまった。わたしを売女と穢いと言いながら犯す彼。
彼は誰よりも純粋で聖なる意識に触れてしまったんだ。
それじゃあ殺人鬼になるのも無理はない。
聖なる愛に触れた彼は殺人鬼となった。こんな事あるか?いいの?
わたしは途方に暮れて聖女たちに尋ねた。
『なるようになるわ』
彼らもいつかは百年先には私たちの元へ来るわ。貴方は彼らの聖なる者として神様の元へ連れて行くのよ。
その時まで貴方は彼らの運命の行方を見届けるのよ。
わたしは愕然となった。嘘でしょう。わたしが彼らの魂を連れて行くの?
そうだよと言われて、わたしは聖なるものとして彼らの終わりを待った。
聖なる愛と殺人鬼。奇妙な奇妙な世界。これが私と彼らの物語の始まりと終わりだった。
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