黄金の狼の傭兵団

栗菓子

文字の大きさ
上 下
22 / 29

第21話 ゴルデア視点

しおりを挟む
サイカ国か・・。夢で導いてくれた通り、サイカとは縁があるかも知れんな・・。

ゴルデアは傭兵団を率いり、己の技量もたゆまず磨き上げていた。自分より強い敵は大勢いる。ゴルデアは決して慢心せず、いつなにか起きるかも予想し、できる限りの準備や、戦いの訓練や、戦場での配置など様々な戦略を専門家と深夜まで話しあい、満足するまで研鑽をしてきた。

その結果、ゴルデアは傭兵団でも指折りの実力者となった。才能だけではない。血の滲むような努力も重ねて生き延びたのだ。

ゴルデアは女や男を愛したことはない。性欲処理はいつも娼館で、馴染の娼婦に任せていた。

彼は性欲はあるものの恋愛や色事などには淡白な性質だとずっと思っていた。


そんな時、サイカ国に潜入している密偵からの手紙が来た。
何事か?とゴルデアは不審がりながらも、手紙を開き、その内容を理解し、かすかに目を見開いた。

あのセレストが運命の伴侶を見つけた?
最下層の子どもたちに指導を?

ゴルデアは驚きながらも、やはりなにか運命があったようだとどこかで納得していた。

返事の手紙は、鳥に結び付けて飛ばせた。カテイサとグレイは苦労するかもしれんが、彼らに任せよう。

その中で、印象的な言葉が綴っていた。
セレストはゴルデア様がご指導したように、子どもたちに教えています。まるで弟子の様です。


ゴルデアは何故か不思議な思いにかられた。俺が教えた戦いの術を遠くのサイカでセレストが見も知らぬ子どもたちへ指導している・・。人間何かあるか分からんもんだな。


とるに足らないゴルデアさえもどこかで何かを残しているのだ。
人間は人間と関わると、何か痕跡や、影響を残すらしい・・。

ゴルデアはすでに育った教団でシズナ女神様たちと色々学び、影響や、生きた証はどこかで残ることを既に知っていた。


珍しく酒を飲みながら余韻に浸っていると、ふとゴルデアは誰もいない森の中にいる事をしった。

何故こんなところへ?ここは敵が来るかもしれない危険な地ではないか?


ゴルデアは夢遊病のようにさ迷っていたらしい。こんなことは初めてだ。彼は自覚しすぐに野営のテントへ戻ろうとした。

その目の端になにかドレスのようなものが見えた。なんだ?


ゴルデアは再び振り返った。

月明りで浮かび上がった女の姿は、月の女神が降臨したように麗しかった。

だれよりも美しく天上の女神とゴルデアは思わず見惚れた。

女に心を奪われるのははじめてだ。ゴルデアは少年のように胸をときめかせながら、誰だと詰問した。


女は小さく涼やかな声でカーラ・・とゴルデアに名乗った。

カーラ・・女に相応しい名前だ・・。カーラ?聞き覚えがある。サイカの姫もその名ではなかったか?

ゴルデアは半信半疑で、サイカのカーラ姫か・・?と問い合わせた。


カーラは安堵したように「ええ」と頷いた。

なぜここへ?ゴルデアは警戒した狼のように一歩下がった。 思わず剣に手が伸びた。


カーラは嫣然と微笑んで貴方を見つけてしまったの。その姿に心奪われたわ。貴方に会いたいと思っていたら、いつの間にかここにいた・・。


カーラにもなにか能力があるようだ。ゴルデアは既にシズナ女神などで超能力には慣れていた。
そんなことより、俺に会いたかっただと?

ひらりとカーラは重力が無いように軽やかにゴルデアに近づいた。


「お母様の事はしっているかしら。サーラというのよ。貴方の部下セレストと契りあった女よ。セレストの運命の伴侶よ。」

「なんだと・・」

これには流石にゴルデアも驚いた。カーラ姫の母親がセレストの運命の伴侶だと?

「・・それで俺に何の用だ。俺に話したいことでもあるのか?」

カーラ姫は小さく首を振った。

「・・お母様と同じように貴方を見た瞬間、貴方の子が欲しくなったの。はしたない女と思うでしょうが、男で美しいと思ったのは貴方だけなの。貴方の子が欲しい。貴方との絆が欲しい。」


カーラ姫は少女のように顔を赤らめながら求愛した。

その顔に言葉に偽りはなくゴルデアはそのすべてに魅了された。
まるで月の神となにかに導かれるようにゴルデアはカーラ姫を抱擁した。


その後は夢のようなまぐあいをした。

カーラ姫はゴルデアの虜となっており、ゴルデアもカーラ姫に魅入られていた。

極自然に、彼らは結ばれた。まるでこれが必然でもあるように彼らは深く結びついた。

至高の体験を味わった。嗚呼、これが本当の片割れとまぐわうことなんだ・・。


ゴルデアとカーラ姫は、互いの魂と体で全てを味わった。世界と結びついたような感覚だ。

いつまでも味わっていたい。ゴルデアはカーラ姫と離れたくなかった。


ゴルデアの精液がカーラ姫の子宮の奥までばら撒かれた瞬間、ゴルデアとカーラ姫はかつてない悦楽を感じた。

一夜中、彼らはまぐわい続け、夢のような時間を過ごした。

しかし非情にも夜明けが近づいてきた。 朝日だ。

「カーラ姫。行かないでくれ。俺とずっと一緒に・・。」
ゴルデアは伴侶を失いたくなかった。

カーラ姫は少し悲し気な顔をしたが、首を振った。
「わたくしは、サイカの姫です。恐らくこの一夜は、月の神と何かの神が結びつけたのでしょう。わたくしはまもなくサイカへ戻ります。いつかまた出会う時があるでしょう。その時まで貴方を思い待ちます。」

既にカーラ姫は、ゴルデアを夫と定めていた。ゴルデアにもそれが解った。

ゴルデアもカーラ姫にすっかり魅了されていた。ああこれが恋か。愛か。彼は彼女によってはじめて伴侶、運命の愛を知った。

朝日と共に、カーラ姫は幻影のように転移した。
カーラ姫は手を伸ばしてゴルデアを見つめた。ゴルデアもカーラ姫に手を伸ばそうとした。

しかしあと少しで、カーラ姫は消えていった。サイカへ戻ったのだ。

ゴルデアはしばらくカーラの消えた姿を幻影を見つめていた。

そして決意した。いつかまだカーラに会おう。その時こそ、伴侶とする。

ゴルデアはかつてないほどの力に満ち溢れ、己の道を歩んだ。これは運命だ。

しおりを挟む

処理中です...