浮生夢の如し

栗菓子

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第17話 終わり

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まるで夢のような人生だった。
悪夢でもあるが、どこか甘美で安堵するような奇怪な人生を罪人と奇姫は歩んだ。
醜悪だと唾棄する人も居るだろうが、これが流れるように歩んだ彼らの結果なのだから仕方がない。

罪人と奇姫は死んでからどこへいったのか。死者の世界へ戻ったのかわからない。どこか別の世界へ旅去ったのかもしれない。

正義感の強い医者は、自分の生だと悔やむかもしれない。でもそんなに人間や物事の事象はコントロールし切れない。それこそ傲慢だ。唯人だけが悔やむのだ。

女神を生み出した母親を知るのは僅かな人だけだった。

あの美貌の医者と女神だけだ。ほんの少しだけ彼らは家族としての情を共有した。

幻影のようだが確かにあったのだ。

これからは女神と父親の人生は続く。いつか飽きるまで腐り果てるまで続くだろう。

壊れた民の人生も続く。


世の中無常だが、ほんの僅か何か痕跡を残して去る。そういう人生があるのだ。

これは数奇な運命を歩んだ奇姫と罪人の物語であった。


                           終わり。

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