餓鬼の介護

栗菓子

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餓鬼の介護

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糞まみれの匂い。 醜悪な腐った老人が必死で子や孫の未来や生命に嫉妬し、その人生を食い潰そうとする餓鬼共。
特に老婆は醜い。 頭は完全にいかれても体だけは生きたいと足掻く。がつがつとずっと食べ物を探し貪る様はまさに醜悪極まれり。

そうまでして生きてなんになる。 この世界はおかしい。 無意味な老人を生かそうと血眼になっている。そして人の幸福を潰そうと躍起になっている。

男と女の情愛さえも汚いと扱いながら、老人の介護を若者に要求する。

馬鹿馬鹿しい。もてない屑たちが必死で引きずり落とそうとしているんだ。まるでどこかで読んだ本のようだ。

嗚呼蜘蛛の糸だ・・。カンダダは穢れ多い罪人だった。

馬鹿が長生きする。無駄で誰からも必要とされないものほど長生きする。

醜いものがより醜くなる。


「あのねえ・・・」猫なで声で繰り言を壊れたように言い続ける。
そして、醜悪な女は醜悪な夢を紡ぎ続ける。

美しい思い出は、お前が脳で改ざんしたものだ。それともどこか彼岸の世界であるのかもしれない。


老婆はとうに見放された者だった。


かなりの人格破綻者だったらしく、実の子や孫は嫌悪しきっており、絶縁をした。

どうも親戚を自殺に追い込んだり、かなり修羅の道を歩んできたらしい。

遠縁の男に終焉の介護を任すようになったのは、もう喧々諤々と親戚で争い、その果てにあったらしい。

勿論人生へのご褒美として大金は弾んている。

全ては金によって動くのだ。餓鬼みたいな老婆は、その程度なのだ。

情と言うか繊細な男と女の愛や、親子愛などには縁が遠い人生だったようだ。

機会があっても、なぜか潰してしまう性格だったようだ。


白い便器・・その便器はしょっちゅう汚れる。 認知症が進んだ頭は、茶色に塗りたくっていた。

異臭のベンキで汚れた便器は、アルコール消毒剤と、使い捨ての布巾と、ゴム手袋と、マスクによって清められる。

壁も危険だ。 丁寧に拭き、消毒しないと、匂いが染みつく。

最後に、花の匂いがする消臭剤を霧吹きする。


週に1回、家に看護師が来る。真面目で小動物のような顔をしている。可哀相にまだ若いのに、餓鬼の奴隷になっている。


しかし、彼女のお陰で介護は助かっている。高額医療費も出て、おむつも、ナプキンも、区から無料で月に1回段ボールで支給される。


それでも、医療費は重なる。 壊れたラジオをずっと置いている。 ずっとこの国はそうだったのだ。

廃棄物や、欠陥品、ゴミを置く国だった。

そのくせ、陰湿で監視は酷い国だった。まともな心を持った奴は少ない。

唯、死んだ顔をして生きている国だ。


嗚呼・・ここはとうに壊れた終の国だったのだ。

やっとわかった。ここは死の国だったのだ。生きているフリをしている国だった。


なあんだ。そうだったのかあ。不意に悟ったら気が抜けた。


ぼりぼりと頭をかきながら、ヤングケアラーは、精神安定剤を飲みながら、地獄の人生を過ごす。








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