5つの花の物語

栗菓子

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ロベリアの章

第2話 貞淑な娼婦

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幼少の頃、優しかった男たちは、無知な頃から性器をまさぐっていた。初潮も迎えない前から幼女は性玩具として調教されていた。親は分からない。小さな性器は、毎日のようにまさぐられ撫でられて、つるつる平らな胸を無理矢理肉を集めて揉まれ続けた。唇はとうに舌まで奥まで侵されて男の唾液と舌は幼女のまっさらな舌を歯を弄んだ。
幼女は、息が苦しかったが我慢して男の唾液を飲み込んだ。
欲情で血走った男は荒い息を吐いて、幼女の口に醜悪な膨れあがった性器を擦り付けた。幼女が嫌がろうというものなら容赦なく折檻された。
欲に溺れた男たちにとって幼女ははけ口となる玩具でしかない。順応性が高い子どもは、理不尽な醜悪な男たちの要望に応えた。性玩具に余計な頭脳はいらない。ものすごいバカでいいのだ。
生き延びるために、男を悦ばせる玩具と幼女は順応した。
小さな口は、舌は男たちの醜悪な性器を含み、飴玉をなめるようにちろちろと舐めた。
小さな性器に入れたがる男たちを制御するのは、調教人だった。商売道具を早いうちに壊されたら商売あがったりだからだ。
愛らしい顔をした幼女を嬲り犯すのは醜悪な歪んた心を持った男たちにとって最高の快楽らしい。
幼女は男たちの悪意に満ちた性交や調教に慣れた。真っ黒な性交は幼女の心をも侵そうとしていたが、不幸中の幸いだろうが、幼女は悪意に満ちた男たちしか知らないためこれが普通と思い込んだ。
そのため幼女の心は壊れなかった。これが普通なら仕方がないからだ。幼女は何も考えず唯無心に男に奉仕し続けた。小さい性器に醜悪な拡張する道具をいれられても幼女は何も感じなかった。異物が入り込んだと思うだけだった。幼女は少しずつ快楽を芽生えつづあった。少しずつ穴は広がって来る。
幼女は初潮が来る何年も前に、男の醜悪な性器に破瓜された。そのころには少女になりつつあった。
少女なのに、大人並の膨らんだ胸。陰部を見ると、既に荒らされ大人にさせられた性器になっていた。
それはまるで少女の一部を無理矢理大人にさせたようなグロテスクな姿だったが、一部の性癖には愛でられていた。
媚薬を混ぜた食べ物や飲み物で、少女は男に触れられるたびに発情する雌と化した。
卑猥な格好をして男たちに膨らんだ胸や性器を見せる踊りもさせられた。
少女は唯、調教人と男たちの要望に応えるだけだった。他の子は既に亡くなっていた。幼女以外にも子どもたちは居たが、男たちに拒絶反応や、幼いながらにも蹂躙されていると分かったのが壊れて死んでいった。
少女は何も感じなかった。嗚呼死んじゃった。その中に少女の姉妹も居たような気がするがもう思い出せない。

初潮がきたころ、少女は既に数えきれないぐらい男たちに蹂躙され犯されていた。
それでも少女は無垢な笑顔をしていた。バカだからだ。分からないからだ。生存本能で少女は思考を放棄していた。

嘲笑いながら醜悪な笑顔で、男たちは少女を犯す。少女にこんな悲惨な運命を背負わせて悪い子だと罵る。小さな淫売と嘲笑う。少女は何も感じない。バカだからだ。

少女は白痴のように笑ってひたすらに奉仕し続けた。容姿はどんどん優れていった。美しくなっていった。
少女は、悪意に満ちた性交のための玩具として育成された。それ以外の道は知らなかった。唯、少女は男たちの要望に応えれば良かった。少女は見世物商品として売られた。
悪趣味な貴族の人たちの奴隷として少女は仕えた。他にも少女のような境遇にある奴隷たちは居た。

貴族の人は余興として、奴隷たちを競い合わせた。誰が一番男たちや女たちを悦ばせるか。

ビリになったり一番性能の悪い奴隷は、獰猛な犬や他の動物に犯されて首や身体をかみちぎられて死んでいく。
それを爛々と喜悦に歪んた質の悪い子どものように残酷に貴族たちは眺めて拍手して最高だったよと褒めていく。

少女には分らなかった。バカだから。
生き残った奴隷たちは、性能が高い男や女たちを悦ばせる玩具になった。
奴隷たちは、おのおの主人に仕え貞淑な娼婦と成った。
貞淑とは主人を裏切らない事だ。主人に従うことだ。

少女はどんどん美しくなっていった。だが、他にも美しい奴隷はたくさん居る。生き残るために少女は微笑んで奉仕し続けた。少女が女になりかけるころ、恐れていたことが起きた。主人が飽きたのだ。
5年以上ぐらい少女は主人に奉仕し続けていた。貴族は飽きやすくきまぐれである。
調教師や悪意に満ちた男よりも少女を徹底的に玩具としてしか見ていなかった。

そろそろ処分される頃だった。少女は無意識に解っていた。破滅は間近だった。
それでも少女は何も感じなかった。バカだからだ。そんな時、奇跡が起きた。
少女にとっては奇跡そのものだったが、ある人にとっては残酷な奇跡だった。

主人と何か真剣な顔で話しあっていた男。なにかあったようだ。主人は男の話を聞いて蒼白になっていった。
すぐに証拠隠滅をしろとか聞こえた。少女もいるのに。嗚呼玩具だからだ。いつでも処分できる玩具だからだ。

男は口止め料とか何かで主人からずっしりと重い袋をもらっていた。中には光るものが入っていた。
男は袋を開けて満足そうにうなずいて大事そうに抱えた。
なんとなしに、男をじっと見ていたら目が合った。男は初めて少女を見たように見た。
何だろう。少女は首を傾げた。それはとても少女を愛らしく見せた。反面、膨らんだ胸は果実のようであり、むしゃぶりつきたいぐらい魅力的だった。柔らかな腰も幼い顔も胸も何もかも男の好みだった。

男は少女を見初めたのだ。
男の様子を見た貴族は口止め料と奴隷を数人あてがうことで貴族の失脚は免れるだろうと思った。本当は男も奴隷も処分したいところだがそうはいかない。男は役に立つ使用人だった。貴族の後ろ暗い悪事も何もかも知っている。他の貴族にも気に入られている。男は良く役に立ち、殺すのには惜しい人物だった。

飽きかかった美しい娼婦たちを、下賤な男たちにあてがった。男たちは喜び汚い仕事も請け負った。
貴族はほくそ笑んだ。
それが運命の悪戯で最終的に貴族の破滅につながるとも知らずに、唯、中古の玩具如きで喜ぶ男を嘲笑った。

それが男と貞淑な娼婦の馴れ初めであった。
下賤だが役に立つ優秀な使用人達は、敵対している貴族の捜査が入る前に悪事の証拠隠滅をした。
使用人達は口止め料の大量の金貨と女達を連れて辞めて行った。

彼らは元の主人から去っていった。 貴族は後腐れないとほっと安堵した。

自由になった使用人たちは主導者の郷里へ女たちを連れていくことにした。使用人たちの妻にするのだ。
美しく男を悦ばせる奴隷だ。何をしてもいい。

こうして少女はまた生き延びた。無意識に少女は男の好意に気づいて喜んでいた。
この時が少女にとって最高の幸福であっただろう。
男は貴族と同類の下賤な悪意をもっている使用人に過ぎなかった。
偶々、少女のアンバランスな容姿と体に惹かれて、下劣な欲情と共に最後の主人となったのだ。

それでも少女は貞淑な娼婦だった。主人の命令は絶対だ。男に嬉しそうに従った。
少女は最後の主人の元で女になった。最後の腐りかけの果実だ。

初夜は、かつてなく激しかった。女は最後の主人を悦ばせた。幼女の頃から酷使され続けた性器をきつく締め
主人の男根を奥へ奥へと迎え入れ膣を動かし男を感嘆させた。
たわわに実った胸は男にむしゃぶりつかれた。きつく乳房を握りしめられ千切れそうであった。
痛みに耐えながらも女は唯男を悦ばせるモノとなった。それしか女の生きる道はなかった。

主人は郷里の領主と密談をして、村の外れに大きな家をもらった。
そこに他の使用人や、娼婦たちを住まわせた。金は豊富にあった。でも女には大して変わらない人生だった。
どれほど悦ばせても、時折主人たちは面白がって娼婦を殺す。妻であっても娼婦だからだ。
そのあまりにも理不尽な男の理屈にかすかに女の自我が反発した。望んだ運命じゃない。醜悪な男どもが押し付けた運命だ。無意識に女はどこかで全てを理解していた。でも生きるために女はバカになり思考放棄していた。
今更それを変えることはできない。諦めていた。どうに女は自分を見放していた。
女は空っぽだった。無理やり性交させられて発情させられた雌。見世物。玩具として扱われた人生。それでもどこかで女は自分が生き残ったことに負い目があった。
唯、生き延びたい本能で女は馬鹿になった。思考放棄したバカになった。
時折、殺されていった子ども達。壊れていった子どもたちの姿が記憶に蘇る。あれは自分だ。
心に風の鎮魂歌が流れた。断末魔の悲鳴を上げる奴隷の最後の姿。それを見て愉快そうに笑う貴族たち。

幼女の頃から虐待され、酷使されていた生活が寿命を縮めていたのだろう。通常より女は自分が短命である事に気づいていた。

戯れに最後の主人たちは村の近くの教会まで女たちを連れて行った。
主人たちは愚かにも美しい女の容姿を見せびらかした。教会のシスターは美しいが歪な容姿の女達。妻たちを見つめて苦々し気に顔をゆがめた。
愚かな下劣な男たちとどこか異様な歪な女たちを見比べて、なんとなく醜悪な関係を察したのだろう。
シスターは嫌なことばかり見てきた顔をしていた。また嫌なものを見たと言わんばかりにシスターは眉をひそめた。
少し悲しかった。神様などいないと分かっていても、仮にも神に仕えるシスターにそんな顔をされたのだ。
まるで神様に嫌われているようだった。

「シスター?どうしたのですか? 何かあったのですか?」
教会の中から愛らしい子どもが出てきた。心配そうに尋ねる様子は大層可愛らしかった。
まるで光の中にいるようだった。 平凡だが愛らしい健やかな心を持っている少女だった。
愛らしい笑顔は本物だった。女の空っぽな笑顔とは違う。まともな両親に愛されて健やかに過ごした顔だ。
シスターは子どもを安心させるように微笑んだ。温かい笑みだった。
女には向けられない笑み。女は嫉妬した。他の奴隷たちも気づいたのだろう。シスターはあの子と私たちに向ける顔が違うということに。
嗚呼。そうか。何が違うというのだろう。望んで奴隷になったのではないのに。娼婦になったのではないのに。
喚き散らしたかった。悲鳴を上げたがった。でも生存本能がそれを許さなかった。

最後まで女は馬鹿であり続けた。
最後の主人は愛らしい子どもの笑顔ににやけた。きっと脳裏であの子を犯したいと思っているだろう。
本物と空っぽな笑顔。どちらが光り輝いて見えるかは薄々みんなわかっているだろう。

本物の笑顔を持った子どもはロベリアと言った。愛らしい笑顔をした子ども。穢れなき子ども。

女達はいかに自分が穢れているかを知った。最後の主人がその穢れなき子どもも犯したいと下劣な欲望を抱いていることも分かっていた。
女達は嫉妬深き妻達となった。自分の運命に気づかされる時はあるのだ。
貞淑な娼婦は主人に逆らえない。既に虐待し痛めつけられ破壊されているのだ。唯の動物。飼いならされた調教された玩具になり果てた自分。代わりに妻たちはロベリア。若い子に嫉妬する妻となった。


ロべリアと最後の主人たちは敏感に女たちの嫉妬に気づいた。
目障りなと鬱陶しそうに主人たちは女達を見た。
ロべリアは何も知らない子どもだが、だらしない夫を誘惑する若い女だと嫉妬された事は気づいた。
びくりとロべリアは体を竦ませた。本当は少し違う。こうならざるを得ないあたしたちをわかって。女はロべリアに叫びたかった。

寿命が近い。だんだん女は最後の主人に耐えられなくなった。でも生存本能が女を男に縋らせる。惨めだ。本当は男を忌み嫌っているのに。矛盾している。ここまで精神は破壊されるのか。女はどこかで自分を悟っていた。
あんなに殴られても気まぐれに与えられる優しさに女は縋る。それに男が嘲笑っていることに気づいていても。

女はどこかでロべリアに救いを求めた。
無意識に女はロベリアを睨みつけた。「いい気にならないでよ。」
これがロベリアとの最初で最後の会話だった。

ロベリアの激昂した言葉は女の真実を露わにしていた。
麻痺して認知の歪みが激しい女にロべリアは、あざだらけの顔を水面に映させて現実を見せた。
みていられないというようにロべリアはスカートを千切って布に水を浸し優しく腫れあがった顔に当てた。
生れてはじめての本当の優しさだ。

女は無意識に直感した。嗚呼。ロべリアはこんなに優しい子なんだ。

「どうすればいい。」はじめて女は救いを求めた。
嗚呼やっと本当のことが言えたわ。女は何かが生まれたと思った。

ロべリアはシスターに救いを求めた。
だが、結果はロべリアにどうしようもない現実を知らせることになった。呆然とするロべリア。
嗚呼。可哀そうに。

シスターの冷たい顔に脅えるロべリアが可哀相だった。
両親の事を言われてロべリアは悩んだ。でもこのままじゃ女は殺されるとロべリアはためらっていた。

女は逃げた。怖かったのだ。ロべリアにも見放されることが。嗚呼でもあの子だけだったわ。
私を助けようとしてくれたのは。
アリガト。サヨナラ。


もう女はどうでもよかった。終わりが近づく。

女は貞淑な娼婦を止めた。唯の女になった。死の間際に女は自分を取り戻した。
もう最後の主人には従わなかった。

男は怒り狂った。貞淑な娼婦という奴隷は居なくなった。代わりに反抗する女だけになった。
他の娼婦たちはどうしたのと女を見た。殺されるわと言われた。
馬鹿な娼婦たち。もう殺されたじゃないか。精神も何もかも破壊されたじゃないか。
女はへらりと笑った。私も馬鹿な女だ。

もう嫌だと女は男に喚き散らした。
男にずっと思っていた事を叩きつけた。お前ら男はろくでなしだ。弱い者を嬲り殺し嘲笑うことしかできない屑。汚い醜悪な下劣な男。娼婦にも劣るごみ以下の人間じゃないか。

最後の主人、男の醜悪な真実の姿を女は暴き立てた。
男は激高した。嘲笑っている見下している女に真実を暴露されたからだ。
男は狂ったように女を殴りつけた。

女も狂ったように叫んだ。あんたなんか愛したことはない。生き延びるために従っているだけだ。
男はみんな女より屑だ。ろくでなし。 気持ちが悪い。気持ちが悪い。気持ちが悪い。
気持ちが悪いと女は男に言い続けた。気持ちが悪い生き物。それがあんただ。


あんたなんか本当は誰からも愛されない生き物だ。これが真実だ。アハハハ。


それはずっと虐待され歪められた女の真実だった。男のちっぽけな自尊心は傷つき、身勝手にもこの女を殺さなければと殺意に至った。

女は殴り殺された。死ぬまで女は男に気持ちが悪いと言い続けた。
他の嘲笑っている男たちも最後には黙った。
他の娼婦、妻たちも女が最後まで気持ちが悪いと言い続ける様を呆然と眺めていた。
狂ったような叫びが真実を告げていた。

何かから目が覚めたような気持ちだった。
無惨に殺されていきながらも女は気持ちが悪いと叫び続けた。
それが女の心からの悲鳴だった。叫びだった。真実だった。

女は最後に無意識に欺瞞を暴き立て、醜悪な関係の夫婦の真実を露わにした。

最後に爪を立てて、この無惨な結末を周囲に知らしめた。

男はどうしようもない屑であり女は犠牲者であることを知らしめた。

この事は、目をそらしていた他の娼婦たちも否応なく現実と真実を露わに見るしかなかった。

醜悪な男たちも流石に目をふせた。

あとはしんとした静寂があるだけだった。無惨な遺体がそれを証明していた。

遺体は男たちが教会へと運んだ。

かくして貞淑な娼婦だった女は死してロべリアという名を得た。悪意に塗れた中で育った娼婦はやっと唯の女に戻り
はじめて本当の優しさをもらった子どもの名をもらった。それも本物のロべリアに。

女は満足していた。やっと本当のことを言えたのだ。

嗚呼ずっと気持ちが悪かった。

女はやっと解放された。安らかな気持ちで死へ旅立った。

後は、残された人たちに心の爪痕が残った。特にロべリア本人にどうしようもない結末を残すのは辛かったが仕方がない。これが女の末路なのだ。唯 生き延びたかった女の末路だ。

ごめん。ロべリア。それが死んだ後の女の意識が思ったことだった。

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