大輪の花火の輪

栗菓子

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第4話 美味しいスープ

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嗚呼・・難しい話ばかりでは人間は疲れるわね。
さて、わたしの好きな食べ物を紹介しましょうか?

林檎をすりおろしたジュースと、新鮮なキャベツと豚肉をミルフィーユ風に重ねた後、酒と、醤油1さじ、塩 胡椒で味を調えた柔らかなスープ。 たまにはミルクなど入れるとまろやかになるわ。チーズも試してみるとなかなかイケるわね。

わたしの大好きな食べ物よ。
それに固いパンを浸して柔らかくするとなかなか絶品よ。

わたしは現金にも湯気が出るそのスープを始めて食べた瞬間、ほっとお腹が嬉しがっているのを感じたわ。
ジュースものどごしがいいし、わたしは黙々とひたすら食べて完食したわ。

ああ。なんでちっぽけな事に悩んでいたのかと思ったものよ。
こころや頭が死にたくなっても体は生きたい行きたいと言っているのよ。


わたしにあたえられたこの体とこの心と頭。 
誰にも傷つけさせはしない。例え母親であってもね。

何故、人が食に追及するのか知っているかしら。生きたいからよ。 肉体がよりよいものや、刺激を求めているのよ。中には体に悪いものを入れている食べ物もあるけどね。


温かいものを食べて、ほっこりしたらそれだけで十分ヨ。人間は生きる意欲がわいてくる。

食べる度に、私の歯は食べ物を細かく砕く。そして唾液で味や感覚を味わう。味覚って素晴らしい。
嗅覚も、良い匂いでお腹の虫をぎゅるうると鳴らせる。
食感も大事ね。柔らかさや硬さ パリパリと感じる音。 
ほろりと長い間煮込んだシチューが口の中で溶ける感じはたまらないわね。

そして、たまには複雑な味をした繊細な高級料理を食べたくなる。シンプルな料理もいいけど、一流のシェフが作った料理はやはり技量や技術があって、なかなか素人には創れない繊細な味があるわ。


この料理は、シェフの人生の積み重ねがつまっているのね・・。

わたしはこの料理を食べられるほど、お金持ちになったことを自覚して嬉しくなったものよ。

わたしは芸人として一時はブレイクして、大金を掴んだわ。その間に食べてみたい料理を堪能したわ。

ちゃんと手帖に書き留めてあるわ。

●月△日。 亜区の丸円亭とか、何々料理とか詳細に書き続けたわ。その時の驚きや感触や状況や情景など細かに書き溜めたわ。 何の材料を使っているのか聞いたこともあった。なかには門外秘出とも言われたけどね。


素晴らしい事ばかりだったわ。中には老舗の食べ物屋さんと聞いてわくわくして行ったものよ。
その味は、残念ながら大外れだったわ。
どうも、古さにこだわって、現代の味覚の若者には合わないみたい。
なんだがピントがずれてちぐはぐな味だったわ。

昔の人の味覚はどうなっていたのかしら・・。

わたしはつい過去の人びとを連想したものよ。



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