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忘れられていた
しおりを挟む覚えていない、と首を振った彼女に、怒りを覚えたのは確かだ。
最初から様子は変だった。
雅俊くん、と名前の呼び方も少しためらいがあって。
奈々、と呼び捨てたら若干眉間にしわが寄った。
遠回しに帰れと言われたり。
嵐山、と決定的に思い出させるための言葉を口にしても、戸惑ったままで。
あんまりだ。
うなづいたじゃないか。
式子内親王みたいな恋、しないかって言った時。
「そう、…覚えてないの。
じゃあ、思い出させてあげる。」
自分でもびっくりするくらい、不穏な、低い声が出た。
奈々が、若干怯えて無意識に後ずさって部屋へのドアを開けてしまうくらい。
学生時代に、彼女の部屋に遊びに行ったことが何回かある。
もちろん、同期4人(ばっちりミサト付き)でだが。
その時とあまり変わっていないレイアウト。
本棚の中の本が、若干昔読んでいた文庫本などが減って、専門書だろう本に侵食されて…、
ベッドの上に、読みかけだろう本が放置されている。
折り畳みの座卓もそのままだ。
そして、今日は誕生日だからだろう、彼女にして奮発したのだろう(大学生のころとあんまり金銭感覚が変わっていないようだ、まぁ学生のころと職場が一緒ではそんな感覚にもなるだろうという気がする)コンビニスウィーツをサラダ、サンドウィッチが載っている。
ベッドはこの後使うし、とおもって本を下に置くと、
「え、あの本は下には、」
「本棚が開いてるならそこに置くけど、置き場所ないでしょ?すぐ終わるから、ね?」
と納得させ、下において、俺はジャケットを脱いでベッドにかけた。
「し、しわになるよ?」
「スーツの替えくらいあるから大丈夫、心配しなくていいよ。
というかそんな心配する余裕あるんだね?」
「え゛」
なんでそこで戸惑うの?
かわいいなぁ、やっぱり。
「あのね、わかりやすく状況を整理してあげるなら、
今、ベッドのある部屋に男女が二人でいるんだよ」
逃げ出したい、という表情をする彼女。怯えてるところもかわいい。
こんなのミサトに知られたら袋叩きだなーなどと思いながら、
俺は間違いを起こす気満々で、
「だからさ、まず思い出せないみたいだからさ、間違いから始めよっか?」
社内の女子が、一番うっとりとする笑顔を、向けた。
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