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第2章~溢れる想い~
第7話
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「楽しんでる?」
「兄上!」
兄はにっこり微笑むと、アクセルを目で誘ってきた。
「ほら、もっと近づいて。逃げてばかりじゃ面白くないよ」
「そんなこと言われてもな……っ!」
兄上は慣れてるだろうけど、俺は「剣の舞」初体験なんだよ!
……と、内心で怒鳴りつつ、アクセルはもう一振りの小太刀を構えた。兄に挑発されてしまったら、背を向けて逃げるわけにはいかない。遅れをとらないよう、どうにか食いついていかなくては。
「素晴らしい! 共に踊りましょう!」
息一つ乱さず、ユーベルが回転を速める。
キィン、と透明な音がした。金属同士がぶつかり合い、心地よい音波が鼓膜を刺激する。頬に鋭い空気が触れ、袖についていたボタンが弾け飛んだ。
本当に命懸けだ。こんな危険な舞、初めてだ。少しでも気を抜いたら斬られる。
――でも……。
兄が右に跳んだ。アクセルは左に跳んだ。兄が剣を下に逸らした。アクセルも下に逸らした。今度は二人で床を蹴って、ユーベルの懐に飛び込んだ。
「楽しいね、アクセル!」
「ああ、まったくだ!」
兄の動きがわかる。考えなくても身体が勝手に動き、呼吸すらもぴったり合っているように感じる。今までにない一体感だ。なんて気持ちいいんだろう。
もっとこの感覚を味わっていたい。もっと、もっと。
血が温まり、ぞくぞくした興奮が這い上がりかけた時、ユーベルが緩やかに回転を止めた。大きく剣を振り上げ、床に叩き付けたところで完全に動きが止まる。
「兄上!」
兄はにっこり微笑むと、アクセルを目で誘ってきた。
「ほら、もっと近づいて。逃げてばかりじゃ面白くないよ」
「そんなこと言われてもな……っ!」
兄上は慣れてるだろうけど、俺は「剣の舞」初体験なんだよ!
……と、内心で怒鳴りつつ、アクセルはもう一振りの小太刀を構えた。兄に挑発されてしまったら、背を向けて逃げるわけにはいかない。遅れをとらないよう、どうにか食いついていかなくては。
「素晴らしい! 共に踊りましょう!」
息一つ乱さず、ユーベルが回転を速める。
キィン、と透明な音がした。金属同士がぶつかり合い、心地よい音波が鼓膜を刺激する。頬に鋭い空気が触れ、袖についていたボタンが弾け飛んだ。
本当に命懸けだ。こんな危険な舞、初めてだ。少しでも気を抜いたら斬られる。
――でも……。
兄が右に跳んだ。アクセルは左に跳んだ。兄が剣を下に逸らした。アクセルも下に逸らした。今度は二人で床を蹴って、ユーベルの懐に飛び込んだ。
「楽しいね、アクセル!」
「ああ、まったくだ!」
兄の動きがわかる。考えなくても身体が勝手に動き、呼吸すらもぴったり合っているように感じる。今までにない一体感だ。なんて気持ちいいんだろう。
もっとこの感覚を味わっていたい。もっと、もっと。
血が温まり、ぞくぞくした興奮が這い上がりかけた時、ユーベルが緩やかに回転を止めた。大きく剣を振り上げ、床に叩き付けたところで完全に動きが止まる。
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