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第6章~ラグナロクの始まり~
第26話
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アクセルは内心ひやひやした。
相手の気を悪くして、出口を封鎖されたらどうしよう。一刻も早く兄を看病しなければならないのに。また自分のせいで兄を窮地に追いつめる羽目に……。
「……まあいいわ。私はヘル、ロキの一応娘よ」
「えっ……!?」
「あんたも名乗りなさい。それがマナーというものよ」
「あ、ああ……俺はアクセル、元人間のエインヘリヤルだ。こっちは兄のフレイン」
兄の代わりに挨拶したら、彼女――ヘルは思いもかけないことを口にした。
「フレインのことは知ってるわ。以前もここに来たことあるもの。生きたまま来るのはこれで二回目かしらね」
「えっ……?」
「見たところ、瘴気にやられたみたいだけど。そりゃあ、何の装備もなしで出口まで上ってきたらそうなるわ」
「ちょっと待ってくれ。兄上が二回目? どういうことなんだ?」
何かの間違いだと思って尋ねたら、ヘルは腰に手を当てて答えた。
「詳しいことは知らないわ。でも何年か前に一度、生きたままここに落ちてきたことがあったの。一回目だから、さほど体調も崩れずにそのまま帰ったけどね」
「え……」
「ここは死者の国、生きたまま来るところじゃないのよ。死んで魂になった者が来る分には問題ないけど、そうじゃなければ徐々に瘴気に蝕まれていく。一度目より二度目、二度目より三度目の方が、より瘴気の濃い深部に落とされるの」
「…………」
相手の気を悪くして、出口を封鎖されたらどうしよう。一刻も早く兄を看病しなければならないのに。また自分のせいで兄を窮地に追いつめる羽目に……。
「……まあいいわ。私はヘル、ロキの一応娘よ」
「えっ……!?」
「あんたも名乗りなさい。それがマナーというものよ」
「あ、ああ……俺はアクセル、元人間のエインヘリヤルだ。こっちは兄のフレイン」
兄の代わりに挨拶したら、彼女――ヘルは思いもかけないことを口にした。
「フレインのことは知ってるわ。以前もここに来たことあるもの。生きたまま来るのはこれで二回目かしらね」
「えっ……?」
「見たところ、瘴気にやられたみたいだけど。そりゃあ、何の装備もなしで出口まで上ってきたらそうなるわ」
「ちょっと待ってくれ。兄上が二回目? どういうことなんだ?」
何かの間違いだと思って尋ねたら、ヘルは腰に手を当てて答えた。
「詳しいことは知らないわ。でも何年か前に一度、生きたままここに落ちてきたことがあったの。一回目だから、さほど体調も崩れずにそのまま帰ったけどね」
「え……」
「ここは死者の国、生きたまま来るところじゃないのよ。死んで魂になった者が来る分には問題ないけど、そうじゃなければ徐々に瘴気に蝕まれていく。一度目より二度目、二度目より三度目の方が、より瘴気の濃い深部に落とされるの」
「…………」
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