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第30章~奇妙な敵~
第23話
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――これはもう、十中八九決まりだな……。
兄が鍛錬を嫌がるはずがない。仕事はサボっても、それだけは絶対にあり得ない。
今までのことを総合して考えても、兄はメリナに乗っ取られていると考えてよさそうだ。
……本当は、嘘であって欲しかったが。
「……兄上」
アクセルはスッ……と二振りの小太刀を抜き放った。
そしていつものように構え、戦闘態勢をとった。
「構えてくれ」
「えっ……!?」
「久々に真剣での勝負だ。兄上、こういうの好きだろう? さあ、思いっきり斬り合おう」
すると兄は目に見えて動揺してしまい、困ったように目を泳がせた。
「いや、あの……鍛錬するんじゃないの? 鍛錬って、走ったり身体を解したりすることだよね……?」
「……真剣での斬り合いも、立派な鍛錬だ。さあ、構えろ」
「でも、本物の武器で斬り合うのは危ないんじゃ……」
「泉や棺に入れば復活できる。さあ、早く!」
「う……」
「できないなんて言わないよな? ランキング三位のトップランカーが!」
「…………」
兄は俯いたまましばらく無言だった。
だが数秒の後、肩を震わせながら奇妙な笑い声を漏らした。
「なんだ、おもったよりバレるのがはやかったね」
「っ……!」
兄が顔を上げた。その顔はいつもの兄と同じだったが、口元が醜く歪んでいた。兄の笑い方ではないのは一目瞭然だった。
「……きみ、メリナだろ」
「うん、そうよ。きんぱつのお兄ちゃんがヒマそうにしてたから、からだをかしてもらったの」
「悪いがそれは兄上の身体だ。きみのものじゃない。さっさと出て行ってくれ」
兄が鍛錬を嫌がるはずがない。仕事はサボっても、それだけは絶対にあり得ない。
今までのことを総合して考えても、兄はメリナに乗っ取られていると考えてよさそうだ。
……本当は、嘘であって欲しかったが。
「……兄上」
アクセルはスッ……と二振りの小太刀を抜き放った。
そしていつものように構え、戦闘態勢をとった。
「構えてくれ」
「えっ……!?」
「久々に真剣での勝負だ。兄上、こういうの好きだろう? さあ、思いっきり斬り合おう」
すると兄は目に見えて動揺してしまい、困ったように目を泳がせた。
「いや、あの……鍛錬するんじゃないの? 鍛錬って、走ったり身体を解したりすることだよね……?」
「……真剣での斬り合いも、立派な鍛錬だ。さあ、構えろ」
「でも、本物の武器で斬り合うのは危ないんじゃ……」
「泉や棺に入れば復活できる。さあ、早く!」
「う……」
「できないなんて言わないよな? ランキング三位のトップランカーが!」
「…………」
兄は俯いたまましばらく無言だった。
だが数秒の後、肩を震わせながら奇妙な笑い声を漏らした。
「なんだ、おもったよりバレるのがはやかったね」
「っ……!」
兄が顔を上げた。その顔はいつもの兄と同じだったが、口元が醜く歪んでいた。兄の笑い方ではないのは一目瞭然だった。
「……きみ、メリナだろ」
「うん、そうよ。きんぱつのお兄ちゃんがヒマそうにしてたから、からだをかしてもらったの」
「悪いがそれは兄上の身体だ。きみのものじゃない。さっさと出て行ってくれ」
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