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第三章 鳥籠詩
十二話 連携
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◇
異形を目の前にして、芽唯は刀を構えた。
白銀から漆黒の色へと変容した刃が、赤く染まった空の光を反射させる。
赤黒く煌めくそれを斜に構えて走り出し、異形へと詰め寄りながら残り三歩手前で技を使用する。
「『刀匠 鋼鍛冶』——乾坤✖️剣舞!」
その場で跳躍して縦に一閃、芽唯は大きく敵を斬り裂いた。
シンプル且つ豪快、これが芽唯の辿り着いた新たな境地であった。
菊に言われて気付いた、自分は遠距離スタイルに頼りきりで逆にそこが弱さでもあったのだと。
故に鋼という折れない意志の元に、芽唯は不十分だった近距離に重きを置いた、それが今の戦い方であった。
勢いがそのまま風となって辺りに広がり、斬りつけた時の威力を物語る。
だが芽唯に手応えはなく、何処か空を切ったような感触だけが残った。
空間のズレが生じた、けれど芽唯にとってもそれは想定内。
今度は異形が攻撃を仕掛けて来る、ツルハシを下から振り上げて来た。
それを難なく回避して、芽唯は立て続けに刀を振るう。
「『刀匠 鋼鍛冶』――溜霊✖豪胆!」
芽唯は刀を右手に持ち直すと、ツルハシを掻い潜って異形の懐に潜り込んだ。
斜めに切り上げる居合斬りの要領で、刀の根元の刃を異形へと走らせる。
空間のズレが生じるその瞬間を狙い見て、左手を刃の背に当てて強引にそれを押し込む。
その際左手には霊力が溜め込まれており、それが刃を覆って威力と速度を更に引き上げ、同時に浄化効果も高めた。
そうして両手で大きく振り払った渾身の一撃は、空間のズレを裂いて少なからずのダメージを異形に与える結果となった。
異形がうめき声を上げて悶える中、芽唯は後ろから走って来た渚にバトンを渡す。
「隙は作ったから!」
「おー、あとは任さんかい!おりゃー!」
二人の位置が入れ替わり、渚はその両手で持つ大きな斧を振り上げた。
動作は遅かったが、それが勢いよく異形へと倒れ込む。
斧の刃が異形を斬り裂き、押し潰し、そしてゆっくりと。
異形はその場から、存在ごと姿を消し去ったのであった。
「ふー、なんとかってところだわ」
「ゆーとくけどウチが倒したんやで?もっと褒めてや」
「はぁ?あれは連携プレーでしょ。さっさと先を急ぐわよ」
そう言って芽唯は再び歩みを進める。
それに実里と渚もついて行き、三人は入り口を目指した。
途中で数体の怨霊に出くわすも、これを難なく退けながら、ようやく入口にまで戻ってくることが出来た。
「じゃあウチは帰るね!芽唯ちゃん、マネージャーさん!どうもありがとうな!……早紀を、よろしくお願いします」
そう言って実里は深々と頭を下げた。
二人は顔を見合わせると、実里に対し力強く微笑んで見せる。
「うん、出来る限りの事はする。ま、こっちもプロだしね」
「そうや、ウチらに任しとき!こういうのは専門家の仕事や!」
「はい!それじゃ!芽唯ちゃんまたな~!」
実里は両手を大きく振って、この場を後にした。
二人はそれを見送ると、再び中へと歩み出す。
「さーて、こっからが本番やでー!気合入れんとやな!」
「空回りしないでね。尻拭いはごめんだから」
「あんた、相方に対して辛辣やなー。ツンデレもそこまで行くと嫁の貰い手もなくなるでー」
「はぁ?誰が相方で誰がデレてるって?別に嫁ぐ気もないし」
芽唯はさらっと言ってそのまま歩き続けた。
気付けば早足になっていた。
何とも遭遇せずに三つ分岐の位置まであっという間に辿り着き、二人は考える間もなく真っ直ぐの道を選択する。
そこで感じ取ったのは、再びとなる異形の気配。
二人は戦う準備をして、すぐに交戦となった。
異形の数は二体。
芽唯と渚は先程と同じような要領で戦いを進め、これを見事倒し切る。
「渚!まだ!」
「何や、新手か!?」
更に気配を感じ取った芽唯は、渚に注意するよう促した。
この道沿いの角の向こうだ。
芽唯は先手必勝とばかりに駆け出して、敵へと刀を構えながら突っ込んだ。
けれど出くわしたのは、異形ではなかった。
角を曲がってすぐにその者とぶつかりそうになった芽唯は、慌ててブレーキを掛けてその人物に目を向けた。
芽唯は、驚きを隠せなかった。
ロングウェーブの黒髪に黒の着物を纏った彼女は、出会って早々に喜んで見せた。
「――あら?芽唯ちゃんじゃない、こんな所で奇遇ねぇ」
「……藍葉、朔耶ぁ!?」
まるで芽唯がここに現れる事を、初めから知っていたかのようにして。
朔耶は何一つの、動揺も見せずに――。
異形を目の前にして、芽唯は刀を構えた。
白銀から漆黒の色へと変容した刃が、赤く染まった空の光を反射させる。
赤黒く煌めくそれを斜に構えて走り出し、異形へと詰め寄りながら残り三歩手前で技を使用する。
「『刀匠 鋼鍛冶』——乾坤✖️剣舞!」
その場で跳躍して縦に一閃、芽唯は大きく敵を斬り裂いた。
シンプル且つ豪快、これが芽唯の辿り着いた新たな境地であった。
菊に言われて気付いた、自分は遠距離スタイルに頼りきりで逆にそこが弱さでもあったのだと。
故に鋼という折れない意志の元に、芽唯は不十分だった近距離に重きを置いた、それが今の戦い方であった。
勢いがそのまま風となって辺りに広がり、斬りつけた時の威力を物語る。
だが芽唯に手応えはなく、何処か空を切ったような感触だけが残った。
空間のズレが生じた、けれど芽唯にとってもそれは想定内。
今度は異形が攻撃を仕掛けて来る、ツルハシを下から振り上げて来た。
それを難なく回避して、芽唯は立て続けに刀を振るう。
「『刀匠 鋼鍛冶』――溜霊✖豪胆!」
芽唯は刀を右手に持ち直すと、ツルハシを掻い潜って異形の懐に潜り込んだ。
斜めに切り上げる居合斬りの要領で、刀の根元の刃を異形へと走らせる。
空間のズレが生じるその瞬間を狙い見て、左手を刃の背に当てて強引にそれを押し込む。
その際左手には霊力が溜め込まれており、それが刃を覆って威力と速度を更に引き上げ、同時に浄化効果も高めた。
そうして両手で大きく振り払った渾身の一撃は、空間のズレを裂いて少なからずのダメージを異形に与える結果となった。
異形がうめき声を上げて悶える中、芽唯は後ろから走って来た渚にバトンを渡す。
「隙は作ったから!」
「おー、あとは任さんかい!おりゃー!」
二人の位置が入れ替わり、渚はその両手で持つ大きな斧を振り上げた。
動作は遅かったが、それが勢いよく異形へと倒れ込む。
斧の刃が異形を斬り裂き、押し潰し、そしてゆっくりと。
異形はその場から、存在ごと姿を消し去ったのであった。
「ふー、なんとかってところだわ」
「ゆーとくけどウチが倒したんやで?もっと褒めてや」
「はぁ?あれは連携プレーでしょ。さっさと先を急ぐわよ」
そう言って芽唯は再び歩みを進める。
それに実里と渚もついて行き、三人は入り口を目指した。
途中で数体の怨霊に出くわすも、これを難なく退けながら、ようやく入口にまで戻ってくることが出来た。
「じゃあウチは帰るね!芽唯ちゃん、マネージャーさん!どうもありがとうな!……早紀を、よろしくお願いします」
そう言って実里は深々と頭を下げた。
二人は顔を見合わせると、実里に対し力強く微笑んで見せる。
「うん、出来る限りの事はする。ま、こっちもプロだしね」
「そうや、ウチらに任しとき!こういうのは専門家の仕事や!」
「はい!それじゃ!芽唯ちゃんまたな~!」
実里は両手を大きく振って、この場を後にした。
二人はそれを見送ると、再び中へと歩み出す。
「さーて、こっからが本番やでー!気合入れんとやな!」
「空回りしないでね。尻拭いはごめんだから」
「あんた、相方に対して辛辣やなー。ツンデレもそこまで行くと嫁の貰い手もなくなるでー」
「はぁ?誰が相方で誰がデレてるって?別に嫁ぐ気もないし」
芽唯はさらっと言ってそのまま歩き続けた。
気付けば早足になっていた。
何とも遭遇せずに三つ分岐の位置まであっという間に辿り着き、二人は考える間もなく真っ直ぐの道を選択する。
そこで感じ取ったのは、再びとなる異形の気配。
二人は戦う準備をして、すぐに交戦となった。
異形の数は二体。
芽唯と渚は先程と同じような要領で戦いを進め、これを見事倒し切る。
「渚!まだ!」
「何や、新手か!?」
更に気配を感じ取った芽唯は、渚に注意するよう促した。
この道沿いの角の向こうだ。
芽唯は先手必勝とばかりに駆け出して、敵へと刀を構えながら突っ込んだ。
けれど出くわしたのは、異形ではなかった。
角を曲がってすぐにその者とぶつかりそうになった芽唯は、慌ててブレーキを掛けてその人物に目を向けた。
芽唯は、驚きを隠せなかった。
ロングウェーブの黒髪に黒の着物を纏った彼女は、出会って早々に喜んで見せた。
「――あら?芽唯ちゃんじゃない、こんな所で奇遇ねぇ」
「……藍葉、朔耶ぁ!?」
まるで芽唯がここに現れる事を、初めから知っていたかのようにして。
朔耶は何一つの、動揺も見せずに――。
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