心の隙間に入り込むホラー短編集

Wataru

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なぜか、全部“私のせい”にされていた

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 最初は、小さなことだった。

「あなた、私のパソコン触ったでしょ?」

 同僚にそう言われた。

 触っていない。

 そもそも部署も違うし、席も遠い。

「触ってないですよ」

 そう言っても、納得しない。

「履歴に残ってるのよ」

 そんなはずはない。

 だが彼女は、本気で怒っていた。

 それからだった。

「私の書類、隠したでしょ」
「ログインできなくなったの、あなたのせいでしょ」
「みんなあなたに言われてるって」

 関わってもいないことを、全部こちらのせいにされる。

 最初は笑って流していた。

 だが回数が増える。

 周囲も、少しずつ距離を取るようになった。

(……もしかして)

 本当に、自分が何かしているのか?

 記憶にないだけで。

 無意識で。

 スマホの履歴を確認する。

 会社のログも見直す。

 何もない。

 だが彼女は言い続ける。

「証拠はあるのよ」

 なのに、誰も証拠を見せない。

 夜、眠れなくなる。

 自分の記憶の方が信用できなくなる。

 本当に、私が壊れているのかもしれない。

 そう思い始めた頃だった。

 課長に呼ばれた。

「例の件だけど」

 胃が縮む。

「〇〇さん、異動になったから」

「……え?」

「被害妄想がひどくて、他の部署でもトラブル続きだったらしい」

 言葉が理解できない。

「君は悪くないよ。むしろ巻き込まれてた側だ」

 帰り道。

 肩の力が抜ける。

 自分は、おかしくなかった。

 そう思った。

 安心して、部屋に入る。

 カバンを置く。

 スマホを見る。

 ロック画面に通知が一件。

 知らない番号からのメッセージ。

 

『どうして私のアカウント触ったの?』
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