8 / 15
【証拠はいらない×ホラー】存在しなかった相談者
しおりを挟む
事務所のドアが開いた。
「……相談、いいですか?」
入ってきた女性は、どこか怯えた顔をしていた。
俺はソファから体を起こす。
「どうぞ。愚痴でも人生相談でも歓迎」
女性は椅子に座り、すぐ言った。
「私……周りから忘れられるんです」
「忘れられる?」
「昨日話したことも、なかったことにされるんです」
ふと横を見ると、相棒は奥で電話に出ていた。
「勘違いじゃなく?」
「違います」
女性は首を振る。
「同僚も、友達も、家族も」
「昨日一緒にいたのに、今日には覚えてないって」
静かな部屋に、時計の音だけが響く。
「存在してないみたいに扱われるんです」
女性の声が震える。
「私、本当にここにいますよね?」
俺は、しばらく黙った。
「いるよ」
短く言う。
「ここに来て、話してる」
女性は、少しだけ安心したように笑った。
「……よかった」
しばらく話を聞き、
女性は何度も礼を言って帰っていった。
ドアが閉まる。
俺はコーヒーを飲む。
「解決したな」
相棒が怪訝そうな顔をする。
「……誰の話?」
「さっきの相談者」
「今日、相談なんてなかったわよ」
手が止まる。
「……は?」
「ずっと二人だけだったじゃない」
事務所は静かだ。
机の上を見る。
来訪者記録のノート。
今日のページは、白紙だった。
相棒が首をかしげる。
「誰の話してるの?」
沈黙。
窓の外を見る。
誰かがここに来ていた気がする。
話を聞いた気がする。
けれど――
証拠が、どこにもない。
だから。
もう、証拠はいらない。
そう思った瞬間。
机の上のスマホが震えた。
知らない番号からのメッセージ。
『今日は話を聞いてくれて、ありがとうございました』
「……相談、いいですか?」
入ってきた女性は、どこか怯えた顔をしていた。
俺はソファから体を起こす。
「どうぞ。愚痴でも人生相談でも歓迎」
女性は椅子に座り、すぐ言った。
「私……周りから忘れられるんです」
「忘れられる?」
「昨日話したことも、なかったことにされるんです」
ふと横を見ると、相棒は奥で電話に出ていた。
「勘違いじゃなく?」
「違います」
女性は首を振る。
「同僚も、友達も、家族も」
「昨日一緒にいたのに、今日には覚えてないって」
静かな部屋に、時計の音だけが響く。
「存在してないみたいに扱われるんです」
女性の声が震える。
「私、本当にここにいますよね?」
俺は、しばらく黙った。
「いるよ」
短く言う。
「ここに来て、話してる」
女性は、少しだけ安心したように笑った。
「……よかった」
しばらく話を聞き、
女性は何度も礼を言って帰っていった。
ドアが閉まる。
俺はコーヒーを飲む。
「解決したな」
相棒が怪訝そうな顔をする。
「……誰の話?」
「さっきの相談者」
「今日、相談なんてなかったわよ」
手が止まる。
「……は?」
「ずっと二人だけだったじゃない」
事務所は静かだ。
机の上を見る。
来訪者記録のノート。
今日のページは、白紙だった。
相棒が首をかしげる。
「誰の話してるの?」
沈黙。
窓の外を見る。
誰かがここに来ていた気がする。
話を聞いた気がする。
けれど――
証拠が、どこにもない。
だから。
もう、証拠はいらない。
そう思った瞬間。
机の上のスマホが震えた。
知らない番号からのメッセージ。
『今日は話を聞いてくれて、ありがとうございました』
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【完結】あなた方は信用できません
玲羅
恋愛
第一王子から婚約破棄されてしまったラスナンド侯爵家の長女、ファシスディーテ。第一王子に寄り添うはジプソフィル子爵家のトレニア。
第一王子はひどい言いがかりをつけ、ファシスディーテをなじり、断罪する。そこに救いの手がさしのべられて……?
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
私が消えたその後で(完結)
毛蟹
恋愛
シビルは、代々聖女を輩出しているヘンウッド家の娘だ。
シビルは生まれながらに不吉な外見をしていたために、幼少期は辺境で生活することになる。
皇太子との婚約のために家族から呼び戻されることになる。
シビルの王都での生活は地獄そのものだった。
なぜなら、ヘンウッド家の血縁そのものの外見をした異母妹のルシンダが、家族としてそこに溶け込んでいたから。
家族はルシンダ可愛さに、シビルを身代わりにしたのだ。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる