心の隙間に入り込むホラー短編集

Wataru

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歓迎会の集合写真に、私だけ写っていなかった

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 部署で、集合写真を撮ることになった。

 異動してくる人の歓迎会のあと、店の前で全員並ぶ。

「はい、詰めて詰めてー」

 カメラ係が声を上げる。

 私は端に寄り、隣の同僚と肩が触れるくらいに立った。

「そこ空いてるよ」

「大丈夫、入ってるって」

 笑いながら返す。

 フラッシュが光る。

 それで終わりだった。



 翌日。

 社内チャットに写真が上がった。

 何気なく開いて、指が止まる。

「……あれ?」

 私が、いない。

 私が立っていたはずの場所だけ、
 ぽっかり空いている。

 隣にいたはずの同僚同士が、
 不自然な距離で並んでいる。

 まるで、
 最初からそこに誰もいなかったみたいに。

「ねえ」

 隣の席の同僚にスマホを見せる。

「これ、私どこ?」

「どこって……」

 同僚は画面を覗き込み、首をかしげた。

「いないね」

「いや、いたでしょ?」

「え?」

 本気で不思議そうな顔をする。

「その日、体調悪くて休んでなかった?」

 笑いながら言う。

「……は?」

「歓迎会も来てなかったじゃん」

 冗談だと思った。

 でも周りに聞いても、同じ答えだった。

 歓迎会の日、
 私はいなかったことになっている。



 スマホの写真フォルダを開く。

 昼に撮ったはずの料理の写真がない。

 同僚と乾杯した動画もない。

 その日の記録だけ、
 綺麗に消えている。

 でも。

 鞄の中には、その店のレシートが入っていた。

 日付も時間も、その日のもの。

 私は確かに、そこにいた。



 翌日、出社すると、
 どこか空気が変だった。

 自分の席に座ろうとして、
 手が止まる。

「……あれ?」

 机の上に、
 知らない人の名前が貼られている。

「この席、前から空いてたっけ?」

 誰かが言う。

「前の人、いつ辞めたんだっけ?」

「結構前じゃない?」

 会話が遠くで聞こえる。

 私は立ったまま、
 誰にも気づかれない。

「……あの」

 声を出したはずなのに、
 誰も振り向かない。

 その瞬間。

 社内チャットに、新しい写真が上がった。

 昨日撮った、
 部署の作業風景。

 全員が写っている。

 ただ一箇所だけ。

 私が座っているはずの席だけ、
 最初から誰もいなかったみたいに、
 空いていた。
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