心の隙間に入り込むホラー短編集

Wataru

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床の下から、物を持っていく何かがいる

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最初は、リモコンだった。

テーブルの端に置いたはずなのに、気づくと消えている。

ソファの下や棚の裏を探すと、別の場所から出てくる。

まあ、よくあることだと思っていた。



次は、鍵だった。

玄関の床に置いた記憶はあるのに、見当たらない。

結局、翌朝、寝室の机の上から見つかった。

自分で移動させたんだろうと思った。



だが、同じことが何度も続く。

物がなくなる場所は、決まっていた。

リビングの床の、ある一角。

そこに置いた物だけが消える。

試しに、ボールペンを置いてみた。

翌朝、やはりなくなっていた。



気味が悪くなったが、好奇心もあった。

ある夜、スマホをその場所に置き、離れたところから様子を見ることにした。

動画を回しながら。

何も起きない。

五分。

十分。

やっぱり気のせいかと思い、スマホを拾いに近づく。

しゃがみ込み、手を伸ばした瞬間だった。

床の隙間から、

黒ずんだ指が一本、にゅっと出てきた。

そして、スマホを掴み、下へ引きずり込もうとする。

息が止まる。

慌てて引っ張り返すと、指はするりと床の下へ消えた。



翌日。

床を確認した。

どこにも隙間なんてない。

動画も、途中から記録が消えていた。



それ以来、その場所には何も置かないようにしている。

だが最近、気づいた。

物が消える場所が、

少しずつ、

ベッドの方へ近づいてきていることに。
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