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弱くなったリーダー
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翌日。
昼休みの屋上には、風だけが吹いていた。
フェンスにもたれていると、
ドアが開く音がした。
足音で分かる。
「……来たのか」
振り向かないまま言う。
光一は、隣に来なかった。
少し離れた場所に立ったまま言う。
「昨日の件な」
「問題ない」
即答する。
「軽い打撲だ」
沈黙。
「そういう話してんじゃねぇ」
声が低い。
珍しい。
光一は、感情を表に出さないタイプだ。
「何だよ」
「効率の話だ」
淡々と続ける。
「殴られて終わり」
「また明日も同じことが起きる」
風が吹く。
「助けた気になってるだけだろ」
言い返そうとして、
言葉が出ない。
「最短で止めるなら」
「力使えば三秒で終わる」
事実だった。
「なのに、お前は選ばなかった」
「……修行だからな」
光一は、鼻で笑った。
「違ぇよ」
視線が刺さる。
「お前、自分に酔ってるだけだ」
胸の奥が、わずかに揺れる。
「自己犠牲してる自分が、
気持ちいいだけだろ」
「違う」
反射的に否定する。
だが、声に自信がない。
光一は続ける。
「リーダーってのはな」
一瞬、間が空く。
「殴られる奴じゃない」
静かに言い切る。
「全員を、生きて帰らせる奴だ」
言葉が刺さる。
向こうの世界で、
何度も聞いた言葉だ。
さらに、低い声で続ける。
「……俺が憧れてたのは」
わずかに間。
「誰よりも強かった頃のお前だ」
風が吹き抜ける。
「どんな状況でも」
「迷わず前に立って」
「全部片付けて」
拳を握る音が聞こえた気がした。
「今のお前見るの、正直きつい」
沈黙。
「昨日のお前は」
「自分だけ殴られて終わり」
光一は吐き捨てる。
「部下を危険にさらす奴なんか、
リーダーじゃねぇ」
沈黙。
そして。
「……もういい」
光一は背を向ける。
「俺は、俺のやり方で徳を積む」
足が止まる。
振り返らないまま言う。
「戻るときは、先に戻る」
さらに一歩。
「弱くなったお前の面倒まで、
見る気ねぇよ」
ドアが閉まる。
屋上に、風の音だけが残る。
フェンスを握る手に、
力が入っているのに気づく。
弱くなった。
そうなのかもしれない。
だが。
拳を振るえば解決していた頃より、
今の方が――
何かが、分からなくなっている。
それだけは、確かだった。
昼休みの屋上には、風だけが吹いていた。
フェンスにもたれていると、
ドアが開く音がした。
足音で分かる。
「……来たのか」
振り向かないまま言う。
光一は、隣に来なかった。
少し離れた場所に立ったまま言う。
「昨日の件な」
「問題ない」
即答する。
「軽い打撲だ」
沈黙。
「そういう話してんじゃねぇ」
声が低い。
珍しい。
光一は、感情を表に出さないタイプだ。
「何だよ」
「効率の話だ」
淡々と続ける。
「殴られて終わり」
「また明日も同じことが起きる」
風が吹く。
「助けた気になってるだけだろ」
言い返そうとして、
言葉が出ない。
「最短で止めるなら」
「力使えば三秒で終わる」
事実だった。
「なのに、お前は選ばなかった」
「……修行だからな」
光一は、鼻で笑った。
「違ぇよ」
視線が刺さる。
「お前、自分に酔ってるだけだ」
胸の奥が、わずかに揺れる。
「自己犠牲してる自分が、
気持ちいいだけだろ」
「違う」
反射的に否定する。
だが、声に自信がない。
光一は続ける。
「リーダーってのはな」
一瞬、間が空く。
「殴られる奴じゃない」
静かに言い切る。
「全員を、生きて帰らせる奴だ」
言葉が刺さる。
向こうの世界で、
何度も聞いた言葉だ。
さらに、低い声で続ける。
「……俺が憧れてたのは」
わずかに間。
「誰よりも強かった頃のお前だ」
風が吹き抜ける。
「どんな状況でも」
「迷わず前に立って」
「全部片付けて」
拳を握る音が聞こえた気がした。
「今のお前見るの、正直きつい」
沈黙。
「昨日のお前は」
「自分だけ殴られて終わり」
光一は吐き捨てる。
「部下を危険にさらす奴なんか、
リーダーじゃねぇ」
沈黙。
そして。
「……もういい」
光一は背を向ける。
「俺は、俺のやり方で徳を積む」
足が止まる。
振り返らないまま言う。
「戻るときは、先に戻る」
さらに一歩。
「弱くなったお前の面倒まで、
見る気ねぇよ」
ドアが閉まる。
屋上に、風の音だけが残る。
フェンスを握る手に、
力が入っているのに気づく。
弱くなった。
そうなのかもしれない。
だが。
拳を振るえば解決していた頃より、
今の方が――
何かが、分からなくなっている。
それだけは、確かだった。
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