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やがて到着した裏界の門をくぐり、現世に出た。
「たまには家まで送るか」
「え、大サービスだね」
広い道に出る。十八時前、歩道には多くの人が行きかっている。
夕暮れの中、昼間の熱がかすかにアスファルトから立ち上っていて、最近は四月からもう初夏みたいだなあと思う。
「燎火、なにか冷たいものでも飲んでいこうよ。かばん持ってくれたお礼に、おごるから」
「は。そんなつもりで持ったんじゃねえよ。おごるなら、先輩のおれだ」
それから少々言い合いをして、結局、今日のところは割り勘ということで落ち着いた。
駅ビルの中にあるお茶のお店で、私は桃とパイナップルのフルーツアイスティ、燎火は黒糖とザラメ入りの冷製ほうじ茶を選ぶ。
半個室のソファになっている席に入り、向かい合わせに座った。
この前、その名前を聞いてから食べたくなっていたオーギョーチをお茶うけにする。愛玉ゼリーをレモンシロップに入れて、クコの実などを飾った台湾のお菓子だ。
お疲れ様です、と言い合いつつそれぞれの飲み物のストローをくわえて、二人して冷たい液体を喉に流し込んだ。
「なんか、夏みたいなもん飲んでんな」
「日本の、走りと名残りって大事だと思うの。うう、みずみずしくさわやかな果物の香り……おいしい! ……黄桃あげようか?」
燎火は、缶詰のみかんや桃が好物だったのを思い出す。
「……もらう。おれのほうは、返せるものが今ねえけど」
オーギョーチは、二人でそれぞれ頼んであった。燎火のぶんまでもらっても、お腹がちゃぽちゃぽになってしまう。
「いいよ、そんなの」
「もらう一方っていうのは苦手だ」
「え、じゃあ、私のお願い一つ聞いてくれるっていうのは?」
燎火は、半眼になりつつも。
「言ってみな。言うだけは」
「じゃあさ」と私はテーブルの上に身を乗り出して、燎火にも耳を近づけてもらう。そして、小声で告げた。
「犬の姿になって。久しぶりに」
「……ここでか?」
半個室のカーテンは不透明で、のぞき込まなければ中は見えない。
もし見られたとしても、霊感の強い人でなければ、犬になった燎火の姿は見えないはずだった。
本当は、燎火が犬になるというより、本来犬の姿の燎火がいつもは人間に化けているというほうが正しいのだけど。
「そう。ここで」
「……少しだけだぞ」
燎火が目を閉じて、深く呼吸する。
すると、人間としての輪郭が失われて、二人掛けのソファが少し狭く思える、大型の黒い犬が現れた。
体をまっすぐにしていると座面に体が収まりきらないので、燎火は横になって背中を丸めている。
「で?」と、犬になっても半眼のままの燎火が訊いてきた。
「ふふふ、ありがと。私、そっち行くね」
「おい?」
いぶかしげにしている燎火のおなかに、私はすっぽりと入り込んだ。
背中に、人肌の温度に入れたお茶の湯飲みを掌で包んだ時のように、燎火の体温が伝わってくる。
普通の犬と違って毛が落ちることはないし、体温も人間より少し低い。見た目は犬でも、やっぱり妖怪だ。でもその体には、寄り添う者の。気持ちが落ち着く温かみがある。
「燎火。今日、助けてくれてありがとう。私が心配で、戻ってきてくれたんでしょう」
「……心配ってほどでもねえけど」
「今日だけじゃなくて、ずっと助けてくれてるよね」
「人間がどう考えてるかは知らんが、職場ってのは助け合って初めてまともに回るんじゃねえの」
私は燎火のオーギョーチを薄い木のスプーンですくい、レモンシロップがこぼれないように気をつけながら、大きな犬の口に運んだ。
燎火は舌をぺろりと伸ばして、器用にゼリーを舐めとる。
「それは、人間だってそう思ってるよ」
「そうか? 気の弱いやつに理不尽に仕事を押しつけたり、下の者が上役に対して意味もなく反抗的だったり、自分たちの力を削ぐようなことばかりしている会社をいくつも現世で見たがな」
……そういうシーンがあるのは、否定できない。
「うん……できれば、現世でも裏界でも、嫌なことなく、楽しく働きたいね」
「有栖に関しては、少なくとも会社が裏界にあるせいで起こる難事のすべてからは、おれが守ってやるよ。ぜひ楽しく働いてくれ」
ほうじ茶のストローを燎火の口に軽く差し込む。犬の口だというのに、またも器用に、燎火は液体をこぼすことなくこくこくと飲んだ。
燎火の、柔らかいお腹の毛をなでる。
それから、背中、額、頭も。
「やめろよ。寝ちまう」
「寝てもいいよ。……あ、今日うち泊まる? 私が一人暮らししてから、うちに来たことないよね」
ゆったりと目を閉じかけていた燎火の瞼が。ぱちりと開いた。
黒目が、きょろ、と私を見る。
「ん? なに?」
「……有栖……今おれが犬の姿だからって、中身までただのかわいいわんちゃんだと思うなよ」
「かわいいわんちゃんときた。……っていうと?」
「おれが人間の男の姿でも、同じことが言えるのか?」
正直言って、犬の姿の燎火を見て、完全にわんちゃん――かわいいかどうかは別として――扱いしていた。
自分が、ひどく大胆なことを言ったかのように、いまさらながら思えてくる。
「ち、違うよ!? そういうあれじゃなくて、私はただ、実家の時はたまに軒下に泊まったりしてたけど最近ないなーってそれでなにも考えずに言ったのであって、」
そうまくしたてながら、今の私のワンルームに人間状態の燎火を入れた様子を想像する。
二人でローテーブルをはさんだり、ベッドをベンチ代わりにしたり、……。
急に、なにもかもが生々しく思い浮かんできた。
「わ、わあああ!? やだ!?」
「やだはこっちのセリフだ。ったく」
私の後ろで、燎火が身じろぐ気配がする。
気がつくと、人間の姿になった燎火が、私の左隣に座っていた。
私の左半身が、燎火の右腕にぴたりと寄り添っている。
「ひゃっ!? ご、ごめんっ」
急いで離れ、向かいの席に戻った。
「有栖相手には、人間の姿でいるほうが、いろいろ安全かもしれねえな。子供のころとは違うんだから、おれ相手にあんまり油断するなよ」
燎火は苦笑している。
「ぐっ……ど、どうも……」
喉が渇いてしまって、残っていたフルーツティを一息に吸った。
火照った頭に、冷たさが心地よかった。
そうだ。燎火が犬の姿なんかしているから、気軽にうちになんて誘ってしまったのだ。
人間の燎火が私の家に来て二人っきりで過ごすところを想像するのは、本人には決して言えない、ひそやかな私の楽しみだったのに。
燎火と出会った時のことを思い出す。
高校一年生だった私。夏休みのある日。
近所の神社にある林の中で、傷だらけの大きな黒い犬を見つけた。
口元に覗く牙が鋭くて、私なんてひと噛みで殺されてしまいそうだったのに、大けがをしているせいか、私よりもずっと弱弱しく見えた。
それからしばらく、昼夜を問わずに神社に通った。
動物を扱う動画の見よう見まねで手当てをし、水や食べ物を上げると、犬がいきなり「ドッグフードなんぞ食うか。舐めるなよ」としゃべったので、腰が抜けそうになった。
私の行動を怪しんだお母さんと、けんかになった。
その夜、犬に、もう来られないかもしれないと告げると、目を細めて「構わん。感謝している」と言われた。
その時、木立の陰から、白い大きな蛇――私くらいならひと飲みにできそうな――が犬に襲いかかってきた。
私は、立ち上がれもせずにいる犬と蛇の間に、思わず立ちはだかった。
犬はだいぶ回復してきていて、少なくともこの時には、私よりもずっと強かったはずだ。
それでもそうした。
驚いた犬は慌てて私を横にどかし、大きく口を開けてひと声吠えると、蛇は消し飛んでしまった。
「……凄い。強いんだね」
「なぜおれを助けようとした。おれより弱いだろう、お前は」
あの時、なんて答えたんだっけ。
その後、燎火は自分の名前と、人間の姿になれること、妖怪としてもう四百年くらい生きているけど自我を持ったのはこの十数年だということを教えてくれた。
それから、会わない時期もあったけど、気がつけば当たり前のように一緒に過ごしたりもしている。
人間と妖怪は、いっとき仲良くなっても、あまり関係が長続きしないことが多いらしい。根本的に、価値観も、優先順位も、感性も、この世界でのありようもなにもかも違うからだ。
それでもなぜ私の傍にいてくれるのかと訊いたら、
「おれが見たいと思っていたものを有栖が見せてくれたからだ」
と言っていた。
私は燎火に、なにを見せられたんだろう。
それは、いまだに教えてもらえないままでいる。
ああそうだ、思い出した。
燎火の質問に、私は自分のほうが弱いと自分で言うのが少ししゃくで、
「そうだね。あなたがその気になったら、私なんて一瞬でやっつけられちゃうんだろうね」
とすねるように言ったのだ。
そして燎火が、
「いいや。おれは、君のことは傷つけない」
と答えた。
自分の言葉はすぐに忘れそうになるのに、なぜか、燎火の言葉ははっきりと覚えている。
■
「たまには家まで送るか」
「え、大サービスだね」
広い道に出る。十八時前、歩道には多くの人が行きかっている。
夕暮れの中、昼間の熱がかすかにアスファルトから立ち上っていて、最近は四月からもう初夏みたいだなあと思う。
「燎火、なにか冷たいものでも飲んでいこうよ。かばん持ってくれたお礼に、おごるから」
「は。そんなつもりで持ったんじゃねえよ。おごるなら、先輩のおれだ」
それから少々言い合いをして、結局、今日のところは割り勘ということで落ち着いた。
駅ビルの中にあるお茶のお店で、私は桃とパイナップルのフルーツアイスティ、燎火は黒糖とザラメ入りの冷製ほうじ茶を選ぶ。
半個室のソファになっている席に入り、向かい合わせに座った。
この前、その名前を聞いてから食べたくなっていたオーギョーチをお茶うけにする。愛玉ゼリーをレモンシロップに入れて、クコの実などを飾った台湾のお菓子だ。
お疲れ様です、と言い合いつつそれぞれの飲み物のストローをくわえて、二人して冷たい液体を喉に流し込んだ。
「なんか、夏みたいなもん飲んでんな」
「日本の、走りと名残りって大事だと思うの。うう、みずみずしくさわやかな果物の香り……おいしい! ……黄桃あげようか?」
燎火は、缶詰のみかんや桃が好物だったのを思い出す。
「……もらう。おれのほうは、返せるものが今ねえけど」
オーギョーチは、二人でそれぞれ頼んであった。燎火のぶんまでもらっても、お腹がちゃぽちゃぽになってしまう。
「いいよ、そんなの」
「もらう一方っていうのは苦手だ」
「え、じゃあ、私のお願い一つ聞いてくれるっていうのは?」
燎火は、半眼になりつつも。
「言ってみな。言うだけは」
「じゃあさ」と私はテーブルの上に身を乗り出して、燎火にも耳を近づけてもらう。そして、小声で告げた。
「犬の姿になって。久しぶりに」
「……ここでか?」
半個室のカーテンは不透明で、のぞき込まなければ中は見えない。
もし見られたとしても、霊感の強い人でなければ、犬になった燎火の姿は見えないはずだった。
本当は、燎火が犬になるというより、本来犬の姿の燎火がいつもは人間に化けているというほうが正しいのだけど。
「そう。ここで」
「……少しだけだぞ」
燎火が目を閉じて、深く呼吸する。
すると、人間としての輪郭が失われて、二人掛けのソファが少し狭く思える、大型の黒い犬が現れた。
体をまっすぐにしていると座面に体が収まりきらないので、燎火は横になって背中を丸めている。
「で?」と、犬になっても半眼のままの燎火が訊いてきた。
「ふふふ、ありがと。私、そっち行くね」
「おい?」
いぶかしげにしている燎火のおなかに、私はすっぽりと入り込んだ。
背中に、人肌の温度に入れたお茶の湯飲みを掌で包んだ時のように、燎火の体温が伝わってくる。
普通の犬と違って毛が落ちることはないし、体温も人間より少し低い。見た目は犬でも、やっぱり妖怪だ。でもその体には、寄り添う者の。気持ちが落ち着く温かみがある。
「燎火。今日、助けてくれてありがとう。私が心配で、戻ってきてくれたんでしょう」
「……心配ってほどでもねえけど」
「今日だけじゃなくて、ずっと助けてくれてるよね」
「人間がどう考えてるかは知らんが、職場ってのは助け合って初めてまともに回るんじゃねえの」
私は燎火のオーギョーチを薄い木のスプーンですくい、レモンシロップがこぼれないように気をつけながら、大きな犬の口に運んだ。
燎火は舌をぺろりと伸ばして、器用にゼリーを舐めとる。
「それは、人間だってそう思ってるよ」
「そうか? 気の弱いやつに理不尽に仕事を押しつけたり、下の者が上役に対して意味もなく反抗的だったり、自分たちの力を削ぐようなことばかりしている会社をいくつも現世で見たがな」
……そういうシーンがあるのは、否定できない。
「うん……できれば、現世でも裏界でも、嫌なことなく、楽しく働きたいね」
「有栖に関しては、少なくとも会社が裏界にあるせいで起こる難事のすべてからは、おれが守ってやるよ。ぜひ楽しく働いてくれ」
ほうじ茶のストローを燎火の口に軽く差し込む。犬の口だというのに、またも器用に、燎火は液体をこぼすことなくこくこくと飲んだ。
燎火の、柔らかいお腹の毛をなでる。
それから、背中、額、頭も。
「やめろよ。寝ちまう」
「寝てもいいよ。……あ、今日うち泊まる? 私が一人暮らししてから、うちに来たことないよね」
ゆったりと目を閉じかけていた燎火の瞼が。ぱちりと開いた。
黒目が、きょろ、と私を見る。
「ん? なに?」
「……有栖……今おれが犬の姿だからって、中身までただのかわいいわんちゃんだと思うなよ」
「かわいいわんちゃんときた。……っていうと?」
「おれが人間の男の姿でも、同じことが言えるのか?」
正直言って、犬の姿の燎火を見て、完全にわんちゃん――かわいいかどうかは別として――扱いしていた。
自分が、ひどく大胆なことを言ったかのように、いまさらながら思えてくる。
「ち、違うよ!? そういうあれじゃなくて、私はただ、実家の時はたまに軒下に泊まったりしてたけど最近ないなーってそれでなにも考えずに言ったのであって、」
そうまくしたてながら、今の私のワンルームに人間状態の燎火を入れた様子を想像する。
二人でローテーブルをはさんだり、ベッドをベンチ代わりにしたり、……。
急に、なにもかもが生々しく思い浮かんできた。
「わ、わあああ!? やだ!?」
「やだはこっちのセリフだ。ったく」
私の後ろで、燎火が身じろぐ気配がする。
気がつくと、人間の姿になった燎火が、私の左隣に座っていた。
私の左半身が、燎火の右腕にぴたりと寄り添っている。
「ひゃっ!? ご、ごめんっ」
急いで離れ、向かいの席に戻った。
「有栖相手には、人間の姿でいるほうが、いろいろ安全かもしれねえな。子供のころとは違うんだから、おれ相手にあんまり油断するなよ」
燎火は苦笑している。
「ぐっ……ど、どうも……」
喉が渇いてしまって、残っていたフルーツティを一息に吸った。
火照った頭に、冷たさが心地よかった。
そうだ。燎火が犬の姿なんかしているから、気軽にうちになんて誘ってしまったのだ。
人間の燎火が私の家に来て二人っきりで過ごすところを想像するのは、本人には決して言えない、ひそやかな私の楽しみだったのに。
燎火と出会った時のことを思い出す。
高校一年生だった私。夏休みのある日。
近所の神社にある林の中で、傷だらけの大きな黒い犬を見つけた。
口元に覗く牙が鋭くて、私なんてひと噛みで殺されてしまいそうだったのに、大けがをしているせいか、私よりもずっと弱弱しく見えた。
それからしばらく、昼夜を問わずに神社に通った。
動物を扱う動画の見よう見まねで手当てをし、水や食べ物を上げると、犬がいきなり「ドッグフードなんぞ食うか。舐めるなよ」としゃべったので、腰が抜けそうになった。
私の行動を怪しんだお母さんと、けんかになった。
その夜、犬に、もう来られないかもしれないと告げると、目を細めて「構わん。感謝している」と言われた。
その時、木立の陰から、白い大きな蛇――私くらいならひと飲みにできそうな――が犬に襲いかかってきた。
私は、立ち上がれもせずにいる犬と蛇の間に、思わず立ちはだかった。
犬はだいぶ回復してきていて、少なくともこの時には、私よりもずっと強かったはずだ。
それでもそうした。
驚いた犬は慌てて私を横にどかし、大きく口を開けてひと声吠えると、蛇は消し飛んでしまった。
「……凄い。強いんだね」
「なぜおれを助けようとした。おれより弱いだろう、お前は」
あの時、なんて答えたんだっけ。
その後、燎火は自分の名前と、人間の姿になれること、妖怪としてもう四百年くらい生きているけど自我を持ったのはこの十数年だということを教えてくれた。
それから、会わない時期もあったけど、気がつけば当たり前のように一緒に過ごしたりもしている。
人間と妖怪は、いっとき仲良くなっても、あまり関係が長続きしないことが多いらしい。根本的に、価値観も、優先順位も、感性も、この世界でのありようもなにもかも違うからだ。
それでもなぜ私の傍にいてくれるのかと訊いたら、
「おれが見たいと思っていたものを有栖が見せてくれたからだ」
と言っていた。
私は燎火に、なにを見せられたんだろう。
それは、いまだに教えてもらえないままでいる。
ああそうだ、思い出した。
燎火の質問に、私は自分のほうが弱いと自分で言うのが少ししゃくで、
「そうだね。あなたがその気になったら、私なんて一瞬でやっつけられちゃうんだろうね」
とすねるように言ったのだ。
そして燎火が、
「いいや。おれは、君のことは傷つけない」
と答えた。
自分の言葉はすぐに忘れそうになるのに、なぜか、燎火の言葉ははっきりと覚えている。
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