自分らしく居られる場所を

親の目を盗んで

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序章

『神童』の本領

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「なっ!?」

エルロンドは思わず驚きの声を上げた。たった一合打ち合っただけで目の前の少年が昨日とは別人のように実力をつけていると感じた。

彼の剣にはもはやほとんど隙がない。

「『風装』」

目の前の少年が何かの詠唱をした。瞬間、エルロンドは身体強化魔法の強化倍率を引き上げ、飛び上がる。

レイの剣はエルロンドの背後より迫っていた。

「ほう、これをよけられるとは。さすがだな。まだまだ改良の余地がある。」

レイはエルロンドにから語り掛ける。

「なんだと、っ!?ぐわっ!」

レイはエルロンドに踵落としを炸裂させる。しかし、さすがはエルロンド。腕をクロスし、頭を守る。

だが、その勢いは衰えず、エルロンドは高所から地面にたたきつけられる。

(なんという重い一撃だ。だが…)

「子供に負けたくはないのでなぁ、恨まねえでくださいよ、坊ちゃん。」

「安心しろ。子供でも、『神童』なのだ。言い訳をするには十分な事実だろう。」

「ぬかせ!」

エルロンドが攻めに入る。切り上げ、突き、袈裟切り…そのどれもが洗練された動きだった。

だが、レイはそのどれも最小限の動きで避けている。

(おいおい、冗談だろう?)

エルロンドは目の前の少年の動きがどんどん洗練されたものになっているのを感じ、冷や汗をかいた。

「どうした?この程度か?」

(なら、これでどうだ!)

エルロンドはレイの言葉を無視し、瞬間的に高倍率の身体強化をかけた、自分の最高速の一閃を放った。

だが…

(ッ!?流されただと!?あり得ん!)

エルロンドの攻撃は流され、レイは追撃を加える。

ギャリリリ…

エルロンドは何とかその攻撃を受け止める。

「少し肝が冷えたぞ?その調子だ。」

レイは笑っていた。

「なら、これはどうだ!」

エルロンドは土魔法でレイの足場を崩す。そして上段からの攻撃を加える。

「無駄なことを。」

レイの姿勢は崩れることなく、エルロンドの剣を受け流し、そのまま自分の剣をエルロンドの首筋に当てる。

レイは『風装』を全身に纏っている。そのため、空中でも…いや、むしろ地上より踏ん張りがきく状態になっている。そのため、地面がどうなろうと、空を踏みしめ、このような芸当ができるのだ。

「俺の勝ちだな?エルロンド。」

レイは笑顔で話しかける。

「っ!…ああ。まさか、本当に負けるなんてなぁ。油断した気はなかったが…さすがは『神童』といったところですねぇ。」

(ありえねえ。なんだ、今の動きは!?剣術だって、昨日のものとは全く違う、しかも何の違和感もない動きだったぞ!?…いや、それより、なによりも恐ろしいのは、この短い間でとんでもないほど成長していやがった。)

なんとか平静を保とうとしたが、内心穏やかなものではなかった。

「フン。当たり前だろう。俺は最高で最強な男なのだからな。」

エルロンドにはその言葉を否定できなかった。

(もはや、この男に勝てる者など…だが、いずれはこのお方に仕える事ができるのなら。)

「ふふ」

エルロンドは口元を綻ばせた。

まさか、自分を圧勝するような者が現れるとは思わなかったのだ。しかもそれが十歳の少年。

これからが楽しみである。
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