自分らしく居られる場所を

親の目を盗んで

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一章

遭遇

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そろそろ、本格的に動くべきだろう。

ここは貧民街。俺はSランク冒険者としてお忍びで魔物の巣に向かっていた途中であり、たしかこっちに近道があったはずだと思ったのだが…

なるほど。スラムの道はあるようでないというのは本当らしい。俺が記憶している道とはずいぶんと変わっている。どうしたものか。と思っていた矢先、

「ねえ、そこのかっこいいお兄さん。」

ここらに住んでいるのであろう、小汚い少女が声をかけてきた。

…なかなかの実力者のようだ。俺ほどではないが、『天才』と言われるくらいには才能に満ち溢れているようだ。

「道に迷ったんでしょ?案内してあげる代わりに、恵んでくれないかな?」

なるほど。それはありがたい。魂胆は見え透いているが、案内はしてもらおう。

「これでいいだろう?ほら、拾え。」

俺は金貨を三枚転がす。

「わあ、ほんとに何者なの?」

少女が金貨を拾う素振りをしたと思えば背後から男が三人、目の前の少女が俺の首筋に向けて短剣を振るう。

「はあ、無駄なことを。」

目の前の少女を魔法で拘束し、背後からの三人の心臓を剣で突き刺す。

「っ!このっ…えっ!?」

少女の目にはその動きが見えなかったのだろう。戸惑っているようだ。

「ふむ、速さだけで言えばエルロンドに並ぶか…」

いい人材になりそうだ。

そう思っていると、スラムの奥から小さい影が三つ出てきた。

「お、お姉ちゃんから手を放せ!」

「そ、そうだ!この悪者め!」

「お、お願いします。どうか、その人だけは…」

その幼い少女三人が何か言ってくる。

「あ、あなた達!なんでここにいるの?逃げて!早く!」

「知り合いか?」

「う、うん。血はつながってないけど、妹みたいな子達なの。だから、お願いします。ボク、なんでもしますから。この子達は見逃してください。」

この少女は拘束されながらも器用に頭を下げる。

「ほう、『なんでも』と言ったか?」

俺は確認するように問う。

「う、うん。でも、その代わり…」

何かを悟ったのか少女は顔を青ざめさせた。だがそれでも三人の心配をしているようだ。

「いいだろう。その三人には手を出さん。だが、お前には来てもらうぞ?」

俺がそういい、少女を左肩に担いで屋敷に向かう。

「おい!お前、その女の子を放せ!」

ん?こいつは…

「アレン、お前、なぜこんなところにいる?」

未来で会ったことこそあるが、今はまだ会ったことはないはずだ。

それに、このような場所で会うはずもないのだが…

「っ!?なんでお前が俺の名前を知ってるんだ!?…いや、そんなことより、その子を放せ!」

「待て待て、こいつは盗賊だぞ?こいつから手を出してきたんだ。俺が責められるようなことは何もない。」

俺は事実を言う。

「ち、違う!お願いします!助けてください!」

俺に担がれた少女がそう言った。

…ああ、面倒だ。

俺は拘束魔法で口を閉じさせる。

「そういうことか。なら、容赦はしない。」

アレンは察したように呟き、鞘から剣を抜き、俺に切りかかる。

俺はそれを受ける。素手で。片手の白刃取りだ。…こいつは殺す気がない、というより、人を殺したことが無いのだろう。

「お前、やる気があるのか?そんな体たらくじゃあ、クラリスも守れないぞ?」

「っ!?…お前、なんでクラリスのことを知っているんだ!?」

アレンは驚愕と不安でいっぱいのようだ。

「おっと、口が滑ってしまったか。…まあいい。」

「お前、まさか、クラリスを狙っているのか!?」

アレンはクラリスの体質が多くの人間に狙われるものだと知っている。だが、その情報は村の者が皆、隠しているということも知っている。

もし、情報が漏れていたなら…

「そうだと言えば?」

「本気で行く!」

アレンは身体強化魔法を自身にかけ、炎属性魔法をレイに向ける。

(青い炎…完全燃焼の火か。やはり、こいつも『日本人』なのか?)

だが…

「無駄なことを。」

レイは風魔法でその炎の近くを真空にする。

それと同時にアレンの身体を横に。合気道の技の一つだ。

「っ!?うっ、カハッ…」

「寝てろ。」

レイは、体勢を崩しているアレンに膝蹴りを入れ、仰向けに倒れたその男の顎に軽く蹴りを入れた。

「っ、う、ま、待て…ぇ…」

アレンは脳震盪で意識が朦朧としながら、あの少女が連れていかれる光景を最後に意識を手放した。
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