自分らしく居られる場所を

親の目を盗んで

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一章

クラリス攻略

「え…」

今、目の前の男性は何と言っただろうか。

…Sランク冒険者。

それは職業でありながら同時に称号でもある。

クラリスは、彼女の幼馴染の両親がSランク冒険者だったためこの程度の反応であったが、一生に一度目にする事ができれば、その人生に釣りが返ってくるくらいの出来事である。

「ふむ、思ったよりも反応が薄いな。…もしや、俺とは別のSランク冒険者に会ったか?」

レイは問う。

「え!?…な、なんで…」

クラリスは言い当てられ、つい声に出してしまう。

「ふふ、このくらいは簡単だ。…ついでにもう一つ。『何を悩んでいる?』」

「っ!?」

クラリスは図星だった。そして何よりも恐怖を抱いた。なんでも見透かされるような、隠し事ができないような、そんな気がした。



クラリスは、レイがSランク冒険者であることを知った時、驚きはしたが、それ以上に嫉妬した。自分では絶対にたどり着けない。いかに才能に恵まれようと、病にかかってしまった自分では、魔法一つも使えないのだから。

クラリスは気が付けば、その胸の内をすべて吐き出していた。決して言うまいと、五年前に自分に誓ったはずなのに…

「なら、治せばいい。」

レイはそう言った。

「…そんなこと、できるわけないじゃないですか。もう、何度も試したんですよ?」

「治せなくとも、魔法を使えるようにすればいい。…方法はいくらでもある。」

レイは続けてそう言った。

「どういうことですか?あなたにはそれができるとでも?」

クラリスは少しだけ期待した。

「いや、それをするのはお前だ。」

「無理ですよ!何度も、試して。何度も、無理だと言われ。何度も、諦めろと、言われました。」

クラリスは過去、自分に向けられた、失望、心配、哀れみの視線を思い出す。

「だからなんだ?お前がその第一人者になればいいだろう?」

レイはなんてことないように言う。

「そんなこと、不可能です!」

「いいや、できる。」

「何を根拠に言っているんですか!」

クラリスは悲鳴のような声を上げる。

「俺は自分を信じている。だから俺はその『俺』が信じているものを信じている。…そして、『俺』はクラリス、お前を信じている。お前ならやれる。」

レイはそう断言した。

「え…」

クラリスはレイが何を言っているのかよく分からなかった。だが…

「クラリス、もっと自分を信じろ。それができないのであれば、『俺』を信じろ。お前を信じている『俺』を信じろ。そして諦めるな。」

レイはクラリスの手を取り、彼女の魔力を制御する。

「え、///な、急に、何ですか…」

クラリスは手を握られ、緊張しているようだ。

「思い出せ、クラリス。魔法はどうやって使っていた?やってみろ。」

「え…は、はい。」

クラリスは使いたくなかったはずの、発動しないはずの魔法を発動させようとする。

(『お前ならやれる』なんて、初めて言われました。…そうですよ。この魔法が発動するかなんて、そんなことは重要じゃないんです。私は…)

「世界で一番の魔法使いになりたい…」

クラリスの口から零れた本音。子供のころに抱いていた、淡い夢。

「そうだ。それでいい。」

レイはクラリスが魔法を発動させようとしているのを感じ、それをサポートする。

そして、

そこには一口くらいの大きさの水球が現れた。

世界で一番の魔法使いの術には程遠いが、確かにクラリスが発動させた魔法だった。

「…った。やった、やりました!やりましたよ、レイさ…」

レイは魔力切れで倒れるクラリスを受け止め、寝袋に寝かせる。

「ああ、よくやった。…これからが楽しみだ。」

レイはそう言い、クラリスの頭を撫でた。
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