自分らしく居られる場所を

親の目を盗んで

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一章

テラーズ村

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「う、ん…」

クラリスは何か美味しそうな匂いに目を覚ます。

「起きたか。もう少し待て。…じきにできる。」

そこには朝食を作っているレイがいた。

「え、レイさんは料理もできるのですか?」

クラリスは驚きといった様子だ。

「ああ、俺は天才なんだ。なんだってできるさ。」

「自分で言いますか…それより、さすがに悪いので、お手伝いしますよ?」

クラリスは立ち上がる。

「大丈夫だ、もう終わる。座れ。」

レイはそれを制する。クラリスは『ですが…』と言おうとしたが、レイが料理を運んできたので、大人しく座ることにした。

「では、あの、いただきますね?」

「ああ。昨日はディナーを食べ損ねただろう?多めに作ってやったから遠慮せず食え。」

確かに今はすごく空腹であり、目の前の見たこともないような、美味しそうな料理を前に残すのも失礼だと思い、クラリスは食べ始めた。

「っ!…っ、…!……」

一口食べて止まらなくなったようだ。クラリスは夢中で食べていた。



「す、すみません。とてもおいしくて、つい夢中で…はしたなかったですよね…」

「まあ、行儀がいいとは言えなかったが、俺の料理が美味すぎるのが悪い。クラリスのせいではない。」

レイは相変わらずである。そのことにクラリスは安心しつつも、疑問に思うことがあった。

「あの、なぜ私にこんなに良くしてもらえるのですか?…正直、お礼と言っても、そんな大層な物は持ってないのですが…」

クラリスは思い切って尋ねることにした。

「…お前の才能の全容を見たい。魔法の才能だけで言えば、俺にも並ぶかもしれんからな。」

レイはそう言った。…確かにそれもあるが、本当は自分の才能を超えるものなどないと証明したいだけなのだ。それも、あえて彼が見た凄惨な未来と似たような結果をもたらすことで。

「それだけ、ですか?」

「ああ。」

レイはどこまで行ってもこういう人間なんだ。クラリスは自分が悩んでいたことが馬鹿らしくなった。

二人はその後しばらく、ティータイムを満喫したのだった。




「そろそろ行くか。」

「はい。」

レイとクラリスの仲はずいぶんと深まったようだ。特にクラリスはレイに少なからず好意を抱いているだろう。

レイはクラリスに案内を任せ、魔物の排除を行った。

特に何も問題は起きないまま日が高くなってきた頃、


「あ、見えました!あそこです。あそこが私達の村、テラーズ村です。」

二人は目的地に到着した。

クラリスは数日いなかっただけなのに、とても懐かしい気持ちになった。

「クラリス、その前に少し話をしよう。…君は自分の体質をどこまで知っている?」

「え、…確か、体の魔力抵抗がとても小さいらしく、おそらく遺伝的なもののようです。そのため、この体質が知れ渡れば、多くの人達が私を狙うかもしれない、と。」

クラリスはこのことを口止めされていたが、レイは知っていそうだったことと、彼を信用し、話すことを決めた。

「ああ、そうだ。それも、おそらく既に広がり、貴族たちがお前を狙っている。…俺の家も例外ではない。」

「え?」

クラレスはレイの言葉の意味が理解できなかった。

(『俺の家』?…まさか!)

「ああ。俺の本当の名はレイ・アドバンス。…アドバンス公爵家現当主だ。」

レイは真実を明かす。

「当主こそは俺だが、まだ公爵家全てを御しているわけではない。今は他のことに目を逸らさせてはいるが、それも時間の問題だろう。」

「あ、ちょ、ちょっと、待ってください。…え、えっと、レイさん、は公爵様なのですか?」

クラリスはまさかの事実に少なからずショックを受けていた。

「ああ。裏の顔としてSランク冒険者でもあるがな。」

「え、えええ…」

クラリスはもはやドン引きである。

「とにかく…っ!」

「クラリスから離れろおおおお!」

乱入者が何やら叫び、レイに向かって剣を振り下ろす。

レイはクラリスの手を引き、その場から離脱した。

「アレン!?」
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