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一章
衝突
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クラリスはその乱入者が自分の幼馴染だと知り、驚愕した。そして、なぜレイを攻撃したのか分からなかった。
アレンは正義感の強い男である。見知らぬ人間を急に攻撃するような人間ではないはずだ。
「お前!クラリスから手を放せ!この悪党が!」
アレンはレイを睨みつける。
「…」
「アレン、やめて!」
クラリスはレイの前に出て、守るように立つ。
「クラリス!?なんでそんな奴を庇うんだ!そいつは悪党だ!俺はそいつが女の子を攫っていったのを見たんだぞ!?」
アレンは決して間違いではないことを言った。
「え?…それは、レイさん、本当なんですか?」
クラリスは後ろにいるレイの方を振り返る。
「む、攫った…といえば、攫ったことになる、のか?まあ、彼女は自分で選んで俺についてくること決めたんだ。無理矢理ではないさ。」
レイは二人に向けてそう言った。
「嘘だ!あの子は助けてって言ってた!」
「その後、少し話をして、そのまま帰るか俺に雇われるかを決めさせただけだ。選択は与えたぞ?」
「戯言を!」
アレンはもはや冷静な状態ではなかった。アレンは土魔法を発動させ、レイの足元を隆起させ、その隙を狙って攻撃する。
「いったん寝てろ。」
レイは隆起した地面の勢いを流し、その力を利用し、アレンに急接近する。そして、その勢いのままアレンの腹に一撃を入れる。
魔法は一切使われていない。全て技術だ。
「がはっ!?」
アレンは地に伏せる。だが、まだ意識はあるようだ。
「く、くそ、このぉ…」
アレンは再び起き上がろうとし、本気の魔法を目の前の男に向ける。
その瞬間、アレンに、文字通り冷や水がかけられる。
水魔法で空中にできた水球が自由落下でアレンの頭部にぶつけられた。
アレンはその魔法が、自分の幼馴染が行使したものだと分かった。
「え、クラリ…」
「もう、やめてください。こんなあなた、見たくありませんでした。」
クラリスは涙ながらに、しかし何かを決意したような目をしていた。
アレンは立ち上がれなかった。目の前の少女が魔力切れで倒れようとしても。そして、その体を憎むべき男が受け止めたとしても、声一つ、発することができなかった。
「アレン、これが答えだ。」
レイはそう言い、クラリスを抱き上げ、村に向かう。
「ま、待て、やめてくれ。クラリスは、俺の…」
レイは何かを言っているアレンを無視した。
ザワザワ、ガヤガヤ…
「だから、あの子がまだ帰ってきていないんだ!薬草採取をしているときに何かあったのかもしれん。みんな手分けして探しているが…」
「クラリス~!どこだ~!返事してくれぇ。」
近づいてみると、村はずいぶんと騒がしくなっているようだ。それも、クラリスを探してのことのようだ。
「あ!クラリスおねえちゃんいた!」
幼い少女がレイの方を指さし、そう言った。
「え!?」
「どこだどこだ!?」
それを聞いた数人がこちらにやってくる。
「失礼ですが、あなたは、どちら様ですかな?」
「そ、村長…」
どうやら村長らしい、中年の男性が尋ねてきた。
「俺はレイ。Sランク冒険者だ。依頼中、魔物に襲われていたこの娘を見かけたのでな。…それより、村長よ。話がしたい。人目のつかないところに案内してくれ。」
「え、Sランク…わ、わかりました。では、私の家にご案内します。」
村長はこの村で一番立派な建物に向けて歩き出す。
「レイ様、クラリスを助けてくださって、ありがとうございます。」
ここは村長の家。レイと村長は対面に座り、クラリスは横に寝かせてある。
村長はレイが座った瞬間、頭を下げ、レイに感謝を伝えた。
「ああ、それはもう分かった。…改めて自己紹介しよう。俺はSランク冒険者ではあるが、それは裏の顔だ。俺の本名はレイ・アドバンス。アドバンス公爵家現当主だ。」
「っ!?…こ、公爵様とは知らず、数々の無礼を、どうかお許しください。」
さすがは村長といったところか。普通の人間では固まっているだろう。
「そ、それで、なぜ公爵様がこのような村に?」
村長はある可能性が頭によぎったが、それを振り払おうと必死であった。
「…クラリスの体質についてだ。」
レイはそう言った。
「!!」
「もう既にほとんどの貴族の知るところとなっている。そのうち手を出してくるだろう。」
「そ、そんな…」
村長は親のいないクラリスを実の娘のように育て、愛してきた。その上でこの事実を知らされるのは酷だろう。
「…それと、前当主からの指示だ。後日、俺はクラリスを妾として迎える。」
「っ!?」
村長は自分の耳を疑った。まさか公爵家までクラリスを狙っているとは思ってもいなかったのだ。
「クラリスの身の安全は保障しよう。もちろん、村にもそれなりの報酬を用意しよう。…どうだ?」
「…」
公爵家の当主からの指示だ。断れるはずもない。それでも、村長の中には確かな葛藤があった。
「…はい。どうか、クラリスをお願いします。」
村長が何とか絞り出した言葉。最後までクラリスのことを思い続けたのだろうことが分かる。
「ああ、わかっている。だが、『後日』と言っただろう?正式に迎えに来るのはまだ先だ。」
「っ、はい。そうでした。申し訳ありません。」
村長は自分があまりにも必死だったことを知り、自分に落ち着くよう努めた。
「村長には頼みごとがある。」
レイは話を進める。
「はっ、何なりと。」
村長はもちろん、こう言うしかないのだ。
「俺がクラリスを迎えに来るまでの間、他の男を近づけさせるな。妙な虫がつかぬよう対処しておけ。」
「っ!!…はい、わかりました。」
村長は一瞬、アレンの顔を思い浮かべ、頭の中で彼に謝罪した。
「よし、これはその依頼料だ。成功すればこの倍をさらに追加しよう。」
レイは金貨の袋をとこからともなく取り出す。無属性魔法『ストレージ』だ。
「な!?こ、こんなにも、よろしいので?」
「ああ。だが、失敗は許さん。」
レイは軽く圧をかける。
「は、はい!」
「よし、それではもう行く。俺は忙しい身なのでな。」
レイはそう言い残し、村長の家から、村から立ち去った。
村長の家には、緊張が解けへたりこんだ村長と、耳まで真っ赤にしてパニックになっているクラリスの姿があった。
アレンは正義感の強い男である。見知らぬ人間を急に攻撃するような人間ではないはずだ。
「お前!クラリスから手を放せ!この悪党が!」
アレンはレイを睨みつける。
「…」
「アレン、やめて!」
クラリスはレイの前に出て、守るように立つ。
「クラリス!?なんでそんな奴を庇うんだ!そいつは悪党だ!俺はそいつが女の子を攫っていったのを見たんだぞ!?」
アレンは決して間違いではないことを言った。
「え?…それは、レイさん、本当なんですか?」
クラリスは後ろにいるレイの方を振り返る。
「む、攫った…といえば、攫ったことになる、のか?まあ、彼女は自分で選んで俺についてくること決めたんだ。無理矢理ではないさ。」
レイは二人に向けてそう言った。
「嘘だ!あの子は助けてって言ってた!」
「その後、少し話をして、そのまま帰るか俺に雇われるかを決めさせただけだ。選択は与えたぞ?」
「戯言を!」
アレンはもはや冷静な状態ではなかった。アレンは土魔法を発動させ、レイの足元を隆起させ、その隙を狙って攻撃する。
「いったん寝てろ。」
レイは隆起した地面の勢いを流し、その力を利用し、アレンに急接近する。そして、その勢いのままアレンの腹に一撃を入れる。
魔法は一切使われていない。全て技術だ。
「がはっ!?」
アレンは地に伏せる。だが、まだ意識はあるようだ。
「く、くそ、このぉ…」
アレンは再び起き上がろうとし、本気の魔法を目の前の男に向ける。
その瞬間、アレンに、文字通り冷や水がかけられる。
水魔法で空中にできた水球が自由落下でアレンの頭部にぶつけられた。
アレンはその魔法が、自分の幼馴染が行使したものだと分かった。
「え、クラリ…」
「もう、やめてください。こんなあなた、見たくありませんでした。」
クラリスは涙ながらに、しかし何かを決意したような目をしていた。
アレンは立ち上がれなかった。目の前の少女が魔力切れで倒れようとしても。そして、その体を憎むべき男が受け止めたとしても、声一つ、発することができなかった。
「アレン、これが答えだ。」
レイはそう言い、クラリスを抱き上げ、村に向かう。
「ま、待て、やめてくれ。クラリスは、俺の…」
レイは何かを言っているアレンを無視した。
ザワザワ、ガヤガヤ…
「だから、あの子がまだ帰ってきていないんだ!薬草採取をしているときに何かあったのかもしれん。みんな手分けして探しているが…」
「クラリス~!どこだ~!返事してくれぇ。」
近づいてみると、村はずいぶんと騒がしくなっているようだ。それも、クラリスを探してのことのようだ。
「あ!クラリスおねえちゃんいた!」
幼い少女がレイの方を指さし、そう言った。
「え!?」
「どこだどこだ!?」
それを聞いた数人がこちらにやってくる。
「失礼ですが、あなたは、どちら様ですかな?」
「そ、村長…」
どうやら村長らしい、中年の男性が尋ねてきた。
「俺はレイ。Sランク冒険者だ。依頼中、魔物に襲われていたこの娘を見かけたのでな。…それより、村長よ。話がしたい。人目のつかないところに案内してくれ。」
「え、Sランク…わ、わかりました。では、私の家にご案内します。」
村長はこの村で一番立派な建物に向けて歩き出す。
「レイ様、クラリスを助けてくださって、ありがとうございます。」
ここは村長の家。レイと村長は対面に座り、クラリスは横に寝かせてある。
村長はレイが座った瞬間、頭を下げ、レイに感謝を伝えた。
「ああ、それはもう分かった。…改めて自己紹介しよう。俺はSランク冒険者ではあるが、それは裏の顔だ。俺の本名はレイ・アドバンス。アドバンス公爵家現当主だ。」
「っ!?…こ、公爵様とは知らず、数々の無礼を、どうかお許しください。」
さすがは村長といったところか。普通の人間では固まっているだろう。
「そ、それで、なぜ公爵様がこのような村に?」
村長はある可能性が頭によぎったが、それを振り払おうと必死であった。
「…クラリスの体質についてだ。」
レイはそう言った。
「!!」
「もう既にほとんどの貴族の知るところとなっている。そのうち手を出してくるだろう。」
「そ、そんな…」
村長は親のいないクラリスを実の娘のように育て、愛してきた。その上でこの事実を知らされるのは酷だろう。
「…それと、前当主からの指示だ。後日、俺はクラリスを妾として迎える。」
「っ!?」
村長は自分の耳を疑った。まさか公爵家までクラリスを狙っているとは思ってもいなかったのだ。
「クラリスの身の安全は保障しよう。もちろん、村にもそれなりの報酬を用意しよう。…どうだ?」
「…」
公爵家の当主からの指示だ。断れるはずもない。それでも、村長の中には確かな葛藤があった。
「…はい。どうか、クラリスをお願いします。」
村長が何とか絞り出した言葉。最後までクラリスのことを思い続けたのだろうことが分かる。
「ああ、わかっている。だが、『後日』と言っただろう?正式に迎えに来るのはまだ先だ。」
「っ、はい。そうでした。申し訳ありません。」
村長は自分があまりにも必死だったことを知り、自分に落ち着くよう努めた。
「村長には頼みごとがある。」
レイは話を進める。
「はっ、何なりと。」
村長はもちろん、こう言うしかないのだ。
「俺がクラリスを迎えに来るまでの間、他の男を近づけさせるな。妙な虫がつかぬよう対処しておけ。」
「っ!!…はい、わかりました。」
村長は一瞬、アレンの顔を思い浮かべ、頭の中で彼に謝罪した。
「よし、これはその依頼料だ。成功すればこの倍をさらに追加しよう。」
レイは金貨の袋をとこからともなく取り出す。無属性魔法『ストレージ』だ。
「な!?こ、こんなにも、よろしいので?」
「ああ。だが、失敗は許さん。」
レイは軽く圧をかける。
「は、はい!」
「よし、それではもう行く。俺は忙しい身なのでな。」
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