自分らしく居られる場所を

親の目を盗んで

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二章

アレン視点

アレンは自分の両親以外に負けたことはなかった。魔法はクラリスの方が上手だったが、アレンは特に、剣術の才能があった。

しかし、アレンは負けた。しかもこちらは真剣で、向こうは素手なのにもかかわらず、だ。

アレンは悔しかった。あの少女が攫われるのを止められなかった。さらに、そんな奴がクラリスを狙っている。

アレンは目を覚ました後、あの男を探し回ったが、見つけることはできず、村に帰ることにした。クラリスのことで不安になったのもある。


もうすぐ村に着くというところでクラリスを見つけた。アレンは杞憂だったと思ったが、彼女の傍にあの男がいるのを見た。

彼女の肩にはあの憎い男の手が置かれている。

それを見たとき、アレンは完全に冷静さを失っていた。この男は、あの少女と同じようにクラリスも攫う気なのだと信じて疑わなかった。

アレンは考えるよりも先に、腰に差していた剣を振り下ろしていた。



…そこからはよく覚えていない。

だが気が付けば、クラリスが連れ去られていた。

「もう、やめてください。こんなあなた、見たくありませんでした。」

そう言い残して。

…息が荒くなる。動悸が激しくなる。

なんで、そんなことを言うんだ?なんで、そんな視線を俺に向けるんだ?

あいつが悪いのに、あいつが全ての元凶なのに!

薄れゆく意識の中で、アレンはレイに呪詛の念を送り続けていた。




時は夕刻。アレンは痛む体に顔をしかめつつも起き上がる。

…そうか。クラリスはあいつに騙されているんだ。

アレンにとってクラリスの行動はおかしかった。時間とともに少し落ち着いた彼は、そういうことだと決めつけた。

「待っていてくれ、すぐに助けるからな。」

アレンはこのことを村のみんなに伝えようと村に向かった。




「はあ。村長に合わせる顔なんて…」

村に着いたアレンは、村の門の前で立ち尽くしていた。

「あ!アレンおにーちゃん!今まで何してたの?クラリスのおねーちゃんが大変だったのに!」

アレンの元に一人の少女がやってきた。

「え?なんで、そのことを…」

少女はそんなアレンの疑問を無視し、続けて話す。

「おねーちゃんは薬草を採っているときに魔物に連れ去られたんだって。」

「は?…どういうことだ?」

アレンが知っているのは、あの男がレイを連れ去ったということだ。

(…まさか、あの男は魔物が化けた姿なのか?)

アレンは見当違いの推測をする。

「いや…どこだ?クラリスはどこに連れていかれたんだ?」

アレンは余計な考えを頭から振り払う。

「え?…今は村にいるよ?すっごくかっこいい人がね、おねーちゃんを助けてくれたの!…忙しいからって、もう帰っちゃったけど。」

少女は頬を染め、恋する乙女のような顔をしていた。

「何!?そうなのか…ありがとう。」

アレンはそう言うと、村長の家に走る。

「村長!クラリスは、クラリスはいるのか!?村長!」

アレンは村長の家の扉を叩きながら叫ぶ。

間もないうちに扉が開き、村長が姿を現した。

「なんだ、アレン。どうかしたのか?」

村長はアレンに尋ねる。

「クラリスは、いるのか!?」

アレンは村長に詰め寄る。

「ああ。…だが、その、クラリスは今、寝込んでいてなぁ。…あんなことがあったばかりだ。今はそっとしてやってくれ。」

村長はそう言い、扉を閉めた。

アレンは安堵した。クラリスは連れ去られてはいなかった。今はそのことで頭がいっぱいになり、村長の不審な態度にも気が付かなかった。



翌日、アレンは再び村長の家を訪れた。

「クラリスは今、出かけている。」

そう言われ、門前払いされた。普段は家に上がれと言われるが、そんなことも言われなかった。アレンは何か、違和感を覚えた。


「体調がすぐれないらしい。」

「今は忙しい。」

「今は人に会いたくないそうだ。」

「…」

……

アレンはここ数日、一日に何度も村長の家を訪ねた。だが、どれも門前払いだ。

さすがのアレンもおかしいと思う。その違和感を確かめるため、アレンはある決意をした。


今は深夜である。

アレンは魔法を使い、迷彩で隠れ、音が出ないようにする。そして村長の家の窓からクラリスの部屋を覗く。

そこにはクラリスがいた。…しかし、様子が変だ。

クラリスが息も絶え絶えになりながら、腕を前に出す。しばらくしてから、コップ一杯分の水球が現れる。同時に、クラリスは顔を青くして、ベッドに倒れこんだ。

…魔法だ。クラリスが行使している。

(あんなに無理して…!止めさせないと!)

アレンは窓からクラリスの部屋に入る。
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