自分らしく居られる場所を

親の目を盗んで

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二章

公爵家でのレイ

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「ほう、この短時間でここまでの実力をつけるとは。」

レイはサーシャの短剣を受け流しながらそんな感嘆の声を出す。

「エルロンドに、散々、鍛えられたからね!嫌でも強くならないと死ぬかと思うほどきつかったし…」

サーシャは、レイの急所に短剣を振るい続けながらぼやく。

ここは訓練場。レイはサーシャの実力を確かめるために模擬戦をしている。

そこに、乱入者が現れる。

「レイ・アドバンス!ここにいるのですか!?」

レイの婚約者である、セシル・フォン・グランドポートだ。

「どうした、セシル?」

レイは手を止めてセシルの方を向いた。

「どうしたではありませんわ!私がこの屋敷に移り住むことになったことは聞いているでしょう?」

どうやらセシルはレイのことが気に食わないようだ。

…まあ、レイは成人式の時にセシルの話を聞かず、すぐに帰ってしまった。

さらに、その後はクラリスの一件があり、不在であった。

彼女からすれば約束をすっぽかされ、無視され続けた。これで仲が良くなるわけもなく…

これは完全にレイの自己責任である。…まあ、彼はセレスに全く興味がないようだが。

「ああ。知っているさ。だから使用人達に迎えるよう指示した。」

レイは淡々と語る。

「そうではありません!…なぜ、結婚相手であるあなたがそこにいないのですか!?」

公爵のレイより、第一王女のセシルの身分の方が上だ。

そのため、レイがした行動はセシルに対しての侮辱である。

「見ればわかるでしょう?訓練していただけですよ。」

レイはそう言い、手に持っている剣をサーシャに向ける。同時に、サーシャも両手の短剣を構える。

「待ちなさい!」

セシルが二人の間に入り、腰に下げていた剣をレイに向ける。

「そんなに訓練がしたいのであれば、私が相手しますよ?」

「…また屈辱を味わうことになるぞ?」

レイのその言葉でセシルはレイに初めて会った時のことを思い出す。

レイとセシルは幼少期の頃、剣、魔法ありの決闘をしたことがある。そのときの結果はレイの圧勝であった。

…だが、セシルは折れず、今では『剣姫』と皆に認められているほどの実力をつけた。

レイに負けたあの日からセシルは、騎士団長に訓練をつけてもらい、辛く厳しい訓練を一日たりとも欠かさなかった。

そのため、今の彼女には自信があった。

「今度はあなたがその屈辱を味わうことになるのよ。」

セシルは『レイ・アドバンスが更生した』という噂を全く信じていなかった。

…それはその通りである。レイは他のことに目を向けていただけであり、その傲慢な性格は変わっていない。

しかし、彼女はレイが努力を始めたということは知らない。

そのため、彼女は、レイの訓練というのはセシルを避けるための口実であり、普段から訓練などしていないと結論付けた。

…だがそれでも油断すれば負けるだろうと思っていた。

レイが天才だと認めていたからだ。
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