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二章
絶望的な『差』
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「これは正式な決闘。…私が勝てば、私とあなたの離婚に同意しなさい。あなたが勝てば…私のことを好きにしていただいて構いません。」
セシルはレイにそう告げる。
「ふむ。少々割に合わない気もするが…それは大人げないというものか。よかろう、その決闘受けてやる。」
レイにとって、この決闘を受ける意味はなかった。セシルの体など、全く興味がなかったのだ。だが、決闘を挑まれた以上、断る理由もなかった。
セシルはレイの一言に少し苛立ちを感じたが、それよりも拒否されなかったことに安堵した。
「ルールは決まったな?なら始めるぞ?」
エルロンドは手に持ったコインを空高く投げる。
セシルは腰に差した剣を抜き、構える。一方、レイは鞘に剣を収め、自分の後ろの方に投げ捨てる。
「!?」
セシルはレイのその行動を理解できなかった。
「そう警戒するな。お前なんぞに大層な武器はいらん。それだけだ。」
セシルは今すぐ目の前の男の喉を手に持っている剣で突き刺したい衝動に駆られたが、それでは相手の思うつぼだ。セシルは呼吸を整える。そして…
コインが地面に落ちる。
瞬間、セシルはレイの目の前にまで接近し、剣の突きを繰り出す。その速さはエルロンドを優に超えていた。
レイは右足を少し後ろに下げていた。その動きは決して速くはなかった。
しかし、それだけでセシルの攻撃は空を切る。
セシルは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに次の攻撃へと移った。第二、第三、第四・・・と。
セシルからすればレイの動きは自分より遅かった。だが、レイが少し足を動かし、半身をずらすだけで、どの攻撃も紙一重で躱される。
(ッ違う。必要最小限の動きで避けている!?…なら!)
セシルは攻撃を続けながら、レイの周囲に炎の槍を生成…消滅する。
「な!?」
想定外のことが起こったことにより、セシルに大きな隙ができた。レイにとってはいつでも隙だらけだったのだが、セシルより遅い動きしかしないように自分を縛っていたため、こんなことをしていたのだ。
所謂、舐めプである。
とにかく、レイはその隙を見逃さなかった。レイにとってはゆっくり、セシルの鳩尾に掌底を繰り出した。
ズドンッ!
…およそただの掌底とは思えない音が訓練場に響き渡る。
「ッ!?…が、かっ…!?げほっ…く、あ…ぁ……」
セシルはそのあまりの激痛と呼吸ができないこと、窒息への恐怖で気を失った。
白目を剥き、自分の涙、鼻水、吐しゃ物に顔を突っ込み、下半身は糞尿でまみれている。
…それに、肺がつぶれて呼吸ができないようだ。このままでは死んでしまうだろう。
「まさかこの程度だとはな。『剣姫』さんよ?」
レイは光属性魔法でセシルの体を治療した。さすがに結婚相手の王女を殺すのは下策だろう。
レイは思った。セシルは訓練を十分に受けている。だが、殺し合いの、そして実戦の経験は乏しいのだ、と。
「やはり所詮、箱入り娘だったということか。」
レイは無茶を許されない、セシルの環境に少し同情した。
だがそれも一瞬のこと。レイはすぐにサーシャの方に振り向き、剣を向ける。
エルロンドは、激しい剣劇の音を背に、倒れているセシルを担ぎ上げ、医務室に運んで行った。
セシルはレイにそう告げる。
「ふむ。少々割に合わない気もするが…それは大人げないというものか。よかろう、その決闘受けてやる。」
レイにとって、この決闘を受ける意味はなかった。セシルの体など、全く興味がなかったのだ。だが、決闘を挑まれた以上、断る理由もなかった。
セシルはレイの一言に少し苛立ちを感じたが、それよりも拒否されなかったことに安堵した。
「ルールは決まったな?なら始めるぞ?」
エルロンドは手に持ったコインを空高く投げる。
セシルは腰に差した剣を抜き、構える。一方、レイは鞘に剣を収め、自分の後ろの方に投げ捨てる。
「!?」
セシルはレイのその行動を理解できなかった。
「そう警戒するな。お前なんぞに大層な武器はいらん。それだけだ。」
セシルは今すぐ目の前の男の喉を手に持っている剣で突き刺したい衝動に駆られたが、それでは相手の思うつぼだ。セシルは呼吸を整える。そして…
コインが地面に落ちる。
瞬間、セシルはレイの目の前にまで接近し、剣の突きを繰り出す。その速さはエルロンドを優に超えていた。
レイは右足を少し後ろに下げていた。その動きは決して速くはなかった。
しかし、それだけでセシルの攻撃は空を切る。
セシルは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに次の攻撃へと移った。第二、第三、第四・・・と。
セシルからすればレイの動きは自分より遅かった。だが、レイが少し足を動かし、半身をずらすだけで、どの攻撃も紙一重で躱される。
(ッ違う。必要最小限の動きで避けている!?…なら!)
セシルは攻撃を続けながら、レイの周囲に炎の槍を生成…消滅する。
「な!?」
想定外のことが起こったことにより、セシルに大きな隙ができた。レイにとってはいつでも隙だらけだったのだが、セシルより遅い動きしかしないように自分を縛っていたため、こんなことをしていたのだ。
所謂、舐めプである。
とにかく、レイはその隙を見逃さなかった。レイにとってはゆっくり、セシルの鳩尾に掌底を繰り出した。
ズドンッ!
…およそただの掌底とは思えない音が訓練場に響き渡る。
「ッ!?…が、かっ…!?げほっ…く、あ…ぁ……」
セシルはそのあまりの激痛と呼吸ができないこと、窒息への恐怖で気を失った。
白目を剥き、自分の涙、鼻水、吐しゃ物に顔を突っ込み、下半身は糞尿でまみれている。
…それに、肺がつぶれて呼吸ができないようだ。このままでは死んでしまうだろう。
「まさかこの程度だとはな。『剣姫』さんよ?」
レイは光属性魔法でセシルの体を治療した。さすがに結婚相手の王女を殺すのは下策だろう。
レイは思った。セシルは訓練を十分に受けている。だが、殺し合いの、そして実戦の経験は乏しいのだ、と。
「やはり所詮、箱入り娘だったということか。」
レイは無茶を許されない、セシルの環境に少し同情した。
だがそれも一瞬のこと。レイはすぐにサーシャの方に振り向き、剣を向ける。
エルロンドは、激しい剣劇の音を背に、倒れているセシルを担ぎ上げ、医務室に運んで行った。
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