欺瞞の勇者~全てを騙して幸せに~

親の目を盗んで

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四章

その頃、グランドポート王国では…

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コウキがエルフの森に転移する少し前、グランドポート王国の王城では騒ぎが起きていた。

なんでも、落ちこぼれの勇者がこの国の守護者を無理やり襲ったらしい。

この噂は瞬く間に王都中に広まった。


時はさかのぼり、コウキが細工をし終え、フィノの神域に転移した時、コウキの、ヤスヒロを縛っていた魔法が解けた。

「うっ!あ、体が動く。声も、出る。魔法が解けたのか…」

ヤスヒロは先程までの光景を思い出す。

「ああ!あいつ!殺してやる!よくも、よくもあんな事を!あいつは人間の皮を被った悪魔だ!」

「うぅ、ん?」

スミレが起きたらしい。

「あ、スミレさん!大丈夫?あいつよくもあんなことを…」

寝ぼけているのか、スミレはボーッとヤスヒロを見て、

「い、嫌ああああああ!」

枕を投げ、コップを投げ、シーツを体に巻き付けるようにして怯えるようにして震える。


「す、スミレ?」

ヤスヒロは、訳が分からず、スミレににじり寄る。そこで気が付いた。自分が裸だと。でもそれだけじゃない。恥ずかしがっているというより、恐れているのだと気づいた。それも、自分の事を。


「ヒッ!来ないで!『障壁』!っえ?まだ、まだ魔法が使えないの?そんな…」

「スミレ?」

「いや!もういや!誰か!誰か助けて!もう痛いのは嫌なの!だれか!」

スミレが叫ぶ。

廊下から足音が聞こえ、医務室の扉が開き、女医と数人の騎士が入ってきた。

「どうかなさいましたかスミレさ、ま…こ、これは!ヤスヒロ殿!あなた、一体何をしたんですか!?」

そこで彼らは見た。コップなどの小物が散乱し、ベッドの隅でシーツを体に巻いて震えて泣き喚いているスミレ。そしてスミレににじり寄りうとしている全裸のヤスヒロ。

両者の間には破瓜の血液がベッドに染み込んでいる。

「ヤスヒロ殿を…いや、逆賊ヤスヒロを捕らえよ!」

彼らの行動は迅速だった… そう、不自然なほどに。


「ま、待って!違うんだ!ちょっ、放して!」

魔力の無いヤスヒロは簡単に騎士たちに捕らえられ、逆賊として投獄された。





それから、スミレとヤスヒロに事情聴取が行われた。
スミレには壊れ物を扱うように丁寧に、第四王女のサティが雑談を、主にコウキのことについて話し、気を紛らわさせた。

ヤスヒロには尋問、拷問といった方法が取られた。拷問になったのは、ヤマトがこのことを聞きつけたからであり、ヤスヒロが死んでいないのは、事前にコウキに『殺すな』と言われているからだ。そうでなければとっくに殺しているはずである。

医務室は閉鎖され、徹底的に調べ上げられた。そしていくつかの証拠になるものが出てきた。

一つ。
散乱していたコップの中の水を調べた結果、破魔の薬品が入っていることが判明した。

破魔の薬品とは、水に溶かすと、魔力と中和する働きを持つ物の総称である。
これを魔力を持った者が体内に取り込むと、体内の魔力生成器官が機能不全になる。
スミレはそれを飲んでしまい、保有魔力が無くなってしまった。
魔法が使えなかったのはそのせいだろう。

二つ。
魔力切れの充填式、防音の魔道具が発見された。

昨晩、スミレが叫んでも周囲の者に聞こえなかったのはその為だ。そう判断された。



ヤスヒロはこれらの身に覚えがないことを聞かされ、混乱した。そして言った。全てはコウキが仕組んだことだと。スミレを犯したのはコウキだと。そう言った。そう、それが事実だからだ。

しかし、コウキは昨日の朝、迷宮の調査に向かったと皆が口々に言う。

ヤスヒロはさらに混乱した。それもそうだ。ヤスヒロはコウキの『チート』を知らないのだから。

そして決定的だったのは、他でもないスミレが、自分を襲ったのはヤスヒロだと証言した。その時に魔法が使えなかったことも、破瓜の痛みで泣き叫んでも、だれも来てくれなかったことも。

ヤスヒロは否定した。みっともなく。

それを聞いたヤマトは全力の炎球をヤスヒロに放った。

しかし、それはカエデに遮られ、

「こいつを殺すのは、コウキが来てから。コウキが来れば、はっきりする。どっちが嘘か。」

スミレのこれらの記憶は『チート』により騙されている。だが、誰も知りようがない。

ここで国王ユーリスは、

「そうだな。『ジャッジ』持ちであるコウキが来るのを待とう。もし有罪なら、処刑する。」

それを聞いたヤスヒロは耳を疑った。自分は何もしていないのに、なぜ、と。

「違います!冤罪です!僕は…」

そのとき、一人の騎士が駆け込んできて、

「報告します!光の勇者、コウキ様が迷宮調査より、帰還なされました!」
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