君の『色』は…

親の目を盗んで

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序章

これまでの人生

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僕は人間が嫌いだ。

僕は人間を信じることができないからだ。

だって、信じた人に何度も裏切られてしまったから。










その時僕は、まだ六歳だった。父親の会社が潰れたのだ。

そして帰ってきた父親にはもう以前の様な優しさは無く、酒に溺れ、僕と母親に暴力をふるい続けた。

母は僕を連れて父から逃げた。

そして身を粉にして働いて、僕の為に生活費を稼いでくれた。

僕は、母からの愛情を感じた。だから僕も、母をできるだけ手伝い、その体を労わった。貧しいけれど、幸せだった。まだ、満たされていたのだ。



だが、そんな日々も長くは続かなかった。

父が追いかけてきたのだ。再就職先の通知を引っ提げて。

父は母に何かを囁く。そのとき何を言われたのかは分からない。でも、碌なことではないだろう。

その時から僕は、両親から虐待された。

もう、母からは愛情を感じられなかった。なんで?その時は分からなかった。

分かったことは、母が笑いながら僕に暴行を加えていたこと。すでに説得など、無駄な状態にあるという事。そして…僕の右目が、母の本性を映してしまったということ。

その時僕の右目に映った、赤黒い『ナニカ』は、今でも夢に出るくらい、恐ろしかった。



その日、小学校の体育の授業は水泳だった。

僕はもちろん見学だ。

でも、別にいじめのつもりではなかったのだろう、一人の同級生が軽い気持ちで僕に水をかけてきた。その時の目は、楽しげで、愉快なものを見る目だった。

…あの時の、母と同じ目だ。

僕は過呼吸に陥り、パニックになり、次に目が覚めた時は病院だった。

話を聞く限り、僕はプールに落ちたらしい。

そして、当たり前だが、体を見られた。僕の体は全身、傷やアザで覆われている。

虐待によるものだと気付いたのだろう、警察官がいたのが見えた。

そして、先生から聞かれる。なぜ黙っていたのか、と。

僕は答えた。本音で。

もしかしたら、いつか昔の両親に戻るのではないか。ずっと、そう思い込ませていた。

でも、どこかでは、分かっていた。そんなことなど、ありはしないと。

そして、助けを求めた。もう、痛いのも、苦しいのも、あんな両親を見るのも、嫌だから。

そこからの動きは早かった。

両親は捕まり、僕は施設に入れられた。そこでの生活は僕にとって最高の環境だった。

ご飯も美味しかったし、ベッドもあった。お風呂にだって入れたし、施設の人達は、優しかった。でも、ほとんどの人は僕を愛してはくれなかった。

なぜか、分かってしまう。僕の右目に映ってしまうのだ。他人の感情が、色として。

でも、僕の事を本当に、心の底から愛してくれた人がいた。

彼女は新任の人らしいが、僕はその人に懐いてしまった。いつもは施設でも学校でも、他人を恐れて塞ぎ込み、笑うことのなかった子供が笑い、彼女に寄りかかっている。

その光景を誰かが見たのだろう、彼女は施設で僕の世話をしてくれるようになった。

幸せだった。

…でも、それは僕だけだった。

彼女の僕への愛情は、日に日に小さくなり、しまいには赤黒く、変色してしまった。彼女の僕への態度は何も変わってなんかいないけど、彼女は確かに僕を嫌悪している。

僕は潰れそうだった。心も、体も。

僕は逃げた。人間から、彼女から、現実から。

僕はひたすらに知識を頭に詰め込んだ。考えないように、考えられないように…

でも、僕の頭の回転は速く、同時に様々なことを考えることすらできてしまった。

僕は気が狂いそう、いや、もう狂っていたのだろう。

もうこんな思いはしたくない。もう、『僕』は、人と関わりたくない。

でも、生きていくためには人と関わらなければならない。

だったら、『俺』が人と話そう。『僕』はそれを眺めるだけでいい。だれも『僕』に感情を向けない。『僕』は誰とも関わらない。

そうすれば、この苦しみから解放される。この右目を、上手く使うことだってできる。



だから『僕』は人を信じない。それは『俺』がやればいいのだから。
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