崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

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第三話 誇りとプライドを胸に

ナガレの思い

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「……やったな、ナガレ」
 ジョーはナガレがいる方に振り向く。しかしそこにはおらず、視線を戻せばちょうど、事切れたガラガラマムシの東部付近に跪いているところだった。
 耳を澄ますと、ナガレは何か喋っている。
「……ごめんな、こんなことになっちまって。お前の分まで、精一杯生きていくよ」
「……?」
 何やらガラガラマムシに、弔いの言葉をかけているようだ。気になって見ているジョーと目があったナガレ。立ち上がって、照れくさそうに頭を書いた。
「いやぁ……確かにこいつは町を襲ったモンスターなんだけど、なんか罵倒すんのも違うかなーって思って。敵ではあったんだけど、別に悪巧みしてこの町を潰そうって訳じゃないだろうし……なら、命を奪ったことに変わりないかなーって思ってさ……あれ?」
 突然ガラガラマムシの切断された首から、何やら白い光が飛び出した。それは球体のようで、しばらく周囲をふよふよ飛んでいたが、すぐ天に登ってしまう。
「なんだったんだ、アレ……? ジョー見てた?」
 そう振り返ると……ジョーは力無く俯いていた。彼が着ているボディアーマーは、身軽な分防御力が薄い。回復もせずに立ち回っていたため、疲労も相まってナガレと同じくらいボロボロだった。
「うおぉっ⁉︎ だ、大丈夫かぁっ!」
「フッ、だ、大丈夫だ。…………ぐっ」
 クールに笑ったジョーだが……突然足元がふらついた。
 ドサァッ!
 ナガレの目の前で、急に仰向けでバッタリ倒れてしまう。 
「えっ⁉︎ ど、どうした……って! お、オレも力が……」
 駆け寄ろうとしたナガレも急に力が抜けて、同じように倒れてしまった。
 あれだけの激戦を潜り抜け、ついに体力が限界になってしまった……仕方のないことである。特にナガレはボロボロの状態だったのだし、むしろ今までよく耐えていた方だ。
「はぁっ、はぁっ……」
「ぜーっ、はーっ……」 
 気合いだけでどうにかなる状況ではない。二人とも息を切らせていた。

「わーいナガレ君! やったーーっ!」
「やべっ、倒れたぞ! 行かねえと!」
 崖上では、アリッサとルックが喜び勇んで道を引き返していったところだ。結局最後までいたマディソンも、レンに一瞥してから坂を下っていく。
「では私も。タネツさんとヒズマさんを早く治療してあげねば。生きているといいのですが……」

「……なあ、ナガレ」
 そして寝そべった二人は、そのまま空を見上げていた。雲がどんどん流れ、青空が広がり始めている。
「……なんだよ?」
「……時間を稼いでくれて、助かった。あの時俺は隠密に徹して、ヤツの意識から外れようとしていたんだ。……すまん。はっきり言って、お前のことを囮にしていた」
「いいってことよ。結果オーライだ」
 さも当然のように許すナガレ。囮にされた者の言葉ではない。
「……ヒズマさんたち、まだ生きてるよな。大丈夫だよな……いや、大丈夫かな……」
「……あの冒険者たちのことか。心配するな、疲れ果てて気絶しているだけだ。怪我もそう深くはない。お前よりはな」
「そうか……」
 しばらく二人で黙って青空を見上げる。
「……なあジョー、オレからもいい?」
「……なんだ?」
「来てくれて、ありがとな。約束守ってくれて、オレ、すげー嬉しかったぞ」
「……お前が俺を信じたからだ」
「へ?」
 ジョーの声が少し小さくなった。
「お前は俺を、ほんの少しの間でも、必要としてくれた。損得勘定抜きで『俺と話したいから』ということだけで、俺と硬い約束を交わした。……ましてやその約束のために、こうも命まで張るとはな」
 そう言って、とても小さな声で呟く。
「嬉しかったぞ、とても」
「……ごめん、なんつった?」
「……バカなヤツだ、と言ったんだ。……全く、俺が来なければどうするつもりだったんだ、バカめ……」
「……へっ、うるせーよ。ジョーだって遅かったじゃんか! もっと早く来てくれりゃあ、こんな惨状にはならなかったのに!」
 文句を言おうとしたナガレだが、なんだか途中で突然笑いが込み上げる。
「……くくく……」
「……ふっ、ふふふ……」
 何が面白いのか分からないのに、心が通じ合い、二人同時に笑い出した。
「ききっ……くくくくくっ!」
「ふふ……はははははっ!」
 そうして二人仲良く気絶するまで、気の抜けた笑いを続けたのだった……。

~☆~☆~☆~☆~☆~

 一方残されたレンとアルクルは、顔を見合わせてニコリと笑った。
「さ、俺たちはどうします?」
「そうじゃな。私らは避難した街の皆様を呼び戻していくか。アルクル、ついて参れ」
「へいへい、りょーかいっと」
 二人並んで、静かな丘を歩く。
「……のう、アルクルや」
「なんです? マスター」
 普段なら「あ、お手洗いですか?」などと抜かしていただろうアルクル。しかし今日は冗談など飛ばす気配はない。優しい声でレンに応じた。
「ナガレ君に目覚めたスキル、気付いたかの?」
「……ええ、オレにもよく分かりましたよ。アリちゃんとかは気づかなかったようですが」
 アルクルの言葉を聞き、どこか遠い目をするレン。
「これは奇跡なんじゃろうか? ……私たちエルフは、奇跡を信じぬのじゃ。因果応報……物事には全て原因がある。だから神がどうとか宗教がどうとかも、あまり信じる気が起こらんでのう……って、それは関係ないか」
 とぼけた様子のレンだが、アルクルはそれに反応してくれる。なぜか今の二人は、まるで別人のように仲が良く見える。
「いや、そりゃあきっと正しいッスよ。俺の考察にすぎないですけど」
「む? どういうことじゃ」
「ナガレ君の覚醒は、偶然でも奇跡でもない、必然だと思いますぜ。……タレントスキルじゃない、後天性のスキルが目覚めるにゃ、並大抵のことじゃダメだ。それはアンタも知っての通りっすよ」
「……続けてたもれ」
「俺が思うに、それが起きた理由なんすけと……。まず、タネツさんやヒズマさん、そしてジョーとのつながり……言わば『絆』かねぇ。そんでもう一つ、ナガレ君の今までやってきた『努力』か。そんで最後に、絶対に勝つ、絶対に生きて帰ると言う強い『意志』この三つのどれかッスかね」
「そうか……絆だの努力だの意志だの、昔は分からんかったのに、今はよく分かる。私も人間かぶれになったのう」
「へへへっ、堅苦しいドライなエルフでいるよりそっちの方が良いッスよマスター」
 とぼけながら話す二人は、もはや親友のようだった。もしかすると普段の二人は自分を隠しているのかもしれない……?
「のうアルクル。一件が片付いたら、街に人を呼んでくれぬか」
「はいはい、どなたをお呼びしましょーかね?」 
「うむ。それはな……」
 そんなことを話しつつ、二人歩いて行った。
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