崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

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第六話 解散のギルド⁉︎

ジョーとマッシバー

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「マッシバー! いい加減にするのじゃ! 私だって今はギルドのマスター、その前でこのような狼藉を働くとは許されることでないぞっ!」
「ちっ……」
 イライラしたようにそっぽを向くマッシバー。特例のZランクであろうと、ギルドマスターには逆らえないようだ。するとアルクルがふと顔を上げた。
「マッシバー、アンタがすげーやつなのは知ってるけどよ、どうしてアンタ自身がおいでなすったんだ。書類は本物みたいだが、そういうのは伝令係が持ってくる仕事だぞ。まさかわざわざ笑いに来たっていうような、胸糞悪い理由じゃねえだろうな」
「ふん、そりゃ『ついで』だ。本当はこの町にいる知り合いを訪ねて来た」
 そしてマッシバーは突然入り口を振り返る。

「なあ……ジャック・ハルバードさんよ」
「え!?」
「な!?」
(なんだって……!?)
 アリッサ、ルック、ナガレもそちらを向く……入り口にはジョーがひっそりと立っていた。

「……マッシバー、何しに来た」
「つれないねえ、元仲間じゃねえか……お前がチームを脱退してから久しぶりだってのに、歓迎もしてくれねえのかぁ?」
 そう言いながら肩を組もうとするマッシバー。しかしジョーはその手をぴしゃりと跳ね除けた。
「俺はチームを抜けた身だ。もうお前とは仲間じゃない」
「……フン」

(え……ジョーがいたチームって、ラグナロクだったのか!? エリート中のエリートじゃないか……!)
 二人の会話を聞いてしまい、ナガレは絶句した。ラグナロクは少数精鋭で、数は少ないが全員がSランク冒険者で構成されている。ジョーがそのパーティにいたということは、その強さも頷ける。

「そんなことよりジャック、まさかこの町で冒険者をしてるんじゃねえだろうな……? お前はチームを抜ける時『冒険者をやめる』つってたよな。忘れたとは言わせねえぞ」
「……その名は捨てた。今の俺はジョー・アックスだ。それに今俺は冒険者ではない。この町に駐在している、おせっかいな旅人に過ぎない」
「ケッ、どうだかね」
 マッシバーは肩をすくめる。
「ま、お前が冒険者やってる証拠もねえし、今日は見逃してやるよ。……だがな」
 急に声が低くなった。ドスの効いた声の威圧感に、ルックとアリッサがビックリして後ずさる。
「ラグナロクから脱退するには、何らかのケジメをつけなきゃならねえ。日々困難なクエストをこなし、金・力・名声を手に入れる。時にはこの俺だろうと死にかけるような敵と戦い、かつ必要がある……それにはメンバー同士のつながりが一番重要だ」
 マッシバーはジョーの胸倉をつかみ、至近距離でにらみつける。恐ろしいまなざしで睨みつけられてもジョーは全く動じない。
「分かってるよな、ジャック……てめえにとって『冒険者をやめる』というのがケジメだった。お前ほど強え奴が絶好の稼ぎ場を失うってんなら、他の奴等にも示しがつくから脱退を許した。だが……この町で冒険者に復帰して、ザコ共の中でお山の大将する……それはおかしいよな? ラグナロクの中じゃ最弱だが、この町じゃ最強。そんな気持ちを味わいたくて抜けたってのか?」
「……違う。俺はジョー・アックスだ。その人間……ジャック・ハルバードは、姉さんと共に死んだ。俺はただの旅人だ……」
「……ケッ、そうかい」
 二人の間でバチバチと火花が散ったような気がする。しかし、マッシバーはすぐ視線をそらしてしまった。
「……ま、てめえがそういうなら信じよう。……ケジメの事、くれぐれも忘れるんじゃねえぞ」
 そう吐き捨て、踵を返し出口に向かっていく。
「書類は全部渡した。もうこの辛気臭いクソ田舎に用はねえ」
「……連れ戻しに来たんじゃないのか」
「はじめはそのつもりだった。だが、やっぱりやめた。……昔のてめえには『姉を助けたい』っていう堅え決意があった。てめえはそのためならどんな命令もこなしてたな。だが今のてめえから、あの頃みたいな鬼気迫る雰囲気が感じられねえ……落ちるところまで落ちたな、ジャック。やはり死んだようだ……そんじゃ、あばよ」
 マッシバーは今度こそ扉に手をかける。……ふとナガレの方を見た。
「おい、ザコ冒険者。ここが潰れたらラグナロクに来いや……。前の荷物持ちが逃げ遅れてモンスターに食われちまったから、今空席なんだよ。使いっ走りなら、いつでも歓迎するぜ」
「く……!」
 あまりの屈辱に、歯をギリギリと食いしばるナガレ。それを満足そうに眺めてから、マッシバーは今度こそ出て行った。
「ま、せいぜい頑張りな!」
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