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第六話 解散のギルド⁉︎
真夜中のタイガスギルド
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~☆~☆~☆~☆~☆~
ここはタイガスの街。時刻はすでに深夜一時を回っている真夜中だ。
荒野の大都会タイガスだろうと、流石に深夜は店じまいが始まっていた。街中でまだギラギラと明るいのは歓楽街だけである。
冒険者ギルドの人通りも少なく、気持ち程度のか弱い灯りしか無かった。行くアテの無い冒険者パーティが小銭で静かにギャンブルしたり、深夜勤務のギルド職員が書類仕事をしているだけである。
建物の最上階で、タイガス冒険者ギルドのマスターである片腕のオーク族クリフ・アルバミンテが、自室の椅子に座っていた。
「……これでよし、と」
数枚の書類をひとまとめにして、クリップで止める。
普段クリフは本ギルドでの収益・支出、総合の成績、ランクの昇格・降格などの最終チェックを行なっている。もちろんそれらは部下の職員がしっかりと行なっているのだが、最終的な確認は必ずギルドマスターが行わなくてはならない。手を抜けば様々なトラブルを招くため、マスターも結構忙しいのだ。……レンは田舎の弱小ギルドマスターなので、大した仕事はしていないのだが。
「マスター、何かお手伝いしましょうか」
制服姿の使用人が進み出たが、クリフは軽く手を上げてそれを制した。
「いいんだ。これは私個人のことだからね」
「はっ、失礼致しました」
優しく諭されて、使用人はビシッと敬礼した。
……使用人には、時々目の前の人物が本当に『破壊の剛腕』と呼ばれた最強の冒険者だったのか、疑問に感じることがある。とても冷静で、誰に対しても優しく振る舞うクリフ。
冒険者時代の面影は戦いによって奪われた左腕と、壁に飾られた巨大なバトルアックスのみだ。当時の伝説では、彼のパワーを体現するものばかりである。
十体を超えるスカルワイバーンの群れをたった一人で蹴散らしたとか、
体が強固な岩石で構成されたボルケーノゴーレムを粉砕して砂に変えたとか、
雪山の悪魔と呼ばれる巨大熊ハクリッパーベアーをボコボコにぶちのめし、その肉をバーベキューでギルドの冒険者全員に振る舞ったとか……。
ちなみに今挙げたモンスターは、全員揃って危険度S級。ナガレの実力を十とすれば、こいつらは五百くらいのヤバい連中である。
当時を知る者によれば、気に入らないことがあれば大声を上げて暴れたが、細かいことは気にしない豪快な性格に加えて、面倒見が良くみんなから慕われていたらしい。……何が彼をそこまで変えたのだろう? いやもしかすると、これが本来の性格なのだろうか?
そんなことを考えていた使用人は、ついクリフと目が合ってしまった。
「……どうかしたのかい?」
「あ、いえ……その、よろしければ何の書類なのか、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
かしこまった態度の使用人だが、やはり気になるようだ。……そんな風を装って誤魔化した。
「ああ、いいとも。……最近妙な動きを見せている、黒ローブの奴らを調べたんだ。市役所の資料庫から写しを貰ってきたり、要点をまとめたりしたのさ」
「黒ローブ……例の怪しいヤツらですね」
使用人は頷く。
最近タイガス冒険者ギルド内でも、黒ローブの目撃情報が増えてきているのだ。遠くから観察されたり、危害を与えてくるわけでもなく、ただ後をつけられたりなど、干渉が多くなってきている。流石に街の中で見られた報告は無いのでまだ安全だが、冒険者の中でも不安が広がっているようだ。
ここはタイガスの街。時刻はすでに深夜一時を回っている真夜中だ。
荒野の大都会タイガスだろうと、流石に深夜は店じまいが始まっていた。街中でまだギラギラと明るいのは歓楽街だけである。
冒険者ギルドの人通りも少なく、気持ち程度のか弱い灯りしか無かった。行くアテの無い冒険者パーティが小銭で静かにギャンブルしたり、深夜勤務のギルド職員が書類仕事をしているだけである。
建物の最上階で、タイガス冒険者ギルドのマスターである片腕のオーク族クリフ・アルバミンテが、自室の椅子に座っていた。
「……これでよし、と」
数枚の書類をひとまとめにして、クリップで止める。
普段クリフは本ギルドでの収益・支出、総合の成績、ランクの昇格・降格などの最終チェックを行なっている。もちろんそれらは部下の職員がしっかりと行なっているのだが、最終的な確認は必ずギルドマスターが行わなくてはならない。手を抜けば様々なトラブルを招くため、マスターも結構忙しいのだ。……レンは田舎の弱小ギルドマスターなので、大した仕事はしていないのだが。
「マスター、何かお手伝いしましょうか」
制服姿の使用人が進み出たが、クリフは軽く手を上げてそれを制した。
「いいんだ。これは私個人のことだからね」
「はっ、失礼致しました」
優しく諭されて、使用人はビシッと敬礼した。
……使用人には、時々目の前の人物が本当に『破壊の剛腕』と呼ばれた最強の冒険者だったのか、疑問に感じることがある。とても冷静で、誰に対しても優しく振る舞うクリフ。
冒険者時代の面影は戦いによって奪われた左腕と、壁に飾られた巨大なバトルアックスのみだ。当時の伝説では、彼のパワーを体現するものばかりである。
十体を超えるスカルワイバーンの群れをたった一人で蹴散らしたとか、
体が強固な岩石で構成されたボルケーノゴーレムを粉砕して砂に変えたとか、
雪山の悪魔と呼ばれる巨大熊ハクリッパーベアーをボコボコにぶちのめし、その肉をバーベキューでギルドの冒険者全員に振る舞ったとか……。
ちなみに今挙げたモンスターは、全員揃って危険度S級。ナガレの実力を十とすれば、こいつらは五百くらいのヤバい連中である。
当時を知る者によれば、気に入らないことがあれば大声を上げて暴れたが、細かいことは気にしない豪快な性格に加えて、面倒見が良くみんなから慕われていたらしい。……何が彼をそこまで変えたのだろう? いやもしかすると、これが本来の性格なのだろうか?
そんなことを考えていた使用人は、ついクリフと目が合ってしまった。
「……どうかしたのかい?」
「あ、いえ……その、よろしければ何の書類なのか、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
かしこまった態度の使用人だが、やはり気になるようだ。……そんな風を装って誤魔化した。
「ああ、いいとも。……最近妙な動きを見せている、黒ローブの奴らを調べたんだ。市役所の資料庫から写しを貰ってきたり、要点をまとめたりしたのさ」
「黒ローブ……例の怪しいヤツらですね」
使用人は頷く。
最近タイガス冒険者ギルド内でも、黒ローブの目撃情報が増えてきているのだ。遠くから観察されたり、危害を与えてくるわけでもなく、ただ後をつけられたりなど、干渉が多くなってきている。流石に街の中で見られた報告は無いのでまだ安全だが、冒険者の中でも不安が広がっているようだ。
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