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第十四話 女王への叛逆
謎の助っ人
しおりを挟むフローレンスは絶望しきって動けない。サニーも単独では防戦一方で、ナガレのことまで手を回す余裕がない。タネツたちも戻ってくる気配がない……。
ナガレもここまでか。サニーがそう思ったその瞬間……。
ザワッ……!
「……ッ⁉︎」
突如サニーは、背筋が凍るようなプレッシャーを感じた。それに気を取られ、プラチナの槍が腹部に突き刺さる!
「ぐはっ!」
鎧が貫通を防いでくれたが、それでも凄まじい衝撃にぶっ飛ばされる。だが壁に背中からぶつかっても、彼には痛みを感じる余裕はなかった。
(……な、な、なんだ、このプレッシャーは! あの方を初めて見たのと同じくらいだ……!)
「ブルフル…………」
動けなくなったサニーにトドメを刺そうと、ゴポゴポ言いながらクイーンスライムが近づいてくる。
ガシャンッ!
「……?」
「ギギギッ?」
その時突然鎧が擦れるような音が、階段の下から聞こえてきた。ここまで聞こえるということは、かなり大きな音のはずだ。
ガシャンッ! ガシャンッ! ガシャンッ!
音は階段を登って、どんどんこちらへやって来る。
「な……?」
フローレンスも思わず泣き止んで、そちらの方を見上げた。音はすぐ近くだ……!
ガシャンッ! ガシャンッ! ガシャンッ! ……ガシャンッ……!
「…………」
部屋の中にゆっくりと姿を現したのは、重厚な鎧だった。
(な、なんだ……このプレッシャーは! 周囲の景色が歪んで見える……⁉︎)
それを見たサニーは、押しつぶされそうなほどのプレッシャーに戦慄した。
『それ』は二メートルを超す大柄な人間(?)だった。全身真っ黒の鎧に、ヴァイキングの兜みたいな二本角がついた無骨なフルフェイスのグレートヘルム。兜のバイザーの奥には闇が広がっており、目つきすらも分からない。
とても分厚いチェストプレートにトゲトゲしいショルダーパット、鋼鉄の腕甲に鎧の間から除く鎖帷子、腰回りを保護する腰当て、脛当てまで……その間からはインナーとして黒いズボンが僅かに見えている。その鎧パーツ全てが漆(うるし)のように黒く、兜の湾曲した角や鎧の縁などは血のように赤かった。
ベルトには長剣を携えているが、鞘も持ち手も錆び付いてボロボロだった。
ボロキレのような灰色のマントをつけている。
「…………クイーンスライムか」
『それ』が初めて声を発した。地の底から響くような、男性の低い声だ。『それ』は膝をついたまま見上げて来るフローレンスと、今にもトドメを刺されそうなサニーをチラリと見る。
「ギギギッ!」
クイーンスライムはサニーを放置して『それ』に向き直った。
「……フン」
『それ』は腰の剣に手をやり、スラリと引き抜いた。
ガリガリガリ……シャキーン……!
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