崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

第十四話 女王への叛逆

フローレンスの引退

　そんなことをコソコソ話すタネツとヒズマ。……と、ここでオータムがナガレの方を向いた。
「……ちょっと話題を変えるね。ナガレさん」
「え、お、オレ？」
　急に呼ばれてキョトンとするナガレ。するとオータムは立ち上がり、ナガレと視線を合わせた。
「……いいや、レガーナちゃん。僕は君に初めて会った時、凄まじい才能を感じたんだ。……正直その時には、何か企んでラストハーレムズに入ったことも気づいていた。それでも加入を許したのは、君のアイドルとしての才能を感じたからだ」
「あ、ありがとうございます。……って、えぇーーーーっ⁉︎」
「君の性別なんて関係ない。ツイてるかツイてないかなんてどうでもいい。……またラストハーレムズで頑張ってみないかい？」

(なーーーーっ⁉︎)

　なんと、オータムから直々にナガレのスカウトだ！　……いや、返事はすでに決まっているのだが。ナガレはやはり首を横に振った。

「……すいません。オレはやっぱりレガーナではなくナガレとして、冒険者をやって行きたいです。それに……オレは夢があるんです。誰かを、多くの人をを助けられる強い冒険者になるって。それに……」
　ナガレは後ろを振り返る。そこにはタネツ、ヒズマ、そしてサニーがいた。
「大切な仲間たちもいるので。……なので、お断りさせてもらいます」
「……そっか。惜しいな。実に惜しい」
　オータムは腰を下ろし、心底名残惜しそうにため息を吐いた。しかしその表情から、憂いは感じられない。
「だが、素晴らしい。君にはそんなに素晴らしい仲間がいたんだね。なら認めよう。……レガーナちゃん。君は今日限りで、ラストハーレムズを引退だ。短い間だが、君が冒険者たちに与えた影響は大きかった。ありがとう」
「はい、こちらこそおせわになりました。オータムさん、ビレジさんも」
「悲しいわぁ。……時々はレガーナちゃんの格好して、顔出してちょうだいね」
「そ、それは勘弁してください……」

「あの、オータムさん」
　……と、ここでフローレンスがさっと進み出た。
「ん、どうしたんだい？」
　顔をあげたオータム。
「お、どうしたんだフローレンス」
「デカちゃんどうしたねん？」
「なんか頼み事ッスか？」
　フローレンスの仲間たちが気にかけてくれる。

　……心中で、一瞬迷った。もうトレメインたちはいないのだから、ベアンさんたちとの生活も悪くない、そう感じた。

「……実はプロデューサーに、ぜひ言いたいことがあります」
「なんだい？　気軽に言っておくれ」
　笑顔を作るオータム。フローレンスは固い決意を胸に宿し、普段の糸目をゆっくり開いた。切れ長のクールな瞳で、チラリとナガレを見る。
　……そしてオータムへ視線を戻し、口を開いた。
「……私、今日でラストハーレムズを辞めようと思います。……今まで、お世話になりました」