崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

第十八話 悪夢の遠吠え

進む陰謀

　褐色の大荒野。周囲には草木が一本も生えていない、岩ばかりがそこら中に佇んでいる。一本道の両脇には、聳え立つ高い崖……。

　ここはベイス・キャニオン。スラガン地方・キンテツ村から数十キロの渓谷だ。
　砂混じりの風が吹く中、道の影に数個のテントが張ってあった。何も知らない旅人が通りかかっても、ただのキャンプ地としか思わないだろう。むしろ同じ旅人と思って、無警戒で気さくに声をかけてくるかもしれない。

　だが……その中で待機しているのは、全員黒ローブの一味だった。

　その中の一人が、紫色の灯にブツブツと喋りかけている。まるで誰かに報告しているかのようだ。感情の籠っていない女性の声。その顔はローブに隠れ伺うことはできない。
「……はい。あのハーバードは折れませんでした。奴は我々の主を信じませんでした。……制裁が必要でしょうか？」
　少し黙ってからまた口を開く。
「……はい、わかりました。では彼らに指示を出します。何かあればすぐ報告いたします」
　そう言って火を消そうとしたが、何か聞こえたのか、それに耳を近づけた。紫色の炎はかなり熱そうだが、ローブの女性は全く怯まない。
「はい。……はい。分かりました。あの実験体を使用するのですね。承知しました」
　……と、ここで「えっ？」と驚いたように聞き返す。
「あ、あの呪文ですか？　ですがそれはまだ実験段階のはず……。……いえ、疑うつもりはありませんが……ああ、なるほど。分かりました。実験の過程は逐次レポートします」
　そう言って女は頷いた。
「……いえ、ありがたきお言葉です。それでは準備に取り掛かります。それでは」
　女が深く頭を下げる。すると風もないのにボゥッ……と、突然火が消えた。

「……さて」
　女は後ろを振り返る。テントで囲む広場の真ん中には、紫の炎を宿した焚き火があった。
　そしてそのそばで縛られている二人の人物……。手足を縄で縛られている上に周囲を帯剣したローブの戦士に囲まれては、逃げることなどできない。
　……その人物は、どこかで見た顔だった。
「もうっ、離して！　私に変なことするつもりでしょ！」
「お願いします助けてください……まだ、まだ死にたくないんです……」
　一人はクールな吊り目に、海のように青い……ボサボサの長髪。傷だらけの褐色肌に赤い眼差しでちょっぴり高身長の美少女だ。
　もう一人は絶望で生気を失った癒し系の垂れ目に、サクラのようなピンクの……ボサボサのショートヘア。泥だらけの白い肌で光のない黒目でちっちゃい美少女。

　……そう、ラストハーレムズの元リーダーであるトレメインの腰巾着、トリゼラとナスタシアだ。