崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

第二十六話 荒野に叫ぶロックスター

修羅場のギルド⁉︎

「はぁ？　オレなんかしたかな……」
　ベネットを怒らせるようなことをした覚えはないが……。とか考えながら近づくにつれて、なんと数十メートル先のテントからここまで喧騒が聞こえてきた。
「ぐぉぉーー！　許さねえッスーー！」
「おやめなさい、ベネットさん！」
「んもう！　激オコプンプン丸は勘弁しなっつーの！」
　ドタバタドタバタ！　ざわざわざわ……。
「この声はベネット！　サニーとセンチアもいるのか⁉︎」
　聞き覚えのある声に、ナガレは焦って歩みを早くする。……が、その直後松葉杖が躓いて、地面に転んでしまった。
「あでっ！」
「あーもうナガレ君頑張ってよぅ～！」
「怪我人を酷使するなって！」
　ツッコミを入れつつなんとか立ち上がり、足早にギルドのテントへ駆け込むナガレとアリッサ。
「みんな、やめろっ！　何が……⁉︎」
　転びそうになりつつ、開口一番ナガレが叫ぶ。だが、周囲を見渡しキョトンとした。
「あ！　な、ナガレ先輩⁉︎」
「ナガレさん！」「ナガレっち～！」

「……え、どう言う状況？」
　彼の前に広がる光景……まず入り口近くには、シンプルなシャツにズボン姿のベネットが地面にうつ伏せで倒れている。その上に同じく普段着のサニーとセンチアが馬乗りになって、なんとか暴れる彼を抑えていた。
　それはまだ分かるが、その近くには腰が抜けて青い顔でへたり込む、ほとんど下着見たいなタンクトップとホットパンツ姿のニンフォがいた。それに柱には黒マスクのジョーが腕を組んでもたれているし、カウンター席に飛び乗った緑のＴシャツに短パンを履いたミケが全身の毛を逆立てて「シャーッ！」と威嚇しているし……。
　一番気になるのは、白いセーターに革のズボン(おそらく体型に合った特注サイズ)を着たシャットが、地面に膝をつきギャン泣きしている。それをレンとアルクルが助けようとも慰めようともせず、厳しい目で見つめていた。
「え～……」
「ねっ、修羅場でしょ？　ナガレ君、なんとかしてよ～！」
　アリッサは包帯ぐるぐる巻きのナガレの背中に隠れている。何かあったら戦わせるつもりなのだろうか……？
「な、ナガレさん！　大変ッス、とんでもない事態になったッス！」
「いやそれはこの状況見たら分かるけど！　ベネット、一体何があったんだ？」
　ベネットはナガレを見るなり大人しくなった。
「お願いッス、大先輩方！　もう攻撃しないから離してくれッス～！　ナガレさんの前で野蛮な真似はしないッス！」
「その言葉、嘘ではないでしょうね」