1,023 / 1,768
第二十八・五話 VSラグナロク・蒼雷
荒野の町で対峙
しおりを挟む
「……シエラ!」
傍観していたジョーがキッと目を細めた。ダガーの持ち手を、無意識のうちに強く握りしめる。
激しい風が、わずかな砂埃と共にヴェールを持ち上げ、風に靡かせた。散り散りになったヨビカリ草が時々宙舞う。
「……アルクル、マスターを頼む」
「へ?」
そう言って、アルクルが反応するより前にナガレの側へ高速で駆け寄った。
「あ、ジョー! シエラとか言ったっけ、こいつは一体⁉︎」
「……奴はシエラ・ファスタ。ラグナロクの中枢メンバーだ」
「え、中枢メンバー⁉︎」
驚くナガレを他所に、シエラはジョーを見て少し嬉しそうに笑った。……だがすぐに、元の無感情でクールな表情に戻ってしまったが。
「……ジャック。久しぶり。腕は鈍ってるけど、元気そうでなによりね」
「……お前がそんな、爽やかなセリフを言うわけがない。マッシバーにそう言えと吹き込まれたのか」
「せっかく感動の再会なのに。残念ね」
そう言って、次はナガレへ向き直る。
「……あなたがナガレ・ウエストね」
「そ、そうだけど」
急に話を振られて驚きつつも答えるナガレ。……だがその直後、シエラの目がキッと吊り上がる。
「悪いんだけどさ。ここで冒険者やめてもらうから。……ラグナロクに入るか、ここで再起不能になるか。どっちか選びなさいな」
その直後、シエラから凄まじいプレッシャーが吹き出した。何も攻撃していないのにも関わらず、ナガレはビクッとして後ずさる。
「弱い奴なら、私が睨んだだけで腰が抜けて立てなくなる。それを耐えるだなんて。ますます面白いね」
棒読みでそう言うシエラ。もしくは、これが彼女の普通の話し方なのだろうか。
「……マッシバー、こいつを倒せばいいの」
「くっ……!」
「……ナガレ、油断するな」
ジョーがすぐそばでナガレへ話しかけてくる。シエラはゆっくりマッシバーへ近寄り、何か話していた。
「……聞け、ナガレ。おそらくこのやりとりも、バンドは見ているはず。だからもし戦いになれば、ひたすら防御に回れ。他人任せなのは残念だが、すぐにバンドがやってきてあいつらを倒してしまうはずだ」
ジョーには勝算があった。バンドはナガレの意思を尊重してくれるが、他者が妨害した場合は許さない。例外なく殺す……と本人が言っていた。それが本当なら、ナガレが連れて行かれそうになったらすぐさま出現し阻止してくれるだろう。
「……いくらシエラだろうとバンドには勝てまい。大丈夫だナガ……」
「なーにを話していやがる、ジャック!」
傍観していたジョーがキッと目を細めた。ダガーの持ち手を、無意識のうちに強く握りしめる。
激しい風が、わずかな砂埃と共にヴェールを持ち上げ、風に靡かせた。散り散りになったヨビカリ草が時々宙舞う。
「……アルクル、マスターを頼む」
「へ?」
そう言って、アルクルが反応するより前にナガレの側へ高速で駆け寄った。
「あ、ジョー! シエラとか言ったっけ、こいつは一体⁉︎」
「……奴はシエラ・ファスタ。ラグナロクの中枢メンバーだ」
「え、中枢メンバー⁉︎」
驚くナガレを他所に、シエラはジョーを見て少し嬉しそうに笑った。……だがすぐに、元の無感情でクールな表情に戻ってしまったが。
「……ジャック。久しぶり。腕は鈍ってるけど、元気そうでなによりね」
「……お前がそんな、爽やかなセリフを言うわけがない。マッシバーにそう言えと吹き込まれたのか」
「せっかく感動の再会なのに。残念ね」
そう言って、次はナガレへ向き直る。
「……あなたがナガレ・ウエストね」
「そ、そうだけど」
急に話を振られて驚きつつも答えるナガレ。……だがその直後、シエラの目がキッと吊り上がる。
「悪いんだけどさ。ここで冒険者やめてもらうから。……ラグナロクに入るか、ここで再起不能になるか。どっちか選びなさいな」
その直後、シエラから凄まじいプレッシャーが吹き出した。何も攻撃していないのにも関わらず、ナガレはビクッとして後ずさる。
「弱い奴なら、私が睨んだだけで腰が抜けて立てなくなる。それを耐えるだなんて。ますます面白いね」
棒読みでそう言うシエラ。もしくは、これが彼女の普通の話し方なのだろうか。
「……マッシバー、こいつを倒せばいいの」
「くっ……!」
「……ナガレ、油断するな」
ジョーがすぐそばでナガレへ話しかけてくる。シエラはゆっくりマッシバーへ近寄り、何か話していた。
「……聞け、ナガレ。おそらくこのやりとりも、バンドは見ているはず。だからもし戦いになれば、ひたすら防御に回れ。他人任せなのは残念だが、すぐにバンドがやってきてあいつらを倒してしまうはずだ」
ジョーには勝算があった。バンドはナガレの意思を尊重してくれるが、他者が妨害した場合は許さない。例外なく殺す……と本人が言っていた。それが本当なら、ナガレが連れて行かれそうになったらすぐさま出現し阻止してくれるだろう。
「……いくらシエラだろうとバンドには勝てまい。大丈夫だナガ……」
「なーにを話していやがる、ジャック!」
0
あなたにおすすめの小説
俺だけ“使えないスキル”を大量に入手できる世界
小林一咲
ファンタジー
戦う気なし。出世欲なし。
あるのは「まぁいっか」とゴミスキルだけ。
過労死した社畜ゲーマー・晴日 條(はるひ しょう)は、異世界でとんでもないユニークスキルを授かる。
――使えないスキルしか出ないガチャ。
誰も欲しがらない。
単体では意味不明。
説明文を読んだだけで溜め息が出る。
だが、條は集める。
強くなりたいからじゃない。
ゴミを眺めるのが、ちょっと楽しいから。
逃げ回るうちに勘違いされ、過剰に評価され、なぜか世界は救われていく。
これは――
「役に立たなかった人生」を否定しない物語。
ゴミスキル万歳。
俺は今日も、何もしない。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
氷弾の魔術師
カタナヅキ
ファンタジー
――上級魔法なんか必要ない、下級魔法一つだけで魔導士を目指す少年の物語――
平民でありながら魔法が扱う才能がある事が判明した少年「コオリ」は魔法学園に入学する事が決まった。彼の国では魔法の適性がある人間は魔法学園に入学する決まりがあり、急遽コオリは魔法学園が存在する王都へ向かう事になった。しかし、王都に辿り着く前に彼は自分と同世代の魔術師と比べて圧倒的に魔力量が少ない事が発覚した。
しかし、魔力が少ないからこそ利点がある事を知ったコオリは決意した。他の者は一日でも早く上級魔法の習得に励む中、コオリは自分が扱える下級魔法だけを極め、一流の魔術師の証である「魔導士」の称号を得る事を誓う。そして他の魔術師は少年が強くなる事で気づかされていく。魔力が少ないというのは欠点とは限らず、むしろ優れた才能になり得る事を――
※旧作「下級魔導士と呼ばれた少年」のリメイクとなりますが、設定と物語の内容が大きく変わります。
「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる