1,044 / 1,765
第二十八・五話 VSラグナロク・蒼雷
弁償
しおりを挟む
「……むむむ」
ド正論でぐうの音も出ないシエラ。冒険者だろうがならず者だろうが酒に酔った一般市民だろうが、決闘に負けたら基本的に死ぬものである。その中で生かされたのであれば、強くは言えない。(ただ、シエラが命乞いした訳でもない)
それはさておき、ジョーからもらった札束の枚数を確認するルーカス氏。隣でアリーナ夫人が心配そうに見つめている。
「……ざっと数えましたが三万ダラーあります。これだけあれば、町を修復してもお釣りが来るのではないでしょうか」
「さ、三万ダラー⁉︎」
「まあ、な、なんてこと……⁉︎」
ルーカス氏は卒倒しそうになり、アリーナ夫人にさっと支えられる。町民にもざわめきが広がっていった。
「三万ダラーを、個人が持ち歩いていたのか……⁉︎」
「うっ、お、俺の年収より多い……」
「ちょっとアナタ⁉︎」
するとジョーは、ルーカス氏の手を硬く握った。
「……ナガレの意見です。余った場合は町の発展に使ってください、とのことでした」
「そういうことでグェッハホォッ⁉︎」
「お前もう黙ってろ! ……そんで最後にシエラ、お前にもやってもらうことがある」
「む、むぅー……?」
がんじがらめの状態でキョトンとするシエラ。ジョーはその顔をグッと掴み、いきなりシエラを引きずり倒す!
グイッ!
「むーっ⁉︎」
ドシャアッ!
「むぐ!」
まるで土下座のような姿勢で、地面に這いつくばるシエラ。……非常に無様な姿である。可愛い顔とスレンダーな体型が隠れるほど魔力封じの布でグルグル巻きにされ、着ぐるみたいな状態で虫の如く地面に倒れるシエラは、別の意味で無様である。
「むー! むんぐぐぐむぅー!」
「……黙れ、俺はもうラグナロクの仲間じゃない。その傲慢知己なプライドも、今は忘れてもらおうか」
(え、今ので分かったの⁉︎)
(す、すげえ……のか?)
顔を見合わせるアリッサとルック。するとジョーは唐突にダガーを抜き、シエラの口に貼り付けた布を切った。
「……言え、シエラ。それがお前を生かした理由なのだから」
なんだなんだと不安げな町民の皆さん。ジョーはシエラの背中を踏みつけ前を向いた。
「……冒険者、出てこい。マスターのアルクルも」
「え?」「はい?」「なんッスか」
言われてゾロゾロと出て来る、普段着姿の冒険者たち。ジョーを含むギャラリーの五人は、ゲリラ豪雨でも営業中の温泉施設に行きちゃんと着替えていた。
「……んで、なんで俺らを呼び出すんだよ」
「怖いわ~。なんかとんでもないカミングアウトじゃないでしょうね~」
ド正論でぐうの音も出ないシエラ。冒険者だろうがならず者だろうが酒に酔った一般市民だろうが、決闘に負けたら基本的に死ぬものである。その中で生かされたのであれば、強くは言えない。(ただ、シエラが命乞いした訳でもない)
それはさておき、ジョーからもらった札束の枚数を確認するルーカス氏。隣でアリーナ夫人が心配そうに見つめている。
「……ざっと数えましたが三万ダラーあります。これだけあれば、町を修復してもお釣りが来るのではないでしょうか」
「さ、三万ダラー⁉︎」
「まあ、な、なんてこと……⁉︎」
ルーカス氏は卒倒しそうになり、アリーナ夫人にさっと支えられる。町民にもざわめきが広がっていった。
「三万ダラーを、個人が持ち歩いていたのか……⁉︎」
「うっ、お、俺の年収より多い……」
「ちょっとアナタ⁉︎」
するとジョーは、ルーカス氏の手を硬く握った。
「……ナガレの意見です。余った場合は町の発展に使ってください、とのことでした」
「そういうことでグェッハホォッ⁉︎」
「お前もう黙ってろ! ……そんで最後にシエラ、お前にもやってもらうことがある」
「む、むぅー……?」
がんじがらめの状態でキョトンとするシエラ。ジョーはその顔をグッと掴み、いきなりシエラを引きずり倒す!
グイッ!
「むーっ⁉︎」
ドシャアッ!
「むぐ!」
まるで土下座のような姿勢で、地面に這いつくばるシエラ。……非常に無様な姿である。可愛い顔とスレンダーな体型が隠れるほど魔力封じの布でグルグル巻きにされ、着ぐるみたいな状態で虫の如く地面に倒れるシエラは、別の意味で無様である。
「むー! むんぐぐぐむぅー!」
「……黙れ、俺はもうラグナロクの仲間じゃない。その傲慢知己なプライドも、今は忘れてもらおうか」
(え、今ので分かったの⁉︎)
(す、すげえ……のか?)
顔を見合わせるアリッサとルック。するとジョーは唐突にダガーを抜き、シエラの口に貼り付けた布を切った。
「……言え、シエラ。それがお前を生かした理由なのだから」
なんだなんだと不安げな町民の皆さん。ジョーはシエラの背中を踏みつけ前を向いた。
「……冒険者、出てこい。マスターのアルクルも」
「え?」「はい?」「なんッスか」
言われてゾロゾロと出て来る、普段着姿の冒険者たち。ジョーを含むギャラリーの五人は、ゲリラ豪雨でも営業中の温泉施設に行きちゃんと着替えていた。
「……んで、なんで俺らを呼び出すんだよ」
「怖いわ~。なんかとんでもないカミングアウトじゃないでしょうね~」
0
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる