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第二十九話 森林のハンター
キャラとは…?
しおりを挟む「やっとわたしにセリフ振ってくれたね。……正直その話の続きは気になるけど」
再び歩き出したナガレとセンチア。
「……わたしさ。実は……本当は、こんな性格なんだ。自分で言っちゃうのもなんだけど」
「え……えぇーーーーっ⁉︎ そ、それがホントなの⁉︎ あのおちゃらけたギャル語じゃなくって⁉︎」
驚いてザザッと後退するナガレ。普段のセンチアなら……。
「とりまあーし、マヂトーンじゃこげーなカクセーなのよん。マイセルフで言っちゃうのはなんじゃけんど~」
……くらいは言いそう……いや流石にそこまでオーバーには言わない……と見せかけてやっぱ言いそうである。
「静かでしょ。昔っから私、大人しめの性格でさ。休みの日は家で本とか読んでるのが大半だったのよね。お酒もあんまり得意じゃないし」
「え、えぇ~……」
「びっくりした? わたしってホント箱入り娘……いや、ゲージ入りのイヌだったの。昔っから友達もそこまでいなかったし……」
「…………⁉︎」
声も小さい、うるさくもない、分からない言葉を使わないセンチア。今度はナガレの方が呆然としてしまう。
「えぇーっとさ……そ、そうなんだ。それじゃあセンチアは今までキャラを作ってたんだ。なんというか……大変だったね。打ち明けてくれてありがとう」
とりあえずナガレはその事実を受け止める。そういえば、初めて会った時から(イマドキに比べたら若干ズレてるなぁ……)とは思っていた。それはセンチアが理想のキャラを演じた結果、知識が伴わずエセギャル語になってしまったのだろう。
「ありがと。そう言ってもらえて嬉しい」
「……なにその対話のテンプレみたいな受け答え」
「ごめん。でもこう喋るのがホントのわたしなんだよ。それじゃ行こう? 森の奥へ進まなきゃ」
「そ、そうだな……」
センチアの言葉には全く無理がなかった。どうやら本当にこの喋り方のようだ。
そうして歩き出すナガレたち。森は相変わらず静かで薄暗い。獣道も外れ、だんだん薄くなってきた。
「そんでさ、なんで喋り方を変えてたの? 別にセンチアのはダメじゃない。むしろ分かりやすくて良いと思うけど」
「ん……違う違う。わたし、もっと明るい娘になりたかったんだ。ちょうど五年くらい前かな?」
「へぇ、そりゃどうしてさ。自分を変えようとするなんて、相当な理由があるんでしょ?」
ナガレは子供の頃、世の中の困っている人、悩んでいる人などに、自分ができることは何もないとと考えていた。それを変えてくれたのは、アーバンたちさすらいの冒険者だ。
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