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第三十二話 狐の威を借る虎
給料の一コマ
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嬉しそうに十万ダラーを見つめるナガレ。金をもらえたことではなく、それをチェリナがくれたということがとても嬉しかった。
「ていうか金さえくれるならいつまでもいてくれていい……」
そんな言葉が出そうになったその瞬間……。
バンッ!
「ふぁ⁉︎」
バンバンバンバン! と窓を叩く音がする。後ろを向いたナガレの目に映ったのは……ヤモリのように壁に張り付き、手のひらで叩くオギンさんの顔だった。
「…………!」(ブルブル)
なにやら厳しい目(口元にはマスクをつけていた)で、ブンブン首を横に振っている。それを見たナガレもハッとした。
「いっいや、できればすぐに出てって欲しい。ていうかこのお金で別のところに住めば?」
……そう、彼の家にチェリナがいたら、サキミに何と思われるか分からない。第一彼女がいる限り、戻ってきてくれないかもしれない……。
いくらお金を天秤にかけても、ナガレはやっぱりサキミが好きだった。早く戻ってきて欲しい……そんな考えを見透かされたのか、チェリナは「ちぇっ」と頬を膨らませる。
「別にいーじゃん、私とナガレの仲なんだし」
「ああ、オレとオメーの仲だな。浮気した女と元カレのね」
「はいはい、そういうのいーから」
チェリナは不満げにそう言って、ナガレの手を掴む。それを押して、彼が持ったお金ごと胸に押し付けた。
「……でも、それは返さなくていい。ナガレが使ってよ。そのために稼いだんだから……ね?」
「そ……そう? ……分かった。なら貰っておくよ。これは食費に回す」
そう言われたのなら悪い気はしない。ナガレは金を受け取って、家の金庫に入れた。しっかりと二段階ロックをかける。
そしてチェリナの方を向き、ニコッと笑いかけた。
「……そんじゃ、それはそれとして」
「え、なにー?」
「今日は外食しよっか。……オレの奢りさ」
「うわっマジで⁉︎ やったーー!」
ご褒美をあげるのも大切だ。ナガレの提案に、チェリナは小躍りして喜んだ。
「ツーテン食堂で良い? この時間なら多分空いてるはず」
「もっちろん! いこいこ! お肉食べたいお肉!」
「じゃあオレはどうしよっかな……」
食べるものを考えながら、ズボンを履いて横縞シャツを着て、レザージャケットを羽織るナガレ。
「何してんのよ! スカーフまで巻かなくても良いでしょ~」
「いーだろ別にっ。オレのトレードマークにて最大のオシャレだもん」
「オシャレかどうかは分かんないけど……まぁ、ナガレって一目で分かるよねぇ……」
「ていうか金さえくれるならいつまでもいてくれていい……」
そんな言葉が出そうになったその瞬間……。
バンッ!
「ふぁ⁉︎」
バンバンバンバン! と窓を叩く音がする。後ろを向いたナガレの目に映ったのは……ヤモリのように壁に張り付き、手のひらで叩くオギンさんの顔だった。
「…………!」(ブルブル)
なにやら厳しい目(口元にはマスクをつけていた)で、ブンブン首を横に振っている。それを見たナガレもハッとした。
「いっいや、できればすぐに出てって欲しい。ていうかこのお金で別のところに住めば?」
……そう、彼の家にチェリナがいたら、サキミに何と思われるか分からない。第一彼女がいる限り、戻ってきてくれないかもしれない……。
いくらお金を天秤にかけても、ナガレはやっぱりサキミが好きだった。早く戻ってきて欲しい……そんな考えを見透かされたのか、チェリナは「ちぇっ」と頬を膨らませる。
「別にいーじゃん、私とナガレの仲なんだし」
「ああ、オレとオメーの仲だな。浮気した女と元カレのね」
「はいはい、そういうのいーから」
チェリナは不満げにそう言って、ナガレの手を掴む。それを押して、彼が持ったお金ごと胸に押し付けた。
「……でも、それは返さなくていい。ナガレが使ってよ。そのために稼いだんだから……ね?」
「そ……そう? ……分かった。なら貰っておくよ。これは食費に回す」
そう言われたのなら悪い気はしない。ナガレは金を受け取って、家の金庫に入れた。しっかりと二段階ロックをかける。
そしてチェリナの方を向き、ニコッと笑いかけた。
「……そんじゃ、それはそれとして」
「え、なにー?」
「今日は外食しよっか。……オレの奢りさ」
「うわっマジで⁉︎ やったーー!」
ご褒美をあげるのも大切だ。ナガレの提案に、チェリナは小躍りして喜んだ。
「ツーテン食堂で良い? この時間なら多分空いてるはず」
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「じゃあオレはどうしよっかな……」
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