崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

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第三十三話 ジョーの傷跡

その名はジェナ

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 ……二人して気を使っているが、当然バレバレである。女は全てを観念した。

「……隠さなくても良い。見たんだろう……? どうせ気になっているだろう。この醜い火傷が」
「そ、そんなことっ」
「……訳は話す。ただ、人目は避けたい」

 と言う訳で、アルカナショップの二階。ダイニングにてジョーは再びマスクを外した。カーテンをしている分、中はランプで明るく照らされている。
 まるで人間の傷とは思えないような、紫色の大火傷。改めてそれを見て、ルックとアリッサは言葉を失った。
 静かな夜。どこか遠くで、オオカミの遠吠えが聞こえる。
「……俺には、家族がいない。俺を庇って死んだ」
 目を見開く二人。それでも話を遮ろうとはしない。そんな雰囲気は、返って彼を話しにくくさせた。
「……当時はまだ、そんなことは分からなかった。結婚して故郷を出ていた姉さんと、その夫と暮らし始めた」
 ジョーは遠い目をしながら淡々と告げる。故郷の話は何度も泣いた。常に彼の脳裏にあり、それで泣き続け泣き続け……最終的に涙も枯れ果てた。
「……二人はこんな俺にも、とても優しくしてくれた。……姉さんの名前はジェナ。ジェナ・ヒッグス。それと夫はバンガルさんだ。……俺が十歳になるくらい、病気で亡くなったよ」
「そ、それじゃあ、二人は」
「……バンガルさんには遺産があった。姉さんだけなら、細々と暮らしていけたかもしれない。だが二人が、しかも十代の男子を抱えてはとても無理だ。俺を追い出せば全て解決だったのに……姉さんは俺のために、必死で働いてくれた」
 辛い気持ちなどなかった。何度も思い出し、その度に心を押し殺した。次第に、それを思い出してもなんとも思わなくなっていった。
(……なんで、ジェナって言わないんだろう。姉さん呼びなのはどうして……?)
(……きっと、名前で呼ぶのが辛いんだ。思い出したくもないんだろうな)
「姉さんはずっと働いていた。薬の入荷に町の洗濯屋……時々は身体を売るようなこともしていたらしい。姉さんのおかげで俺は成長し、知恵をつけた。……そして、この傷をつけた正体は、イビル教団と呼ばれる存在だと知ったんだ。……そこからは、つい数年前の話だ」
 刹那、ジョーは迷った。この話を続けるべきか。彼の正体を知れば、二人は幻滅するかも知れない。感情を押し殺してきたはずなのに、なぜかそんなことを考えてしまった。
「復讐には金が必要だ。俺はすぐさま家を飛び出し冒険者になり、ラグナロクに入った。最強の冒険者軍団の下っ端としてな」
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