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シュウには、控えめで欲もなさそうなダイスケがなぜわざわざこんな所に働きに来たのか、理解できなかった。ここはトーキョー最大の歓楽街で、治安が悪いことでも有名な街だ。
「ダイスケさんは、なんでうちみたいな店に来たの?」
無邪気を装って訊くと、ダイスケは一瞬息を飲むような表情になり、それからそっとため息をついた。
「……うん、店の借金返さなきゃいけなくてね。金がいるんだ」
遠い目で、きれいに片づけられた厨房の方を見るせつなげな表情。見とれてしまいそうになる。日陰にひっそりと一輪だけ咲いてまばゆさを放つ花のようで、自分のような人間は触れるべきではない、そんな気もしてくる。
「そっか、それは大変だね」
言葉の裏で、シュウは安心していた。それなら普通よりはかなり金がいいはずのこの店に、ダイスケはしばらくいるだろう。
「この街で変なヤツに引っかからないように、気をつけてよ」
ダイスケは表情を引き締めてうなずいた。もうなにか、普通に暮らしていれば見ることのない光景を見たのかも知れない。
「まあたぶん、俺が一番危ないけどね。分かってるでしょ、俺の仕事。性のご奉仕がお仕事なの、男たぶらかして搾り取りながら、そうと気づかれないようにいい夢見せてあげるの」
わざと女っぽい仕草と声で言い、シュウはけらけら笑った。
「自分の仕事をそんなふうに言うのは、よくないよ」
ダイスケは厳しい表情で、まっすぐにシュウを見た。真剣なまなざしに、思わずドキリとする。
「歌もめちゃくちゃうまいのに。それにナンバーワンなんでしょ? それはすごいことだよ」
「そう、かな……?」
つい、素に戻ってつぶやいていた。こんな反応をされたことは、たぶん初めてだ。笑われて冗談として消費されるか、おべっかを言われていた。それか、陰で悪口を言われるか。だが出会って間もないシュウに、ダイスケは本気で言う。
「たとえ冗談でも、身を削ってやってる自分を、自分でバカにしちゃいけない。身につけた技術で食べてるって点では、シュウ君も俺も同じだよ」
真に受けちゃって、と笑えなかった。ダイスケがキヨヒトを好きなのも、当然だろう。キヨヒトはまさに、歌のために身を削り、それをごく当たり前だと思っている。でも、仕事にきれいも汚いもないと言うが、それはやっぱりきれい事だ。どうしたって、自分はキヨヒトやダイスケとは違う。
「ダイスケさんは、なんでうちみたいな店に来たの?」
無邪気を装って訊くと、ダイスケは一瞬息を飲むような表情になり、それからそっとため息をついた。
「……うん、店の借金返さなきゃいけなくてね。金がいるんだ」
遠い目で、きれいに片づけられた厨房の方を見るせつなげな表情。見とれてしまいそうになる。日陰にひっそりと一輪だけ咲いてまばゆさを放つ花のようで、自分のような人間は触れるべきではない、そんな気もしてくる。
「そっか、それは大変だね」
言葉の裏で、シュウは安心していた。それなら普通よりはかなり金がいいはずのこの店に、ダイスケはしばらくいるだろう。
「この街で変なヤツに引っかからないように、気をつけてよ」
ダイスケは表情を引き締めてうなずいた。もうなにか、普通に暮らしていれば見ることのない光景を見たのかも知れない。
「まあたぶん、俺が一番危ないけどね。分かってるでしょ、俺の仕事。性のご奉仕がお仕事なの、男たぶらかして搾り取りながら、そうと気づかれないようにいい夢見せてあげるの」
わざと女っぽい仕草と声で言い、シュウはけらけら笑った。
「自分の仕事をそんなふうに言うのは、よくないよ」
ダイスケは厳しい表情で、まっすぐにシュウを見た。真剣なまなざしに、思わずドキリとする。
「歌もめちゃくちゃうまいのに。それにナンバーワンなんでしょ? それはすごいことだよ」
「そう、かな……?」
つい、素に戻ってつぶやいていた。こんな反応をされたことは、たぶん初めてだ。笑われて冗談として消費されるか、おべっかを言われていた。それか、陰で悪口を言われるか。だが出会って間もないシュウに、ダイスケは本気で言う。
「たとえ冗談でも、身を削ってやってる自分を、自分でバカにしちゃいけない。身につけた技術で食べてるって点では、シュウ君も俺も同じだよ」
真に受けちゃって、と笑えなかった。ダイスケがキヨヒトを好きなのも、当然だろう。キヨヒトはまさに、歌のために身を削り、それをごく当たり前だと思っている。でも、仕事にきれいも汚いもないと言うが、それはやっぱりきれい事だ。どうしたって、自分はキヨヒトやダイスケとは違う。
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