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翌日。出かけていたケンが事務所に戻ると、部下達が騒いでいた。
「なにやってんだお前ら!」
ドアが開くのと同時に、ケンに従っていたムカイが怒鳴る。周りで見ていた者達はあわてて直立不動になったが、騒ぎの元である二人は床に転がってわめきながら、つかみあい殴りあい、ケン達に気づかない。
ケンは止めようとするムカイを制し、しばらく黙って見ていることにした。
狂犬のように歯をむき出し、なにやらわめきながら真っ赤な顔で殴りあう。身体がソファや机にぶつかり、激しい音をたて、顔から血が飛び散ってもなおやめない。醜い。どうやら二人は、恋人かなにかを取りあっているらしい。
「そこまでにしとけ!」
一人が馬乗りになり、勝ちを確信した歪んだ暗い笑みを浮かべたのを見た瞬間、ケンは大声を上げた。
「ボ、ボス……!」
勝った方の男がようやく我に返り、よろけながらあわてて立ち上がって姿勢を正す。床に転がっていた男も、顔から血を流しながらなんとか身体を起こした。
なんだか滑稽で、まるで安っぽい映画のワンシーン。だがこうした暴力のぶつかりあいは、この世界では日常茶飯事だ。
「なんだ、このザマは?」
ケンに代わって、ムカイが血だらけの男達に迫る。
「こいつら、ウエイターに二股かけられてたんスよ」
なにも言えず下を向いている男達の代わりに、あきれたように部下の一人が言う。
ウエイターという言葉に、ムカイは険しい表情でケンを振り返った。ケンは無言でうなずき、さっと身を翻して社長室へと向かう。
問いただす厳しい声も、部屋のドアを閉めれば聞こえなくなる。黒い革張りのソファに背中を預け、ケンは目を閉じた。
身体の内の欲をすべてぶちまけるかのように、醜い表情でわめき不格好に殴りあい、血まみれになりながらも闘う姿。やけに目に焼きついてしまったのは、シュウのことがあるからか。こんな時にとらわれまいと思っても、やはり常に頭の片隅にある。
しばらくしてドアがノックされた。ケンが返事をすると、苦々しい表情のムカイ。ムカイは細身で背が高く、若い頃はボクシングをしていたとかで、今も年のわりに引き締まった身体をしている。
「やっぱり、HEAVENの店員が相手でした。二ヶ月ぐらい前でしたかね、カズキって若くて顔もいいヤツが入ったんですが……」
ケンの向かい側に座ったムカイが、あきれたような声で切り出す。ケンはカズキの顔が思い浮かべられず、売り上げの書類を思い出そうとした。確か新人のくせに、最初から結構な数字を出していた。新人食いが好きな客は一定数いる。顔がいいとなればなおさらだ。
「あいつらが言うには、カズキの方から近づいてきたんだそうです」
「だからつい、誘いに乗って店のもん食っちまったって? クズの言い分だな」
ケンは鼻で笑った。鋭く冷たい、ボスとしての顔。
「なにやってんだお前ら!」
ドアが開くのと同時に、ケンに従っていたムカイが怒鳴る。周りで見ていた者達はあわてて直立不動になったが、騒ぎの元である二人は床に転がってわめきながら、つかみあい殴りあい、ケン達に気づかない。
ケンは止めようとするムカイを制し、しばらく黙って見ていることにした。
狂犬のように歯をむき出し、なにやらわめきながら真っ赤な顔で殴りあう。身体がソファや机にぶつかり、激しい音をたて、顔から血が飛び散ってもなおやめない。醜い。どうやら二人は、恋人かなにかを取りあっているらしい。
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一人が馬乗りになり、勝ちを確信した歪んだ暗い笑みを浮かべたのを見た瞬間、ケンは大声を上げた。
「ボ、ボス……!」
勝った方の男がようやく我に返り、よろけながらあわてて立ち上がって姿勢を正す。床に転がっていた男も、顔から血を流しながらなんとか身体を起こした。
なんだか滑稽で、まるで安っぽい映画のワンシーン。だがこうした暴力のぶつかりあいは、この世界では日常茶飯事だ。
「なんだ、このザマは?」
ケンに代わって、ムカイが血だらけの男達に迫る。
「こいつら、ウエイターに二股かけられてたんスよ」
なにも言えず下を向いている男達の代わりに、あきれたように部下の一人が言う。
ウエイターという言葉に、ムカイは険しい表情でケンを振り返った。ケンは無言でうなずき、さっと身を翻して社長室へと向かう。
問いただす厳しい声も、部屋のドアを閉めれば聞こえなくなる。黒い革張りのソファに背中を預け、ケンは目を閉じた。
身体の内の欲をすべてぶちまけるかのように、醜い表情でわめき不格好に殴りあい、血まみれになりながらも闘う姿。やけに目に焼きついてしまったのは、シュウのことがあるからか。こんな時にとらわれまいと思っても、やはり常に頭の片隅にある。
しばらくしてドアがノックされた。ケンが返事をすると、苦々しい表情のムカイ。ムカイは細身で背が高く、若い頃はボクシングをしていたとかで、今も年のわりに引き締まった身体をしている。
「やっぱり、HEAVENの店員が相手でした。二ヶ月ぐらい前でしたかね、カズキって若くて顔もいいヤツが入ったんですが……」
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「あいつらが言うには、カズキの方から近づいてきたんだそうです」
「だからつい、誘いに乗って店のもん食っちまったって? クズの言い分だな」
ケンは鼻で笑った。鋭く冷たい、ボスとしての顔。
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