48 / 61
4
4-13
しおりを挟む
冗談めかして言いながらも、シュウの瞳から次々あふれる涙。その涙は、見ているケンの心を打ちのめした。やはりあの時も、シュウはダイスケを思って泣いたのだ。
そしてこれは、自分へのメッセージでもある。肉体関係どころかキスすらしていないから、殺すなと。
「俺はあんたといられるなら、なんだってよかった。もともと、いつかはこの街からいなくなるだろうって、思ってたし。だけど、それでもよかった」
泣きながら、震える声でシュウは想いをしっかりと告げようとしている。ダイスケもそんなシュウから目をそらさない。
ケンは二人の姿を見ていられなくなり、背を向けた。万が一を考えて二人の方を向いているムカイも、二人からなるべく顔を背けるようにして立っている。
「だから、謝らないで。俺が勝手に好きになったんだから」
「シュウ君……」
鼻をすすり上げ、目を乱暴に腕でこすって、シュウは言葉を続ける。
「楽しかった、本当に楽しかった。できれば、ずっとそばにいて欲しかった」
とうとうこらえきれなくなったのか、シュウはダイスケに抱きついた。ダイスケは遠慮がちにシュウを抱きしめる。
「……元気で。キヨヒトさんとの曲、一番に聴かせてくれてうれしかったよ」
もう、いいだろう。ケンは振り返り、ムカイの肩をたたいた。ムカイはうなずき、ダイスケを立たせる。
「待てよケン!」
涙に濡れた顔で、去ろうとするケンを呼び止めるシュウ。立ち止まったケンの横を、ムカイがダイスケを連れて出て行く。
二人きりになった。
「ダイスケさんのこと、殺すんだろ?」
泣き顔のまま、当然のことのように訊くシュウ。所詮は一般人のダイスケとは釣りあわないと、なぜ気づけないのか。
「まだ、分からねえ」
その場に突っ立ったまま、ケンは答える。
「頼む、殺さないでくれ。店にスパイとして潜りこんでたのは確かでも、デカいことはやってないんだろ? 頼むよ、ダイスケさんを殺さないでくれよ!」
泣きながらケンにすがりつき、必死に頼む。なぜ、自分を騙した男の命乞いをするのか。分からない。
「俺らが殺さなくても、消されるかも知れねえぞ」
シュウの泣き顔を見下ろしながら、ケンは半分呆然として言った。
さっきのダイスケのように、シュウからあんなに優しく抱きしめられたことが、これまであっただろうか。あんなふうにお互いを優しく気遣いあったことは?
あるわけがない、と内心即答する。本心は隠し、時には乱暴に抱いてきた。優しく接して欲しければ、相手にもそうしなければならない。簡単なことだ。
世の中、身体の繋がりだけじゃないですから、とダイスケは言った。悔しいが、その通りらしい。あんなに幸せそうなシュウは見たことがない。
そしてこれは、自分へのメッセージでもある。肉体関係どころかキスすらしていないから、殺すなと。
「俺はあんたといられるなら、なんだってよかった。もともと、いつかはこの街からいなくなるだろうって、思ってたし。だけど、それでもよかった」
泣きながら、震える声でシュウは想いをしっかりと告げようとしている。ダイスケもそんなシュウから目をそらさない。
ケンは二人の姿を見ていられなくなり、背を向けた。万が一を考えて二人の方を向いているムカイも、二人からなるべく顔を背けるようにして立っている。
「だから、謝らないで。俺が勝手に好きになったんだから」
「シュウ君……」
鼻をすすり上げ、目を乱暴に腕でこすって、シュウは言葉を続ける。
「楽しかった、本当に楽しかった。できれば、ずっとそばにいて欲しかった」
とうとうこらえきれなくなったのか、シュウはダイスケに抱きついた。ダイスケは遠慮がちにシュウを抱きしめる。
「……元気で。キヨヒトさんとの曲、一番に聴かせてくれてうれしかったよ」
もう、いいだろう。ケンは振り返り、ムカイの肩をたたいた。ムカイはうなずき、ダイスケを立たせる。
「待てよケン!」
涙に濡れた顔で、去ろうとするケンを呼び止めるシュウ。立ち止まったケンの横を、ムカイがダイスケを連れて出て行く。
二人きりになった。
「ダイスケさんのこと、殺すんだろ?」
泣き顔のまま、当然のことのように訊くシュウ。所詮は一般人のダイスケとは釣りあわないと、なぜ気づけないのか。
「まだ、分からねえ」
その場に突っ立ったまま、ケンは答える。
「頼む、殺さないでくれ。店にスパイとして潜りこんでたのは確かでも、デカいことはやってないんだろ? 頼むよ、ダイスケさんを殺さないでくれよ!」
泣きながらケンにすがりつき、必死に頼む。なぜ、自分を騙した男の命乞いをするのか。分からない。
「俺らが殺さなくても、消されるかも知れねえぞ」
シュウの泣き顔を見下ろしながら、ケンは半分呆然として言った。
さっきのダイスケのように、シュウからあんなに優しく抱きしめられたことが、これまであっただろうか。あんなふうにお互いを優しく気遣いあったことは?
あるわけがない、と内心即答する。本心は隠し、時には乱暴に抱いてきた。優しく接して欲しければ、相手にもそうしなければならない。簡単なことだ。
世の中、身体の繋がりだけじゃないですから、とダイスケは言った。悔しいが、その通りらしい。あんなに幸せそうなシュウは見たことがない。
0
あなたにおすすめの小説
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~
上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。
ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。
「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」
そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。
完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか?
初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる