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「なんでしょうか」
ケンはゆっくりと箸を置き、ササキに応じた。
「我々は君の傘下に入りたい」
一瞬聞き違いかと思い、ケンは遠慮のない視線でササキを見つめた。後ろの幹部らしき男の表情が、苦しげに歪む。
「どういうことです?」
にわかには信じられない。慎重に確かめなければ。ケンは脇腹を流れ落ちる汗を感じながら、膝の上に置いた拳を握りしめた。
「今回のことは、シマを広げたいと欲に目がくらんだ部下がしでかした。その落とし前をつけたい」
視界の隅でいきなり動いたものに、ケンは驚いて目を向けた。後ろの部下達もとっさに身構える。しかし次の瞬間ケン達が見たのは、テーブルの脇に飛び出してじゅうたんの上に土下座する男の姿だった。
「若頭のハヤシと申します、すべては俺がオヤジに黙ってやったことです! 本当に申し訳ありませんでした!」
土下座しているのと声が大きすぎるのとで、ようやく言葉の意味が取れるほどの声を出すハヤシに呆然としかけて、ケンは気を引き締めた。ササキが言うことが本当であればなおさら、ケンの仕草のいちいちを、ササキは注意深く観察しているはずだ。
「そういうことだ」
ササキはうっすら笑みを浮かべてケンを見た。
「ハヤシさん、頭を上げな。どういうことなのか詳しく聞かせてくれ」
ちらりとササキを見ると、ササキはまっすぐにケンを見ていた。笑みを深めてうなずく。
まだだ。まだ信じられない。確かに今回組織は多少のダメージを受けた。シュウも撃たれた。だがそのダメージに対して、傘下に入るというのはあまりに話が大きすぎ、落とし前としては見あわない。そう思う。
「ちゃんと時系列通りに詳しく話せよ」
背後からかけられた声にうなずき、ハヤシはじゅうたんに手をついたまま話し始めた。
ケンはゆっくりと箸を置き、ササキに応じた。
「我々は君の傘下に入りたい」
一瞬聞き違いかと思い、ケンは遠慮のない視線でササキを見つめた。後ろの幹部らしき男の表情が、苦しげに歪む。
「どういうことです?」
にわかには信じられない。慎重に確かめなければ。ケンは脇腹を流れ落ちる汗を感じながら、膝の上に置いた拳を握りしめた。
「今回のことは、シマを広げたいと欲に目がくらんだ部下がしでかした。その落とし前をつけたい」
視界の隅でいきなり動いたものに、ケンは驚いて目を向けた。後ろの部下達もとっさに身構える。しかし次の瞬間ケン達が見たのは、テーブルの脇に飛び出してじゅうたんの上に土下座する男の姿だった。
「若頭のハヤシと申します、すべては俺がオヤジに黙ってやったことです! 本当に申し訳ありませんでした!」
土下座しているのと声が大きすぎるのとで、ようやく言葉の意味が取れるほどの声を出すハヤシに呆然としかけて、ケンは気を引き締めた。ササキが言うことが本当であればなおさら、ケンの仕草のいちいちを、ササキは注意深く観察しているはずだ。
「そういうことだ」
ササキはうっすら笑みを浮かべてケンを見た。
「ハヤシさん、頭を上げな。どういうことなのか詳しく聞かせてくれ」
ちらりとササキを見ると、ササキはまっすぐにケンを見ていた。笑みを深めてうなずく。
まだだ。まだ信じられない。確かに今回組織は多少のダメージを受けた。シュウも撃たれた。だがそのダメージに対して、傘下に入るというのはあまりに話が大きすぎ、落とし前としては見あわない。そう思う。
「ちゃんと時系列通りに詳しく話せよ」
背後からかけられた声にうなずき、ハヤシはじゅうたんに手をついたまま話し始めた。
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