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第3話 告白
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新居に引越し、何となく互いの生活リズムが掴めてきた。
沢城さんは俺が学校から帰る頃には家にいることが多く、必ず新聞か本を読んでいる。母も仕事場から定時には引き上げてくるので夕食は三人で作り一緒に食べることができた。
会話はまだ少しぎこちないが苦ではないし、寧ろ楽しいというのが本音だ。
最近では俺の目を気にせず女性二人でイチャついている様子をよく見る。俺も特に嫌悪感を抱くことはないが見ていて恥ずかしいし、むず痒い。
そんな微笑ましいお試し期間が始まって早三週間が経過し、季節は梅雨真っ盛りだ。
連日の雨が鬱陶しく、やる気を削いでゆく午後の教室では出会って間もない友人と他愛もない会話で盛り上がる。
くだらない馬鹿話や他クラスの恋愛事情、噂話などに時間を割く昼休みに友人の一人が家族の話を持ち出した。と言っても、母親がしつこく説教してくるとかのよくある愚痴話だ。
だが、想定外のことが起きた。突然、「鳳のところはどうなんだ?」と話を振ってきた。
俺は動揺してしまった。何故ならこれまで高校の友人に家族の話をしてこなかったからだ。俺には親が同性愛者だという事実を他人に告白する勇気がなかった。そして、どこかで後ろめたく思っていたのだろう。もし、告白してその事実に拒絶反応を示す友人がいたらきっと俺から距離を取るだろう。友人を失うのが怖かった。まだ隣に同性愛者が当たり前にいる世界が許容されていないから。
理解ある者だとわかるまではたとえ友人であろうと家族の話ができないでいる俺は弱い人間だと自己嫌悪してしまう。
俺は話題を他の方向に強引に逸らし、その場をやり過ごした。
放課後になり、各々が部活や帰宅する中俺は図書室にいた。放課後の本の貸し出しは図書委員の俺の仕事だった。
そしてもう一人の図書委員が俺の隣に座りいつも読書をしているクラスメイトの女子、小野寺沙耶だ。普段から寡黙で教室でも目立つことはなく、やはり読書をしている。いわゆる文学女子であった。
俺も教室では話すことは滅多にないが、放課後の図書委員の仕事の際に一緒になると本の話題でよく会話が弾んだ。
薄暗い図書室で静寂の中、今日も俺は彼女に話しかける。
「今日は何の本読んでるの?」
「好きな作家の新刊よ」
「そうなんだ」
「所で、気になったのだけれど、今日の昼休みどうしてあんなに動揺していたの?」
「な、何で分かったの? さては小野寺さん盗み聞きしてたの?」
「いいから、質問に答えて」
彼女の冷たい視線が刺さる。
放課後に本を借りに来たり勉強に使用するような殊勝な生徒は稀で放課後は二人の時間が長い。
俺はこの二人だけの空間なら自分の家族の話をしても誰にも知られることはないと踏んだ。小野寺さんを除いては。
「誰にも言わない?」
「私、そんなに信用ならない人間かしら。まあ、出会って一か月やそこらの人なんてそんなものかしらね」
「大分複雑な話で人によっては理解されない事だから」
「口は堅いほうよ。私話すような友達いないし」
噓ではない。彼女に話しかける人間はクラスにはいないのが現実だ。友達の影も見えない。
「わかった。話すよ」
俺は、ここ最近の自分の身に起こった家族事情を洗いざらい話した。
小野寺さんは静かに頷きながら聞いていた。
話し終わったころには下校時間になっていた。チャイムが虚しく終わりの時間を告げる。
「なるほど。大体の事情はわかったわ。一言ではとても形容しがたいことね」
「どう思った?」
「それは後にしましょう。もう帰る時間だわ。だから、その、連絡先を交換しましょう」
「え、なんで?」
「察しが悪いわね。連絡先を交換すればいつでも二人で話せるわ。そうすればあなたの捌け口ができると思うのだけれど」
「分かった。ありがとう」
連絡先を交換した後俺達はすぐに下校した。
沢城さんは俺が学校から帰る頃には家にいることが多く、必ず新聞か本を読んでいる。母も仕事場から定時には引き上げてくるので夕食は三人で作り一緒に食べることができた。
会話はまだ少しぎこちないが苦ではないし、寧ろ楽しいというのが本音だ。
最近では俺の目を気にせず女性二人でイチャついている様子をよく見る。俺も特に嫌悪感を抱くことはないが見ていて恥ずかしいし、むず痒い。
そんな微笑ましいお試し期間が始まって早三週間が経過し、季節は梅雨真っ盛りだ。
連日の雨が鬱陶しく、やる気を削いでゆく午後の教室では出会って間もない友人と他愛もない会話で盛り上がる。
くだらない馬鹿話や他クラスの恋愛事情、噂話などに時間を割く昼休みに友人の一人が家族の話を持ち出した。と言っても、母親がしつこく説教してくるとかのよくある愚痴話だ。
だが、想定外のことが起きた。突然、「鳳のところはどうなんだ?」と話を振ってきた。
俺は動揺してしまった。何故ならこれまで高校の友人に家族の話をしてこなかったからだ。俺には親が同性愛者だという事実を他人に告白する勇気がなかった。そして、どこかで後ろめたく思っていたのだろう。もし、告白してその事実に拒絶反応を示す友人がいたらきっと俺から距離を取るだろう。友人を失うのが怖かった。まだ隣に同性愛者が当たり前にいる世界が許容されていないから。
理解ある者だとわかるまではたとえ友人であろうと家族の話ができないでいる俺は弱い人間だと自己嫌悪してしまう。
俺は話題を他の方向に強引に逸らし、その場をやり過ごした。
放課後になり、各々が部活や帰宅する中俺は図書室にいた。放課後の本の貸し出しは図書委員の俺の仕事だった。
そしてもう一人の図書委員が俺の隣に座りいつも読書をしているクラスメイトの女子、小野寺沙耶だ。普段から寡黙で教室でも目立つことはなく、やはり読書をしている。いわゆる文学女子であった。
俺も教室では話すことは滅多にないが、放課後の図書委員の仕事の際に一緒になると本の話題でよく会話が弾んだ。
薄暗い図書室で静寂の中、今日も俺は彼女に話しかける。
「今日は何の本読んでるの?」
「好きな作家の新刊よ」
「そうなんだ」
「所で、気になったのだけれど、今日の昼休みどうしてあんなに動揺していたの?」
「な、何で分かったの? さては小野寺さん盗み聞きしてたの?」
「いいから、質問に答えて」
彼女の冷たい視線が刺さる。
放課後に本を借りに来たり勉強に使用するような殊勝な生徒は稀で放課後は二人の時間が長い。
俺はこの二人だけの空間なら自分の家族の話をしても誰にも知られることはないと踏んだ。小野寺さんを除いては。
「誰にも言わない?」
「私、そんなに信用ならない人間かしら。まあ、出会って一か月やそこらの人なんてそんなものかしらね」
「大分複雑な話で人によっては理解されない事だから」
「口は堅いほうよ。私話すような友達いないし」
噓ではない。彼女に話しかける人間はクラスにはいないのが現実だ。友達の影も見えない。
「わかった。話すよ」
俺は、ここ最近の自分の身に起こった家族事情を洗いざらい話した。
小野寺さんは静かに頷きながら聞いていた。
話し終わったころには下校時間になっていた。チャイムが虚しく終わりの時間を告げる。
「なるほど。大体の事情はわかったわ。一言ではとても形容しがたいことね」
「どう思った?」
「それは後にしましょう。もう帰る時間だわ。だから、その、連絡先を交換しましょう」
「え、なんで?」
「察しが悪いわね。連絡先を交換すればいつでも二人で話せるわ。そうすればあなたの捌け口ができると思うのだけれど」
「分かった。ありがとう」
連絡先を交換した後俺達はすぐに下校した。
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