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第6章 少年期〜青年期 学園6学年編
34話 “学園祭“・・・気合を入れて・・・
「もう、どいうこと!?何か言いたい事があるんなら、ハッキリ言ってよ!」
「「「「「・・・いえ、何もないです」」」」」 『『『『『何でもないです』』』』』
去って行った王女殿下を見送っていると、皆んなが何か言いたげな顔でコソコソと囁きあっていたので、自分に言いたい事があるなら言って欲しいと言っても、結局は何も言わずに終わってしまって、僕はなんかモヤモヤしました。
「むぅ・・・はぁ、まぁ良いや、それより早く行こう・・・時間が少し押してる・・・」
皆んな「「「「「はい」」」」」
皆んなに視線を逸らされてしまい、モヤモヤを残しつつも、今は開店準備の為に急いで食堂に向かった、食堂に入るとすでに登校していたクラスメイト達と挨拶を交わし、休憩所で汚れても良いように、学生服の上着から学生専用のコック服に着替えて厨房に入ると、先に学園に到着していたヘリー姉様が食堂に来ていて、全員が揃うのを待っていた。
ヘリー姉様「皆さん、揃いましたね?では、今日の予定を確認します。・・・今日は“学園祭の最終日“、例年通り本日は王族の皆様方がご来園なさる日ですが、他にも、公爵家や侯爵家、辺境伯家などの高位の貴族家や他国の王侯貴族の方々が訪れる日となっています。
その大半がココ、Aクラスの出し物に来られる予定となっており、一部予約制をとっていますので、その際の対応にはくれぐれも気をつけて、慎重に当たってください。
事前にご予約を受け付けて、時間帯は大まかに決めていますが、お越しになられる時間は多少前後すると思われますので、慌てずその場その場で臨機応変に対応し、円滑に進めていきましょう。
それと、皆さんの中でお身内が来られる方は、予定通りその方が基本的な接客をお願いします。
・・・では、皆さん、“最終日“、これまで以上に気合いを入れていきましょう!」
クラスメイト全員「「「「「はいっ!!」」」」」
そうして、“学園祭“の最後の1日を、皆んなでより良い思い出とするために、全員が気合いを一つ入れて、準備万端で大勢の招待客が来るのを待ち構えた・・・
・・・その頃の“大樹・精霊樹の枝葉“にいる精霊達・・・
第三者 視点
ルスリヒト『はぁ~・・・今日は“学園祭の最終日“か・・・アトリーは今何をしているのだろうなぁ・・・』
オルクリタチェーニ『そうねぇ、アトリーくんは料理担当って言ってたから、今頃は頑張ってお客さんに出す料理を作ってるんじゃないかしら?』
ホオフラム『アトリーくんの作る料理はかなり美味しいらしいから、かなり人気なんじゃなかなぁ~・・・』
ゲイルリヤーフ『あの子、歌もうまくて料理も上手とか、どこ目指してんだろうねぇ・・・』
ネロロゼ『あら、アトリーくんは踊りも上手いわよぉ?』
ゲイルリヤーフ『へぇ、いつも思ってたけど多才だねぇ~』
こんな気の抜けた会話をしながら、大樹の周囲を漂う精霊王5人、こう見えても絶賛警戒体制中なのだ・・・多分・・・
グラースヴリズン『・・・はぁ、また気の抜ける会話をしてるわね、あの5人・・・』
グロムゾンギ『まだ三日しか経っておらぬのに、早々に飽きてきておるのぉ・・・』
グラースヴリズン『たった三日なのにね、と言うか、この三日目が1番重要なのにもっと気を引き締めくれないかしら』
ナバートフィト『そうねぇ、でも、これまで、何も不審な動きをする人がいなかったから、飽きてしまうのも分かるわ、いつもならこんな長く一つの所にいる事がない人たちですもの・・・』
グラースヴリズン『それはそうだけど、せめて最後の日の今日ぐらいまでは、もっと真面目に警戒体制を続けてくれてもいいと思わない?』
ナバートフィト『まぁ、それはそうねぇ・・・』
大樹の周囲で浮かんで漂っている5人とは対照的に、地上で大樹に寄り添いながら、周囲の警戒している他4人の精霊王達の1人であるグラースヴリズンは、上でだらけている精霊王達を見ながら溜め息を吐きつつ呆れていた。
そんなグラースヴリズンの言葉に同意しつつも、どうしようもないと首を振るグロムゾンギ。
だがまぁ、そもそも、この7人の精霊王達は自身の役目やそれぞれの性質上、1つの所に長く留まったりする事がないため、このように三日連続して、大樹の周囲を警戒している事自体が異常であると、ナバートフィトがグラースヴリズンを宥めるが、その影響か、大樹周辺は自然が生き生きとし、大樹があるムーグラーフ領全体で作物がたくさん美味しく実り出している、そんな周囲の環境に目を向けながら、ここを離れる事がないのはそれだけ重要な役目があるからで、その役目をもっと真面目に果たして欲しいと思ってしまうのは仕方がない事だろうと、グラースヴリズンが愚痴っいていると・・・
フムスタール『・・・むっ!!??』
グロムゾンギ『!どうしたのじゃ?フムス?』
ここ数日、目を瞑ったまま微動だにせず、あまり話すこともなかったフムスタールが急に目を見開き、声をあげて立ち上がった事に、近くにいたグロムゾンギが驚き、声をかけると、
フムスタール『・・・地中から怪しい微かな振動を感知した、何者かが地中を移動しているようだ』
全員『『『『『!!??』』』』』
フムスタールが今までずっと真面目に自身の能力を使って、周囲の警戒していた事を知っていた精霊王達は、グロムゾンギの声で急に動き始めた彼に気づき、すぐに視線をそちらに向けて注目していると、地中の僅かな異変を感じたと淡々と報告されて、その言葉に全員が驚き、瞬時に気を引き締め警戒した表情になった。
ルスリヒト『襲撃者か?』
先程までのゆるい雰囲気から一変して、険しい表情でその異変の原因を聞いてくるルスリヒトに、
フムスタール『分からぬ、ただ、地中を掘り、動いている、今、他の者に確認に行かせた』
と、何かが地中にいるのは確信しているが、それが何者かまでは特定できてはない様子で、その詳しい情報を得る為に自分の眷属を向かわせたと、冷静な表情で言うフムスタール。
ルスリヒト『・・・そうか、何か分かったらすぐに教えてくれ』
フムスタール『承知した・・・』
ルスリヒトは急かすでもなく、冷静に対処しているフムスタールの言葉を信じ、彼の眷属の報告を待つ事にした。
ルスリヒト『・・・ついに始まったのか・・・』
こうして、ルスリヒトはこれから、大変な事が起ころうとしている予感と同時に、ここから離れた場所にいる大事な愛し子のアトリーに、何か起こるのではないかと言う嫌な予感も感じて、アトリーがいるであろう方向の空を不安な気持ちで見上げるのだった・・・
・・・精霊達がほんの僅かに異変を感じていた同時刻、学園周辺と学園内では、“学園祭の最終日“が始まった・・・・・
第三者 視点
時刻は午前9頃、招待客の学園入場が始まり出し、学園内に自国や他国の王侯貴族、一般市民などが一斉に入ってきて、一気に学園内が賑わっている。
そんな中に、アトリー達の家族や身内達が乗った馬車も、学園の正面入り口の渋滞に遭っていた。
父:アイオラト「アトリーから知らせを受けて予定より少し早く屋敷を出たけど、これはもっと早めに出てもよかったな・・・」
母:シトリス「そうね。歩道の方も例年以上に人で溢れかえっているわ・・・」
祖母:アメトリア「これはやはり、アトリーの出店したお店の影響なのよね?」
祖父:インディ「あぁ、想定していたよりかなり人が多いが、間違いなくアトリーの店やアトリー自身を目的に来ている者達が多いだろうな。それに今日は最終日だからな、他国の王族達も来るとあって、他国との繋がりを持ちたい貴族家も殺到しているようだからな、馬車が多すぎて渋滞が例年より酷いようだ・・・」
と、外の賑わいを見ながら渋滞対策の為、いつもは一緒に乗る事がない組み合わせの2組の夫婦が一つの馬車内で現状の考察をしていた。他にもこの馬車の後ろに続いて来ている身内の馬車内でも、この賑わいを見て同じような会話がなされているのだが、彼らが今、本当に思っている事は“学園祭“が始まる数週間前に、聖獣経由で神々からの伝言を受け取り、そこで知り得た情報から、アトリーを狙うものが何かを起こす可能性が高いと知り、その情報が頭の片隅から離れず、一刻も早く自分達の可愛い子供達の所に行きたくて仕方ない衝動を押し殺しているのだ。
そんな心内をそれぞれが互いにわかっているので、無闇に自分の感情を表に出し騒ぐこともなく、静かに入場できる順番を待っていると・・・
インディ「む?・・・あれは王城の騎士?何故騎士達だけでこのような所に?・・・」
アイオラト「・・・王族の馬車は近くにないようです・・・」
デューキス家の馬車の横を馬に乗った王城勤務の騎士達が複数人通り過ぎて行き、それに気づいたアトリーの祖父インディが不思議そうな表情で窓の外を見ると、同じようにそれに気づいたアトリーの父アイオラトは窓から周囲を見渡し、その騎士達が1番守るべき対象である王族の乗る馬車を探してみたが、そのような馬車が見当たらず、騎士達が何の目的でここに来たのか全く予想もついてないようだ。
通常、王城勤務の騎士達は王城内で王城全体の治安維持のため警備をすることが仕事であるが、本来の仕事は王族の安全を確保することで、王族が城外に視察などで出る時はそれについて行き、城内と同じように周辺の警備をしたりもするので、その一環かと思われたが、どうもそのような様子もなかった。
なのでその通常とは異なる王城騎士達の行動に、周囲の馬車の人達も気づいたのか、馬車の窓から外の様子を伺っている人達が続出し、ちょっとした騒ぎになりそうになっていると・・・
騎士「失礼!そちらの馬車はデューキス公爵家のものとお見受けする!ご当主殿にお目どおり願いたいので、しばしの間、止まっていただけないだろうか!?」
と、急に先程横を通っていた騎士達とは別の騎士が、この馬車の馭者台の真横に来て、馭者をしているアイオラトの専属従者兼執事のカイルに、そう声を掛けてきた、その声は中にも届いていたので何の用だ?と怪訝そうな表情をしているアイオラトに、馭者台の方にある小窓から馭者のカイルが顔を覗かせながら、どうしますか?と聞いてきた。
アイオラト「要件を聞こう」
カイル「は、畏まりました」
その後、カイルが当主が要件を聞くと伝えると、その騎士はアイオラト達が乗る馬車の扉前まで移動して来た。
騎士「お目どおり感謝いたします、公爵閣下、急ぎの伝言を陛下より預かっておりますので、馬上から失礼させていただきます」
そう言いながら馬に乗ったまま馬車の窓から声をかけて来たので、アイオラトも正規の形式を省き、馬車の窓を開いて対応することにした。
アイオラト「構わない、よほど急ぎの伝言のようだな、それで、陛下はなんと?」
騎士「はっ、陛下からの伝言をお伝えさせていただきます!」
異例の声掛けによほどの理由があると察したアイオラトは、すぐに伝言を聞くために、まどろっこしいやり取りをせずに騎士に要件を聞いた。
すると、その陛下からの伝言というものが、どうやら、今起こっている渋滞に関しての事のようで、現在、周囲に現れた騎士達を使い、渋滞の整理を行う事と、その際に伯爵家以下の貴族家達より先に、他国の王族や高位貴族達を優先的に学園内に誘導するので、その流れにデューキス家の馬車もついて来るようにという伝言だった。そう言う伝言を聞いている間にも、周囲の馬車全てに似たような説明が行われているのか、徐々に馬車の列が整理されてきた。
その様子を見ていたアイオラトはその伝言に願ってもない提案だと言い、「陛下のご指示に従います。と返しておいてくれ」と騎士に伝言を頼み少し待っていると、二車線ある内の追い越し車線側が空いてきて、そこに特定の馬車だけが騎士達に誘導されて次々学園の正面入り口の門を通過していく。
側から見ればこの交通整理が王族の傲慢な職権濫用だと思われるだろうが、この渋滞の中で他国の王族や高位貴族が乗った馬車が、ずっと身動きが取れない状態になっているのは、安全上とても好ましい状況とは言えない、万が一のことを考えると国際問題になりかねないので、この思い切った方法でそれを解消したこの国の王は賞賛されるべき事である、それと同時に、この情報を伝えるために、騎士の一人一人が乗車している人達の顔や身元を確認し、不審な行動をとってないことも確認できたので、学園の正面入り口で一台ずつ行っていた身元確認も一度に済ませる事もできて、門を閉めてまで足止めする事もなくスムーズに馬車の通過が始まったことで、混乱を極めていた渋滞も一気に解消し、その後も馬車での入場がスムーズに行われた。
アイオラト「・・・陛下のおかげでやっと学園内に入れた、これで、予約の時間に間に合いそうですね」
インディ「あぁ、そうだな。アトリーが首を長くして待っているやもしれん、・・・さて、場所はどこだったかな?」
と、やっと馬車から降りられて身内全員が勢揃いしていると、周囲の王国貴族達からかなりの注目の視線が集まっていた。そんな事などお構いなしに全員が和気藹々と会話しながらアトリーのいる食堂に向かって歩き始める様子は、彼らを囲む周囲の警護の騎士達の多さもあってか、どこぞの王族の視察かと勘違いしている人もいたぐらいだった。
シトリス「ふふっ、家族皆んなでこのような事をするのは、何か楽しいものがありますわね、ラト♪」
アイオラト「あぁ、そうだねシリー」
と、楽しくイチャつきながら、徐々にアトリーの元に近づいて行く両親や身内達の様子を物陰から伺う怪しい人物の事を、この時、誰も気づいていなかった・・・
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