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第3章 少年期 学園編
207話 侵入者 第三者 視点
しおりを挟む母様「いやーーっ!!!アトリーー!やめて!!だめよ、だめっ!!こっちを見て!!目を開けて!!アトリー!アトリー!?」
父様「アトリーーーっ!!くっ!!今行く!!今行くから、目を開けるんだっ!!」
天華『アトリー!気をしっかり持って!』夜月『寝てはダメだ!アトリー!』ジュール『アトリー!アトリー!すぐに助けるよ!寝ちゃダメ!』
(遠くで、皆んなの声が聞こえる・・・あぁ、僕はまた、死ぬのかな?あの時みたいに、・・・あの時?何だっけ?・・・・分からないや・・・・寒いな・・・何も聞こえなくなって来た・・・死ぬのはやっぱり寂しいな・・・・・)
思考が暗い何かに沈み込む感覚、何かを思い出そうとしてけど、自分の感情さえも希薄になって、それが以前にも感じた死の予感?、こんな体験、何度も味わいたくないな・・・・
第三者 視点
時は少し遡り“勇者送還の儀式“が無事終わろうとしていた頃、とある部屋の中で異変が生じていた・・・・
その部屋は神罰を受けたズューウス王国の罪人達を一時的に入れておくために、神殿側が抜け出すことができないような構造の部屋を提供しており、その周りを神殿騎士と国の軍関係者達が脱走監視のため警備巡回していた。その部屋の入り口前に立って監視していた神殿騎士達が、室内からただ事ではない声を聞き、中を覗いたことで今回の大事件が始まったのだった・・・・
「あぐっ!!」ガタンッ!「な、なんでだぁーーー!!」ガタッ!ドタドタッ!「キャァーーッ!!」「わぁーーっ!!嘘だろ⁉︎」「ひぃっ!だ、誰か!助けてっ!!」バタンッ!ガシャンッ!!
神殿騎士達「「!?」」
(!?なんだ?さっき静かになったと思ったのに、また騒ぎ出した?)
扉の両側に1人ずつ立って警備をしていた神殿騎士達は中の様子がおかしいことに気づき、互いに顔を見て、扉を開ける役と中に入って様子を見る役を即座に決め、そして息を合わせて片方が扉を開けるともう片方が武器を構えて中に入っていった。
バンッ!
神殿騎士1「何を騒いでる!、っ⁉︎な、何!?な、何者だお前達!!」
中に入ってまず目に止まったのは、散乱した調度品達の真ん中に背中から血を流して倒れている罪人の1人、その周りに明らかに異質な風貌の黒いローブを身に纏った数人の人間、他の罪人達は部屋の隅で怯えるように固まっている。それよりどう見ても、先程入れられた罪人ではない人間達が増えていて、その人達がどこから来たのか分からず混乱していた。
それもそうだ、この部屋は反省室と言って、神殿内での規則を破った神官見習いや神官達の反省を促すための部屋で、中でちゃんと反省できるまで出さないようにする為、外から鍵が掛けられるようになっており、入り口も今、神殿騎士が入った扉だけ、中はある程度広く、窓はあっても到底手の届くような場所ではない、そもそも人が出入りできるほど大きくもない。そんな室内に得体の知れない人間が出現したのだ。
神殿騎士2「どうした⁉︎…なっ!誰だ!?はっ!侵入者か?…侵入者ーーーっ!!」
異変を察したもう1人の神殿騎士が後ろから室内を覗き込み、すぐに、侵入者だと断定し、周囲の騎士や軍人達に知らせるために大声で叫んだ。その叫び声を聞きつけた他の警備達が近寄ってくる気配を感じながらも、侵入者を発見した神殿騎士達はすぐに戦闘体制を取り、黒ローブの侵入者達に対峙した。
神殿騎士1「お前達何者だ!どこから入って来た!」
そう問われても何も言葉を発さない黒ローブ達、人数は5人、黙ってこちらをジッと見つめている。
神殿騎士2「くっ!そこの罪人達!お前達がコイツらを引き入れてのか!?」
罪人達「「ひっ!」」「そ、そんな事してない!」「わ、分からない!」
黙ったまま、喋らない黒ローブ達では埒があかないと判断し、最初から中にいた罪人達に聞いてみたが怯えて有用な証言が出てこない。
(ちっ!役に立たない!)
細身の罪人「きゅ、急にそいつから・・・ぐっ!?あ、背中が!う"う"っ!あがっ!あ"あ"あ"あ"ぁーーーー!!」ジュゥーーーッ!!
こっちは役に立たないな、と思ったとき、1人の細身の眼鏡をかけた罪人が、部屋の中央で倒れている男を指差しながら何か話そうとした。その時急に背中に痛みを感じたのか背中を押さえながら苦しみ出した。そのうちその罪人の背中が赤黒く光だし、それが何かの模様をしていて、その部分の布だけが焼印を押されたような焼ける音と共に焦げ始め、焼け落ちた。
バタバタッ!ガシャンッ!バタンッ!ガタガタッ!
神殿騎士1「な、何だ!?」 神殿騎士2「あ、あの模様は⁉︎」
ガシャガシャガシャッ!
軍人「侵入者はどこだ⁉︎・・・!、何があった⁉︎」
痛みからその場で暴れ回る罪人、その様子を黒ローブ達は黙って見つめて、他の罪人達はさらに怯え荒い息をさせなが目を逸らしていた。暴れる罪人の背中が丸見えになったと共に浮き出た見覚えのある模様、どこかで見たことがあると思っていると、後ろから数人の応援が到着した。
細身の罪人「だ、だすげて、ぐれぇぇ・・・・・」バタッ
神殿騎士達「「っ!」」軍人1「し、死んだのか?」
ポゥ・ピカッ! シュッ!シュシュシュシュッ! ガタガタガタッ!
神殿騎士&軍人達「「「「「なっ!?」」」」」
暴れ回っていた罪人が最後に掠れた声で助けを求めたと思ったら、急に倒れ込み干からびるように絶命した。その次の瞬間、背中の模様が先程より強く赤黒く光り、どこからともなく人間が5人現れた。
神殿騎士2「!、あれは“テレポートの魔法陣“か!!」
神殿騎士&軍人達「「「「「!!」」」」」
軍人1「くそっ!えげつねぇ、罪人達を“テレポートの魔力元“兼、“座標“扱いにしてんのか!!もっと応援を呼べ!陛下に報告を急げ!!」
軍人2「はっ!!」
こうして、次々と罪人達を利用した転移魔法で増えていく襲撃者との戦いが、礼拝堂内にいる人達を巻き込むことになった・・・・・
この騒動が起こった頃、先程まで美しい歌と舞を披露していた、この国の公爵家の三男であり、複数の神々から加護を受けた、“神々の愛し子“であるアメトリン・ノブル・デューキスが、何者かに背後から剣で刺されるという事件が発生していた。
「お前は何故そこにいる!?」「何故だ!何故そんな事を!!」「誰か早くここの結界を止めるんだ!!」「報告!!反省室に侵入者!」「なっ!?侵入者だと!?」「どこから来た⁉︎」「突然現れました!」「くそっ!賓客を守れーっ!」「神官達はこの結界の解除を急げ!」「早く“愛し子様“を助け出すのだ!」「無理です!“儀式“とは別の結界が張られています!」「ならここからでも良い、治療魔法を早くかけるんだ!」「すでにしてます!ですが結界が強固で届きません!魔法発動を阻まれてます!!」
背中から刺された彼が倒れ、親族や周囲の大人達が助けようとしているが、“儀式“の時とは別の結界に阻まれ、近づこことができない。
ガンガンッ!ガキンッ! ダンッ!ダンッ!
シトリス「いやーーっ!!!アトリーー!やめて!!だめよ、だめっ!!こっちを見て!!目を開けて!!アトリー!アトリー!?」
アイオラト「アトリーーーっ!!くっ!!今行く!!今行くから、目を開けるんだっ!!」ガンッ!
そうなんども叫びながら呼びかけても、自分たちの可愛い末の我が子は、血溜まりに倒れたままゆっくりと瞼を閉じた後、とうとう動かなくなった。
シトリス「・・・あ、あ、ああぁーーーっ!!アトリーー!」
アイオラト「シトリスっ!…」ギリッ!
動かなくなった可愛い末の子を見て、アメトリンの母親であるシトリスは我が子の生存に絶望を感じ泣きくずれた。そのシトリスを咄嗟に支え、悔しさに顔を顰めさせながら我が子を刺した襲撃者を睨み歯を食いしばる、父親のアイオラト。他の家族も涙を流し、倒れて動かなくなったアメトリンを見つめたり、さっきを帯びた瞳を襲撃者に向けていた。
礼拝堂内の人達もアメトリンの死を悟り、痛ましい表情や怒りを帯びた表情で、彼と襲撃者を静かに見つめている。魔法陣の周囲は襲撃者を捉えようと王国の騎士達の包囲網が出来上がり、ジリジリと機会を伺い、神殿騎士達は報告にあった侵入者に備え、要人達の護衛や礼拝堂の入り口の警戒をしている。そんな状況で襲撃者は高笑いを続けていた。
?「ははははははっ!・・・ん?何だもう終わりなのか?もっと、楽しもうと思ったのだが…、まぁ、しょうがない、少し回復させるか、そして、約束通りお前の死での旅の共に家族を連れて行くのを見せてやるよ。ふふふっ、喜べ!」
「「「「「!?」」」」」「「「何っ!?」」」
サフィアス王「・・・そなた、何故そんなことをする?そして彼とその家族をどうするつもりだ?」
誰もが襲撃者の言動に驚いている中、この国の国王がその襲撃者に冷静にそう問うた。
?「何故?我が何をしようとも貴様らのような“人間“に関係があるか?どうするだと?それはこれの魂を我が愛でるためにより一層絶望に輝く瞬間を作り出すためだ!まだ、これの魂はここに留まっている、死んではないから少し回復させて、目の前でこれの愛しい者達を殺す、これは悲しみ絶望するだろう、その絶望に染まった表情のまま殺す!・・・その最高の瞬間を作り出すために我は力を惜しまん、ただそれだけだが?」
ザワッ!「「「「「っ!」」」」」「「「なんと、残酷なっ!」」」「「「ひどいっ!」」」
狂気を孕んだ瞳で首を傾げながら、当たり前の事のように残酷な話をする襲撃者、周囲もその狂気に顔を顰めた。
サフィアス王「・・・そなた、それほどまでにアメトリンが憎いか?そなたの身分が剥奪されたのがアメトリンのせいだと思っての復讐か?」
「「「「「!!?」」」」」「「「なっ!」」」「「「ど言う事だ!?」」」
襲撃者の正体を知っているような口振りの国王の言葉に、各国の要人達は驚きの眼差しを向けた。ウェルセメンテ王国側の参加者はすでに襲撃者の正体は知っていたのか、驚きよりも嫌悪感を露わにしており、各国の要人達の中でもズューウス王国の王族達はまた別の驚きの表情のまま固まっていた。
?「はっ、そう言えば、“そんな事もあったようだな“・・・だが、そんな事、今はどうでも良い、我はこれの魂が1番輝くのを見たいだけだ・・・」
サフィアス王「何!?そなた、何者だ⁉︎ズューウスの元第五王子、トルペ・ズューウスではないのか!?」
ザワザワッ!「「「「「ズューウスの王子!?」」」」」
この問題の襲撃者は赤みを帯びた長い金髪に緑色の瞳で、年齢はアメトリンと同年代ぐらい、アメトリンと系統の違う美少年だ。その正体はサフィアス王の言う通り、三年前にアメトリンと揉めて、王族の身分を剥奪されたズューウス王国の元第五王子、トルペ・ズューウスだった。彼は身分を剥奪され、王族の証であるミドルネームの“レ“をとり、平民として王都から少し離れた街で幽閉されているはず、今回の“勇者送還の儀式“でも王族の身分はなかったので、“謝罪の儀“にも招待される事もなく、入国すらしていないはずの人物だ。
そんな人物が突如この神殿に現れ、“儀式“の要である“歌い手“のアメトリンを背中から刺し、意味不明の言動をしている。この異様な状況に彼の兄弟達は困惑して、理解が追いついていない。
周囲はサフィアス王の言葉で彼の正体には驚いたが、サフィアス王の言葉から分かる通り、意味不明な言動を繰り返している彼に違和感を感じ、訝しむ視線が注がれた。その時・・・
ドッカァンッ!!! 「ぐっ!!」「っ、うわぁ!!」 ドサドサッ!
大きな爆発音と共に扉が吹き飛び、数人の軍人達が礼拝堂内に飛び込んできた。
サフィアス王「何事だ!!」
騎士団長「陛下!侵入者が急速に増えて、こちらに来ています!お早くここから退避してください!!」バァンッ!!
騎士団長が簡潔に報告と提案をして来た時、また別の入り口、礼拝堂の正面入り口からも侵入者が突入してきた。今ある全ての入り口から、侵入者達が入ってきて、礼拝堂内は逃げ場がなくなり、礼拝堂内の人達は必然的に礼拝堂の中心部分、“神器“に囲まれた“送還の魔法陣“に集まる形になった、役目を終えた“送還の魔法陣“はすでに消えているが、もう一つの魔法陣にはいまだに結界が張られており、その中の襲撃者にも注意をさきながら侵入者達と対峙する。
騎士総団長「くっ!逃げ場がなくなったか・・・」
侵入者の報告が来て、数分でここまで周りを囲まれたのは、相手が警備の人員より大人数だったわけでは無い。今も他の侵入者は礼拝堂外に配備されている騎士や軍人達に邪魔をされていて、礼拝堂内にいる侵入者の数もたった20人前後だ、だが、それでも逃げ道が無くなったのには理由がある。侵入者のリーダー格と思われる人物の他に、数人の侵入者達が手に持っている異質なオーラを放つ魔道具があったからだ。
どうやらこの魔道具には魔法の発動を阻害する働きがあり、それと同時に身体の動きも鈍くさせるようで、警備として配置されていた鍛え上げた騎士や軍人達でも動きが鈍り、攻撃に鋭さが消えてしまっていた。それに対し侵入者は何故か普通に動けて魔法も使えており、こちらを容赦なく攻撃してくる、なのでその侵入者1人に対して、騎士や軍人達が数人で取り囲まなければ相手を捕まえる事ができないため、侵入者の確保に人が割り裂かれた結果、この礼拝堂まで侵入を許してしまった。
現在は礼拝堂の要人達の安全を第一に考えて、礼拝堂の外の侵入者の確保に回った人員が戻ってくるのを待っている状態だ。
サフィアス王(外の騒ぎがひと段落すれば形勢は逆転するだろうが、こいつらはそんなことを気にしている様子がないな?・・・こちらの戦力が戻ったとしても何か勝算でもあるのか?)
相手のあまりにも余裕のある空気に訝しむサフィアス王。そんな事を思っていると、先程、礼拝堂正面入り口から入って来た、襲撃者のリーダー格と思わしき人物が、礼拝堂内の要人達に興味も持たずに、アメトリンを刺した元王子の元に行くと恭しく頭を下げた。
リーダー格「お待たせいたしました。全知全能なる我が神、“フィズィ様“、貴方様の悲願は達成されたようで何よりでございます」
?「あぁ、捕らえることはできた。だが、まだやりたい事があるがな。その前にお前達の悲願も達成させようではないか」
リーダー格「おぉ!慈悲深きお言葉!ありがとうございます!では、早速準備をいたしますので、暫くお待ちください・・・」
「「「「「!?」」」」」ザワッ!「何をする気だ?」「今、なんと呼んだ?」「第五王子ではないのか?」ザワザワッ「これ以上、何が起こると言うの」「あれは何だ!?」「悲願とはなんだ?」ザワザワッ
リーダー格の男と元王子の会話の中で出てきた名前は、全くもって別の名で呼ばれた元王子、それに何かを今ここで始めるような動き、全て予想外な侵入者達の行動に困惑の声が上がる。
帝国王太子「いい加減にしろ!そなた達!今から何をするつもりだ!?我らに用がないのなら解放しろ!」
すぐさま何か作業をし出した侵入者達、その中で魔道具を持った数人に監視されるだけで、何もして来ない事に痺れを切らした帝国の王太子殿下が、リーダー格の男に向かって叫んだ。
リーダー格「おやおや、そう焦らずとも、今から分かりますよ。あなた方は今からこれまでにない歴史的瞬間に立ち会えるのですから!!」
帝国王太子「歴史的瞬間だと!?」
リーダー格「そう!この世界の神々の破滅の瞬間を見せて差し上げます!!」
「「「「「何っ!?」」」」」ドヨッ!
リーダー格の男が高らかに宣言した言葉に、礼拝堂内に動揺が走った・・・・
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