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セイに治療をお願いする
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辺境では重軽傷者が数多く出続けているため、辺境のことをよく知らないセイに状況を教えることにした。
・騎士が21名、一般兵が236名の計257名が常駐している兵力。
・ただし、うち重軽傷者を除くと
騎士は14名、一般兵が162名まで減ってしまう。
・神官は常駐していないため、回復薬などで治療するか、戦線復帰には数ヶ月を要する。
場合によっては教会がある街に搬送して治療を受けてもらうが、予算不足で治療をうけることすらままならない。
・四肢欠損など戦線に復帰できないようなものは教会に支払う資金がないため基本的に引退。
(騎士1人を1年雇うのに必要な費用は金貨5百枚程度、四肢欠損レベルの治療は金貨1万枚程度必要)
・モンスターを狩って得られた素材をもとに回復薬を仕入れたりしているが足元を見られて思うように回復薬なども得られない。
・王国からの支援増加を求めているが増えるどころか減っている状況。
要するに教会からの支援も得られず、長期の戦線離脱と戦線復帰を繰り返しており何かあって離脱者が増えれば戦線崩壊もあり得る状況。
こんな状況のため、元聖女であるセイに回復魔法で戦線復帰できる人を増やしたいことを伝えた。
「セイ、重傷者の回復をお願いしたいのだが、良いだろうか」
お前がチート持ちかよ。といいたくなるようなセイなら重傷者を一気に治療できるのではないかという思いもあった。
「もちろん大丈夫です。依頼はほとんどありませんが、重傷者の治療も引き受けていました」
そういいながら祈りを始めた。
治療院全体を光が包み込んだあと、光が消えていく。
光が収まり、しばしの静寂後、慌ただしく大声を出しながら走り回る治療院の職員ならびに、治療を受けていた者たち。
いや、まじかよ。
そりゃ、俺なんかしちゃいました系の主人公とかが、いきなり広範囲に治療をかけるようなチートパターンあるけど、セイが広範囲に四肢欠損レベルの重傷者まで癒せるとか、もう、お前が主人公でよくねって感じだ。
「ふぅ、さすがにこれだけの人を一気に治療すると疲れますね」
いや、疲れるで済むのが異常ですよ(思わず心のなかでツッコム)
「聖域を展開したまま、それほどの治癒を行えるのですか?」
聖域を維持するための力も必要なはずなのに、これほどの治癒まで行える。
これで辺境は立て直せる。
「ありがとうセイ、これで辺境の戦力低下は解消した。これまでモンスター討伐は後手に回っていたが守備要員を残しつつ、討って出ることも可能になった。」
これまで貴族や教会の連中は全員滅んでしまえと思っていたが、セイが来てくれたことで、その思いも吹き飛ぶようだ。
むしろ、セイがいなくなったことによる影響は、教会の連中の想定外なのではないか?
そんな考えもでてきた。
「少なくて申し訳ないが、セイには金貨百枚を毎月支払うことにする」
これほどの能力であれば、金貨千枚でも少ないだろう。だが辺境の資金ではとても支払うことができない。
この程度の支払では、さすがに長くセイを辺境に留めることはできないだろう。
そんな私の思いとは裏腹にセイの困惑した様子で答える。
「お金がもらえるのですか?」
ん?
どういうことだ?
いくら教会の中で生活しているとはいえ、さすがにお金はもらっているよな?
「すまないが、教会では、どのくらいもらっていたのだろうか。」
そんな私のセイへの質問に対しての答えは、もらっていないだった。
では、治療の際の費用はまるまる教会の連中が搾取しているのか。
「必要なものを購入するときにお金をもらうということかな?」
恐る恐る聞いてみると、そんなこともないとの回答だった。
セイはお金は一切もらっておらず私物も持っていなかった。
これはブラックとか以前に、子供の頃に引き取って洗脳に近いんじゃないのか?
セイには、これからは自由に買い物などして楽しんでほしい気がする。
辺境には大したものがないが、せめて行商人に女性が好む物を持ってきてもらうようにお願いしておこう。
いまのまま贅沢を知らないほうが都合が良いが、さすがに、そんな鬼畜なことはできないな。
「本来であれば、セイが行っている治療などを考えれば、私が支払う金額の10倍以上もらってもおかしくないだろう。
せっかく教会から離れることができたのだ。自分の価値というものを見直すと良い。」
言わなくても良いようなことも、ついつい言ってしまう。
「辺境にはたいしたものはないが、買い物なども自由に楽しむといい。
聖女服に拘る必要もない、まずは衣服から買うといいだろう。
私の妹に伝えておくので出入りの商人から購入するといい」
元聖女がゲットできたのはいいが、さすがに規格外すぎて、辺境にとどめておくことはできないだろう。
せめて辺境に留まっていてくれる間は、真摯に付き合うことにしよう。
「お金が頂けると知ってすぐにこのようなことを尋ねるのは俗物だと思うのですが、ケーキというものを食べてみたいのですが、金貨百枚で足りるのでしょうか?」
どうやらセイはお金の価値もしらないようだ。
「ケーキは金貨1枚もしない。甘いものをあまり食べてこなかったのであれば、私の方で用意しよう。セイがわざわざ支払う必要はない。」
甘いもので釣るように申し訳ないが、餌付けで、少しでも長く滞在してもらえないかな。
とか思ってしまう私は真摯に対応というものは無理かもしれない。
「申し訳ありません。私は一度でいいから街にでてケーキというものを食べてみたかったのです」
申し訳無さそうに言うセイをみて気づく。
もし逆の立場で、上役が用意して食事とかセッティングされたら気まずくて嫌すぎる。
「いや、こちらこそ気づかず申し訳ない。そういうことであれば案内役を付けるので街を散策するといい。
嫌だろうが、さすがにセイにないかあるとまずいので、護衛も数名付けさせてもらうことになる。」
「えっ?、あ、たしかに辺境伯様が案内されるわけ無いですよね。
申し訳ありません、つい辺境伯様がお優しいので勘違いしてました」
いやいや、セイさんや、そんなことを男に言ったらいけないよ。
いつも挨拶してくれるだけで男は、あいつ、俺のこと好きかもしれないとか妄想しちゃう生き物だぞ。
そして、女性側はまったく意識すらしていないことも知っている。
そう、私は知っているのだ。
「いや、私でよければ喜んでエスコートさせていただこう。当然私がすべて支払うのでお金の心配をする必要はない。私のことは財布とでも思っていてくれたまえ」
いかん、お金の話をここでしても気まずくなるだけなのに、つい軽口ついでに言ってしまった。
「いえ、辺境伯様に案内してくれるだけで大丈夫です。せっかくお金がもらえるということなので、使ってみたいのです。」
ああ、セイはいい子だな。
しかし、こういう優しい子は無自覚に愛想を振りまいて男心を弄ぶのを知っている。知っているぞ私は‼。
いや、でも、少しは好感度上がってないかな?
いやいや、落ち着け。
やはり好感度パラメータのないリアルはハードモードすぎるな。おまけにセーブもできない。
ああ、そうだ。さすがに二人で出歩くのは噂にもなるだろうし、妹にも付き添ってもらうことにするか。
「セイ、私が護衛も兼ねて案内するが、女性が好むお店はあまり詳しくないので、妹にも同行してもらっても良いだろうか?」
「はい、問題ありません。妹さんにまでご足労かけて申し訳ありません。」
よし、これで変な噂が立つこともないだろう。
ただ、計算違いだったのは、このあと妹に付添をお願いしたときの、妹が超怖かったことだ。
二次元のジト目はいいけど、リアルだと怖すぎるね、おにーちゃん泣きそうだよ。
はぁ、妹に付き添ってもらうことにしたのは間違ったな。
・騎士が21名、一般兵が236名の計257名が常駐している兵力。
・ただし、うち重軽傷者を除くと
騎士は14名、一般兵が162名まで減ってしまう。
・神官は常駐していないため、回復薬などで治療するか、戦線復帰には数ヶ月を要する。
場合によっては教会がある街に搬送して治療を受けてもらうが、予算不足で治療をうけることすらままならない。
・四肢欠損など戦線に復帰できないようなものは教会に支払う資金がないため基本的に引退。
(騎士1人を1年雇うのに必要な費用は金貨5百枚程度、四肢欠損レベルの治療は金貨1万枚程度必要)
・モンスターを狩って得られた素材をもとに回復薬を仕入れたりしているが足元を見られて思うように回復薬なども得られない。
・王国からの支援増加を求めているが増えるどころか減っている状況。
要するに教会からの支援も得られず、長期の戦線離脱と戦線復帰を繰り返しており何かあって離脱者が増えれば戦線崩壊もあり得る状況。
こんな状況のため、元聖女であるセイに回復魔法で戦線復帰できる人を増やしたいことを伝えた。
「セイ、重傷者の回復をお願いしたいのだが、良いだろうか」
お前がチート持ちかよ。といいたくなるようなセイなら重傷者を一気に治療できるのではないかという思いもあった。
「もちろん大丈夫です。依頼はほとんどありませんが、重傷者の治療も引き受けていました」
そういいながら祈りを始めた。
治療院全体を光が包み込んだあと、光が消えていく。
光が収まり、しばしの静寂後、慌ただしく大声を出しながら走り回る治療院の職員ならびに、治療を受けていた者たち。
いや、まじかよ。
そりゃ、俺なんかしちゃいました系の主人公とかが、いきなり広範囲に治療をかけるようなチートパターンあるけど、セイが広範囲に四肢欠損レベルの重傷者まで癒せるとか、もう、お前が主人公でよくねって感じだ。
「ふぅ、さすがにこれだけの人を一気に治療すると疲れますね」
いや、疲れるで済むのが異常ですよ(思わず心のなかでツッコム)
「聖域を展開したまま、それほどの治癒を行えるのですか?」
聖域を維持するための力も必要なはずなのに、これほどの治癒まで行える。
これで辺境は立て直せる。
「ありがとうセイ、これで辺境の戦力低下は解消した。これまでモンスター討伐は後手に回っていたが守備要員を残しつつ、討って出ることも可能になった。」
これまで貴族や教会の連中は全員滅んでしまえと思っていたが、セイが来てくれたことで、その思いも吹き飛ぶようだ。
むしろ、セイがいなくなったことによる影響は、教会の連中の想定外なのではないか?
そんな考えもでてきた。
「少なくて申し訳ないが、セイには金貨百枚を毎月支払うことにする」
これほどの能力であれば、金貨千枚でも少ないだろう。だが辺境の資金ではとても支払うことができない。
この程度の支払では、さすがに長くセイを辺境に留めることはできないだろう。
そんな私の思いとは裏腹にセイの困惑した様子で答える。
「お金がもらえるのですか?」
ん?
どういうことだ?
いくら教会の中で生活しているとはいえ、さすがにお金はもらっているよな?
「すまないが、教会では、どのくらいもらっていたのだろうか。」
そんな私のセイへの質問に対しての答えは、もらっていないだった。
では、治療の際の費用はまるまる教会の連中が搾取しているのか。
「必要なものを購入するときにお金をもらうということかな?」
恐る恐る聞いてみると、そんなこともないとの回答だった。
セイはお金は一切もらっておらず私物も持っていなかった。
これはブラックとか以前に、子供の頃に引き取って洗脳に近いんじゃないのか?
セイには、これからは自由に買い物などして楽しんでほしい気がする。
辺境には大したものがないが、せめて行商人に女性が好む物を持ってきてもらうようにお願いしておこう。
いまのまま贅沢を知らないほうが都合が良いが、さすがに、そんな鬼畜なことはできないな。
「本来であれば、セイが行っている治療などを考えれば、私が支払う金額の10倍以上もらってもおかしくないだろう。
せっかく教会から離れることができたのだ。自分の価値というものを見直すと良い。」
言わなくても良いようなことも、ついつい言ってしまう。
「辺境にはたいしたものはないが、買い物なども自由に楽しむといい。
聖女服に拘る必要もない、まずは衣服から買うといいだろう。
私の妹に伝えておくので出入りの商人から購入するといい」
元聖女がゲットできたのはいいが、さすがに規格外すぎて、辺境にとどめておくことはできないだろう。
せめて辺境に留まっていてくれる間は、真摯に付き合うことにしよう。
「お金が頂けると知ってすぐにこのようなことを尋ねるのは俗物だと思うのですが、ケーキというものを食べてみたいのですが、金貨百枚で足りるのでしょうか?」
どうやらセイはお金の価値もしらないようだ。
「ケーキは金貨1枚もしない。甘いものをあまり食べてこなかったのであれば、私の方で用意しよう。セイがわざわざ支払う必要はない。」
甘いもので釣るように申し訳ないが、餌付けで、少しでも長く滞在してもらえないかな。
とか思ってしまう私は真摯に対応というものは無理かもしれない。
「申し訳ありません。私は一度でいいから街にでてケーキというものを食べてみたかったのです」
申し訳無さそうに言うセイをみて気づく。
もし逆の立場で、上役が用意して食事とかセッティングされたら気まずくて嫌すぎる。
「いや、こちらこそ気づかず申し訳ない。そういうことであれば案内役を付けるので街を散策するといい。
嫌だろうが、さすがにセイにないかあるとまずいので、護衛も数名付けさせてもらうことになる。」
「えっ?、あ、たしかに辺境伯様が案内されるわけ無いですよね。
申し訳ありません、つい辺境伯様がお優しいので勘違いしてました」
いやいや、セイさんや、そんなことを男に言ったらいけないよ。
いつも挨拶してくれるだけで男は、あいつ、俺のこと好きかもしれないとか妄想しちゃう生き物だぞ。
そして、女性側はまったく意識すらしていないことも知っている。
そう、私は知っているのだ。
「いや、私でよければ喜んでエスコートさせていただこう。当然私がすべて支払うのでお金の心配をする必要はない。私のことは財布とでも思っていてくれたまえ」
いかん、お金の話をここでしても気まずくなるだけなのに、つい軽口ついでに言ってしまった。
「いえ、辺境伯様に案内してくれるだけで大丈夫です。せっかくお金がもらえるということなので、使ってみたいのです。」
ああ、セイはいい子だな。
しかし、こういう優しい子は無自覚に愛想を振りまいて男心を弄ぶのを知っている。知っているぞ私は‼。
いや、でも、少しは好感度上がってないかな?
いやいや、落ち着け。
やはり好感度パラメータのないリアルはハードモードすぎるな。おまけにセーブもできない。
ああ、そうだ。さすがに二人で出歩くのは噂にもなるだろうし、妹にも付き添ってもらうことにするか。
「セイ、私が護衛も兼ねて案内するが、女性が好むお店はあまり詳しくないので、妹にも同行してもらっても良いだろうか?」
「はい、問題ありません。妹さんにまでご足労かけて申し訳ありません。」
よし、これで変な噂が立つこともないだろう。
ただ、計算違いだったのは、このあと妹に付添をお願いしたときの、妹が超怖かったことだ。
二次元のジト目はいいけど、リアルだと怖すぎるね、おにーちゃん泣きそうだよ。
はぁ、妹に付き添ってもらうことにしたのは間違ったな。
応援ありがとうございます!
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