天振の賽

しろくま

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二章 進化の賽

ルールの綾

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「始めの賭け金も100面賽で決める、いくぞ。」
「待て!」
父が瞬時に叫んだ。
「2倍のルールはどうなる!ダブリングや、インナー アウター基準!点数!そして何よりもペアオフのルールがまだ説明されていないぞ!」

通常のバックギャモンではこのようなルールがある。
一、ゾロ目の時にその賽を4個扱いとする。
一、勝った時の点数を2倍にするかどうかの交渉ができる。(ダブリング)
一、自分から見て1~6マスをインナー、7~12マスをアウターという。
一、自分の駒が全て自分のインナーにある場合、自分から見て出た目の数のマスにある駒を任意の数だけ上がりにすることができる。(ペアオフ)

「さすがに気づかれたか、今までの挑戦者の中にはそれを知らずに敗れたアホもいるが。」
100面賽を手で回しながら坂上は言い続けた。

「まず、だいたい予想できると思うが、このゲームはなかなか時間がかかるから、勝負は1回のみ、よって点数が存在しないからダブリングなんてものもないし、点数による賭け金の変動もない。次に2倍のルールとペアオフのルールだが、これは適用する。最後にインナー、アウターの基準だが、これは自分から見て1~25マスをインナー、26~50マスをアウターとする。」

実はこの、ペアオフのルールを適用するというのがミソ! 通常のバックギャモンでは、始めからアウターにある駒があるので、ペアオフをされることは少ない。が!しかし!この100マスバックギャモンに置いては、全ての駒が1マス目にあるため、始めからペアオフが可能!しかも、始めに使う賽が4面賽のため、かなりの高確率!万が一1ゾロでも出されれば2倍のルールにより、計4個の駒が上がることになる!
ルールとルールが生み出す圧倒的な速さで今まで坂上は勝利を築いていった!
ゲームはそれを作り出したものが一番強い!

「さあて、長くなってしまったが、100面賽を振ろうじゃないか。」
ガゴンという音と共に、100面賽はゴロゴロと転がった。二、三度机から落ちそうになりながら少しずつスピードを落としていき、ついに止まった。その出目は...

なんと100!百万からのスタート!
「そ、そんな、事が...」
百万とは今まで大道が戦った、いや、搾り取ったギャンブラーから手に入れた金!残りの金は、食費、交通費、学費などの使えない金である!
大道の駒が取られる度に100面賽は回される!
そうして負ければ多額の借金を背負うことになる!そう!この100という出目は、井田親子にとっての運命の分かれ道を表しているのだ!

「先行はお前に譲るぜ、さっさと回しな。」
大道は4面賽を振った。たくさんの賽力を込めて、その出目は4ゾロ!自分から見て1マス目の駒を4マス目に二つ、8マス目に一つ動かした。
父は大道の理解力に驚愕した。
(すごい、賽力もすごいが、まず考えがすごい。普通ここは1ゾロを出して4つの駒を上がらせたいと思うものだが、それでは再度ペアオフのルールが使いにくいことに気づいて、わざとペアオフを1巡目に使わなかった。これで、出目に1.4のどちらかが出ればペアオフができるという幅広い待ちに受ける事ができた上に!攻めの体制も作り出している!これはいけるか?)

そう思った矢先、坂上の出目に失望した。
1ゾロ!4つの駒を上げた。
一方、大道の目は...最悪!3ゾロ!ペアオフできず!そうしている間に坂上は3ゾロ、4ゾロを連発し、次々と一つになっていく大道の駒に近づいていく!
果たして大道 どうなる!?
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