虹の向こうの少年たち

十龍

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《76》

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 ユーサリー・グロウの寝室にコフィが入ったのは、入室を要請するベルがなった直後だった。
 人払いされてからも、ずっと側の空間に控えていた。
 ネイプルス家の奴隷であれば、ある程度は主のプライベートを尊重して一人のお時間や空間を作る。
 しかしながら、グロウ家はその特性ゆえになるべく側から離れにいようにしなければならない。
 特性。
 勝手に死ぬ。
 アフタ・グロウに幼い頃から複数名の奴隷がつけられ、ジャロリーノ・エリス・ネイプルスが奴隷をつけられていなくても問題視されてなかったのはこのためでもある。
 寝室では、大きな寝台の上で仮の主が鉤針編みに勤しんでいた。
「……」
 数個の枕を背もたれにして、上下裏表定かではない掛け布団をくしゃりと腹に掛けて、黙々と、素早い手付きでレースを編んでいる。
 掛け布団の下は多分裸だろう。
 同じく裸であろう華奢な少年が、仮の主のに抱きつくようにして眠っている。
「……」
「洗ってやれ」
 主は素っ気なく命じた。
「ご主人様は、……」
「一度軽く湯浴みはしてる」
 つまり干渉するなということだ。
「その際、ジャロリーノ様は……?」
 湯浴みはしなかったのだろうか。放置していたのだろうか。この主はやや潔癖であるので、汚れていては抱けないだろう。
「……一緒に入るのを嫌がられたから、知らん」
 嫌がられたのか。思わずからかいそうになったが、そんな空気ではない。
「自分で洗ってるだろ。そのあとに何回かヤったが、汚れは感じなかった。が、色々したからな、ちゃんと綺麗にしてやれ」
 だが、腕を回してぐっすりと眠る姿をみると、今引き離すのはかわいそうでならなかった。
 コフィは変わりにベッドの端に腰掛け、主に尋ねた。
「……ユーサリー様はお身体は平気ですか?」
「あ? …………、全身アザだらけだ。床でやるもんじゃないな、やっぱり」
 ちらりと視線を向けてきた。少しは会話をする気分ではあるようだ。
「あはは。…………、……ちゃんとヤれました?」
「なんだその質問」
「ちゃんと性交できたかなー、と」
「…………」
 めちゃくちゃ不快そうに睨み付けられてしまった。
「ほら、あまり得意じゃないでしょう?」
「………………」
「あ、テクニックとかの意味ではなく。……、今回も、最初は本当は乗り気じゃなかったでしょうし」
「……大きなお世話だ」
 にしても、ジャロリーノの懐き具合は普通ではない。
 虚ろ状態だとしてもだ。まるで睦まじい恋人たちのようではないか。そしてそれを容認しているユーサリーの姿は、コフィにとっては未だに慣れない姿だった。
「ユーサリー様。……ジャロリーノ様を……愛人にでもしますか?」
 思わず言ってしまった。
 そう言った瞬間、主は編み物の動きをピタリと止めた。
「私としては、それもアリかと。もちろん、ジャロリーノ様というより、ユーサリー様側から考えてですよ? ……若くて可愛い愛人くらい作っても、良いと思いますし? ジャロリーノ様、お好きでしょう?」
「……」
「嫌いではないですよね?」
「…………」
 編み物を再開する。
「五年近く側に置いて可愛がってるんですし」
「………………」
「ジョーヌ様も、五年近く側に置いてる若い……愛人? になるのかな? そんな相手もいますし」
「やめろ。ジャロリーノが聞いてたらどうする」
「………………、そうですね。……ジャロリーノ様も恐らく発症してしまいましたから、……大事件になりそうです」
「………………、セレステの代わりだろ?」
「ああ、ジョーヌ様の若い愛人?」
「ああ」
「でしょうね。レドベリィ曰く」
 ジョーヌ・ブリアン・ネイプルスと共に戦場に赴いた側近はレドベリィとサーリピーチのみだ。
 レドベリィは最側近の奴隷将軍として陸軍総大将のジョーヌ・ブリアン・ネイプルス王に付き添っていた。
 昔ならばともかく、現代において王が前線に出ることなどまずいことだった。
 そして、貴族側から志願した側近兵士も、現代において考えられない身分の者だった。
「フー・グラファイトだろ」
 グラファイト公爵家の嫡子であり、グラファイト公爵領であれば王子と呼ばれる立場の者だ。
 かつてセレステ・ネイプルスと主従の指輪を交換した人物でもある。
 そしてジョーヌ・ブリアン・ネイプルス陸軍総大将の副官であった。
「なんだ、やっぱり知ってたんですね。調べたんですか」
「……あいつの行動パターンなんて分かりやすすぎて、調べるまでもない。それに周りから勝手にアピールしてくるしな。グラファイトからの牽制があからさま過ぎて辟易してるところだ」
「……ユーサリー様に牽制を? 凄いですね」
「……息子の代わりに抱いてるだけなんだから、牽制されてもなあ……。というか、牽制されてもなあ……。まあ、あいつ、ああいった筋肉質な男が好みだし、わりと続くかもな」
「あはは、……ユーサリー様も男らしい男がタイプなくせに」
「違う」
「違わない」
「違う」
「違わない」
「違う。たまたま成長したらああなっただけだ」
「ジャロリーノ様も成長したらジョーヌ様くらいの体躯にはなりますよ。楽しみですね」
 ネイプルス家は四王家で抜きん出て逞しい肉体をもつ。ユーサリー・グロウの眉間に深く皺が刻まれて行くのが面白かった。
「でもそーですね。……ジョーヌ様、代替品を見つけるのが異常に上手いですし、セレステ殿下の代わりにフーを可愛がっているだけならまだしも、ジャロリーノ様の代わりを探そうとしたら……すぐ見つかりますからね。めちゃくちゃ簡単につかまりそうですし。アフタ様」
「………………」
「このままフー・グラファイトだけを楽しんでてくれるといいですよね」
 軍隊での絆というものは強固であり、また緊迫した状況下で結ばれた肉体関係はその後の関係性にも歪みをもたらす。
 恋愛や情とは違う種類のなにかが生まれているだろう。
 特に、二人には共通の復讐の動機があった。
 その為に一線を越えることは禁忌に近いものがあったし、同時にその線は簡単に越えられただろう。
 関係を持つにあたり、セレステ殿下の代替品だけではない別の理由が生まれているのは明白だ。
 コフィはため息を堪えた。
 チャコールがこの件に関してかなりナイーブになっているからだ。
 同時に、新しい主としてジャロリーノを受け入れるための障害にもなっている。
 あれと同類になりたくない、と。
 あれとは、多分フー・グラファイトのことだとは思うが、若干ネイプルス王への不快感も孕んでいるように感じられる。
 そりゃそうか、と今度はため息が出た。
「………………。その前にジャロリーノを抱いてやれよ」 
 思いがけず、ユーサリー・グロウが言う。
 コフィは一瞬だけ息を飲んだ。
「っ。……いやいや、ジョーヌ様が必死で呪いから逃れようとしてるんですから、そんな元も子もないこと……」
「正気のこいつを抱いてやれって。それが一番だろ。……私の愛人じゃなく、ジョーヌの妻にしとけ。……ネイプルスの祖父の代だかその前が確かそうだろ? 自分の妻を殺して、長男を内縁の妻だか夫だかにしたの。王座は次男に継がせて、自分と長男は大公位に退いて、田舎で暮らした、みたいな」
「アメシスト様の父王とお兄様ですよ、それ」
「……。そうだったな。……」
「アメシスト様がこの呪いに嫌悪感が激しいのはそのせい」
「ジョーヌが呪い拗らせたのもそのせい」
 今の王子の代で、王家の特徴がより濃く出ているのはオーカー・ビスマスだと言われている。
 では今の王の代、つまり前の王子の代で一番王家の特徴が出ていたのは、ジョーヌ・ブリアン・ネイプルスだった。それを周囲にまったく悟らせなかったのは凄いと今でも思う。
 城の中でどんなに辛い思いをしても、一度学校にいけば、輝かしいネイプルスのいけすかない王子様だった。
 自室でユーサリー王子にしがみついて泣きながら呪いが薄くなるまで耐えて、絶望しながら父王の寝室に忍び込んで、嘆きながら朝を迎えるなんて苦痛を微塵も感じさせない王子だった。
 コフィはその悲しいギャップを見るのが辛かった。
 ユーサリー王子付きだったのに、ジョーヌ王子が気になってしょうがなかった。
 慰めてあげたくてたまらなかった。
「今のネイプルス王子は四人ともジョーヌ様にハート飛ばしてたので、こんなに拗らせるとは思わなかったんですけどねー」
 コフィはぐったりと眠っているジャロリーノの頭を優しく撫でた。
「……ライア様とジョーヌ様は一線は越えてましたからね」
「……。けど……呪いは発症してなかった」
「らしいんですよねー。じゃあ純粋な近親姦?」
 王家の近くで生きてきた身として、それに対する知識と経験はある。偏見も少しはあるが、彼らにとって当たり前の事象で、同時に当たり前の苦痛であると理解はしている。
「長い歴史の中で、近親姦を繰り返してきたんだ。その遺伝子が脈々と受け継がれてたっておかしくはないだろ」
「じゃあ呪いなんてものな実はないんでしょうか」
「発症と発現の違いだ」
「当事者としての考え方ですか?」
 この主の呪いの出方も強烈ではある。むしろグロウの呪いは同性愛より短命のほうが問題で、性指向などあってないような問題だった。
 なによりその美しすぎる外見から、こいつら絶対にストレートじゃない、と思われてきた。むしろ異性愛者と言われたほうが驚いてしまうだろう。
「……。…………、呪いが発症すると、意識が別の次元に行くんだ」
 ユーサリー・グロウが静かな声で喋り始めた。
「ジョーヌたちがどうなるかは、直接経験なんてしたことないからな、はっきりと断言は出来ないんだが、……少なくとも俺の場合はそうだった」
「それで、自傷行為におよんでしまう……と?」
「…………、十歳だったな。……初めて意識した同性を見つけたときがそうだったんだ」
 かつてのご主人様が、その時のことを話すのは初めてだった。
 当時、目の前の男が少年だったとき、一人の男子生徒に恋をした。
 本人は決して言わなかったし、周りにも悟らせないようにしていたが、近しい人間はユーサリーが誰かを好きなのは薄々感づいていて、それをからかったりもした。
 けれどどんなに煽ってもユーサリーは相手が誰なのか口を割らなかった。
「アフタと同じく、俺も親から五歳の時に同性愛と短命の呪いってやつを説明された。これはグロウ家のしきたりだ。聞いたとき、そんな話しいっさい信じられなかった。自分は異性愛者だと信じてたし、男同士でキスするとか気持ち悪くて仕方ない。絶対に呪いの通りにはならないって誓ったほどだ」
「……初耳なんですけど」
「お前なんかに言うかよ、浮気野郎」
 浮気野郎。
「……けど、違った。あいつを見たとき、なにかが起こったんだ。一目惚れとかだと思いたい。凄く、惹かれて、そいつしか見れなくなって。同じ教室にいるだけで嬉しくて幸せで、でもそいつが男だから……物凄く嫌で死にたくなった。……一目惚れした、……と思いたい」
「……思いたいって、それ一目惚れですよね?」
「……。何かが外れたんだ。安全装置が外れたと言えばいいのか? それが切っ掛けだった。それが全てのはじまりだ。一回目の発症、……そのせいで発現したんだ」
 後悔、怒り、憎しみ、そのような強い負の感情が見え隠れし始める。コフィは少しだけ警戒した。このまま周りに当たり散らすか、もしくは自傷に向かう可能性が脳裏をよぎる。
「…………、そいつを好きになって、…………、絶対に無いと思ってたのに、男に欲情した……。……男に……、男の身体に興奮するようになった。……同性愛者になんてならないと誓っていたのに、……男の身体にしか興味が湧かない! しかも、時々頭のどこかのスイッチが切り替わるような、ブチンってなにかが切れるような、今までと違うような感覚になるんだ。…………、それが発症だ」
 思春期に性的な話題が男子間でトレンドになるのに、この目の前で少年と裸で抱き合っている男は、そのトレンドには乗らなかった。単に、話すのが苦手なんだな、と思っていた。が、うちなる葛藤は思っていたより激しかったようだ。
 なにより、少年期から同性との性的行為は奴隷との主従間やジョーヌとの間で行っていたからだ。
 では、自分との行為も、ただただ呪いの影響だったのだろうか。
 不意に虚しさが襲った。
「……違うときもある。……その、単純に、そいつをおかずにオナニーしたときとか……」
「……」
 うわあ。
 あの性に潔癖ぎみのユーサリーにとんでもない告白をさせてしまった、とコフィは視線を泳がせた。
「そいつをおかずにする時は……単純に俺がそいつを好きだからなんだ。……俺、やっぱり同性愛者なんだな、なんて後悔しながらあいつのこと妄想して、死になくなってたんだけど。……そいつ以外には絶対に欲情したくなかった。意地でも」
「意地」
「あたりまえだろ! 舌噛み切ってでもだ」
 たしか一回ほんとに噛み切って自殺しようとしたことがあったな、と思い出した。
「だが、ブチンってなにかが切り替わる。欲情というか、男じゃないと、ダメになるんだ。男の身体で自慰に耽りたくなる。というか、男を襲いたくなる。好きなやつじゃないやつで、……、あいつ以外で……、」
「……、では、今まで関係してた方たちは……」
「……言っとくが、その辺の男をやみくもに襲ってないからな?」
「すみません」
「……、ギリギリ許せる相手しかヤってない。……だから、周りに不細工とかいさせたくない」
 じゃあ自分はギリギリ許せる相手だったか、とコフィは安堵した。そして、周りに絶対に不釣り合いな輩を近寄らせないように決意した。
「なんとか同性愛者であることを受け入れて、なんとか生活をして……。結婚が決まったときは正直すっごい嬉しかったんだ」
「……いやいやいや、嘘つかないでください」
「本当だ。異性愛者に戻れるチャンスだろうが。俺はジョーヌと違って率先して野郎を求めてたわけじゃないんだよ。ま、それも無駄なあがきだったが」
 ユーサリーは編み物を完全にやめて、ジャロリーノを抱き寄せた。
「最初の妻との初夜はスムーズに上手くいった。あいつ相手の時みたいに……興奮するとか愛おしいとかはなかったんだけど、好きでもない相手とやるならこんなもんだろ? って感じで、そこそこお互いに満足して終えれたんだぞ?」
 ドヤ顔でにやつかれた。
 が、それも一瞬だった。
「何回目か忘れたが、……、いきなりだ、いきなり、またブチンって意識が変わったんだ。……いきなり、女が無理になった。……、気持ち悪いとかそんなレベルじゃない。ありえないレベルだ。立つとか立たないとかじゃなく、同じベッドにいることができなかった。肌を触るのですらできなくなった」
 青ざめながら少年を抱きしめている。
「無理、本当に無理、男じゃなきゃ無理、女は無理。……混乱に混乱を重ねて逃げ出して、側にいた男を無理やり襲ったくらいだ。……それがハイジなのが不幸中の幸いだったが、……それから恐くて……。女とセックスするのが恐くてしばらく子作りできなかった。……、二人目の妻のときは、初夜は最初から男とからんで興奮してから挑んだ。ありえない屈辱……。……アフタを作るときは、あの頃がほんとにキツくて。頻繁に頭が別次元に切り替わるから、男に欲情するし女は無理になるし、……。……。もう、普段から同性愛者でいいから、もう認めるから、あのブチンって切り替わるのやめてほしい……そう何度願ったかしれない」
 はあぁ、と深く息を吐き、ジャロリーノを抱きしめなおす。
「……、ネイプルスの呪いも、……普段から近親者に恋愛感情を抱いているのは『発現』。常に近親者に恋に近い感情を抱いているのがネイプルスだ。……私が男に好意を抱いてしまう苦痛よりもずっと厳しい苦痛があるような気はする。……もしも自分が……と考えたら、頭を銃で撃って死ねる。迷わず死ねる」
 そもそもグロウ家は、死ぬことに迷いがない。だから困る。
「発症は、あの意識が切り替わるあの瞬間に近い感覚なんじゃないかと思う……」
 ユーサリー・グロウはジャロリーノを抱き抱え、たまに優しく肌を撫でている。
「……発症して、……親子で一晩過ごした後のネイプルスのやつら、見たことあるよな?」
「……ええ」
 激しく愛し合ったはずの父と息子は、まるで今までの愛がまやかしだったかのように冷ややかな関係になる。
「物凄い後悔らしいぞ」
「……」
「この俺が、こいつ死ぬんじゃないか? と不安になるくらいにはな」
「……」
「こいつらは発症しちゃまずいんだ。発現レベルで愛し合ってるのがちょうどいい。ジョーヌとライアの関係性は理想だった。セレステにどこまで手を出していたかは分かんないが……、いや、逆か。セレステが、どこまでジョーヌにすがり始めていたかわからないが、が正しいのか? ……やっぱ良く分かんないな、こいつら」
 こいつら、と言ったあとにユーサリー・グロウはジャロリーノ・エリス・ネイプルスの額に口づけをした。
 そして愛おしそうに抱き締めなおしている。
 本当に愛人にでもすればいいのに。
 アフタ・グロウには申し訳ないが、このユーサリー・グロウを見ていると、この可愛そうで可愛らしい少年を取り上げたくはなかった。
「……コフィ、……そういえば頼みがあるんだが」
「お風呂でしたら、もうユーサリー様がいれて差し上げたらいいですよ」
「そうじゃない。……違う頼みだ。お願いがある」
「お願い? ……これは本当に明日は蛙が降りますね」
「解毒剤くれ」
「……」
「わけあって用意した薬全部使ったから、ヤバい」
「……全部?」
「そうだ」
「神薬ぜんぶ?」
「神を堕胎するやつはさっき飲んだ。私も、ジャロリーノにも飲ませた」
「……媚薬ぜんぶ?」
「ぜんぶ使った」
「……あなたがつくったあの禁止薬物もぜんぶ?」
「ぜんぶだ」
「……わたしが聞いてるのはあなたが学生時代に面白半分で作った男も女も想像妊娠させる副作用のあるあれのことですが?」
「その神秘の劇薬もだ。いやー、あれ作った俺天才じゃないか? 凄かったぞ」
「……ジャロリーノ様まで想像妊娠させてませんよね?」
「だいじょうぶだ。ちゃんと出産までさせたから。つか、孕ませる薬だ」
「だいじょうぶだ、じゃねーから! ただの副作用だろうがそれ! 最悪だなお前! ちょっと待ってろバカ野郎! あとそれ最初に言えよ!」
 コフィは部屋を飛び出した。
 目指したのは自分が与えられている秘密の研究部屋。
 代々受け継がれるグロウ家隠密に許されている秘薬の研究。それを継いでいるくせにネイプルスに鞍替え、いやジョーヌに惚れてグロウを捨ててきた自分が、ネイプルス城でひっそりと毒薬を製造している場所だ。
 今薬漬けになってるかつての主と、薬依存症で苦しんでいる今の主の息子を助けるために、速やかに解毒の薬液を作った。
 一分一秒を争って難しい調薬をして戻ると、

「あ、あん、あ、」

 と、寝ぼけたジャロリーノとユーサリーが可愛らしく愛撫をしあっていた。

「お前らいい加減にしろよ!?」


 続く
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