神様のお導き

ヤマト

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プロローグ

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 僕の名前は山上拓斗。どこにでもいる平凡な社会人だ。容姿も普通。身長体重も普通。成績も普通。ごく普通の家庭に生まれ、普通の両親の元で普通の妹と普通に育ってきた。
 しかし、ひとつ違うのは、僕が務めている会社が所謂ブラック企業というやつだ。上司はとても厳しく自分に甘い。少しでもミスがあれば部下を罵倒し、時には暴力や羞恥的な命令を下した。残業も部下に丸投げで自分たちはキャバクラや居酒屋で楽しくやっている。
 僕は、そんな社会生活にくたびれ、とうとうとんでもない事件を起こした。それは会社にとってはどうでも良い事件かもしれないが、僕にとっては人生でとんでもない事件だった。
 いつものように上司にしごかれ、泣きながら夜道を帰宅していた時の事だった。
「…仕事…やめたい…」
 いつもと同じ愚痴を零し、疲れきった体を無理矢理動かして、フラフラとした足取りで夜道を歩く。家に帰るまでの近道で人気のな暗く寂れた公園を通る。街灯はあまりなく、勿論人気も無い。ただ深夜を回ると社会から外れた不良がたむろするので、正直僕もあまり通りたくはない。今日は、そんな不良がたむろしている日だった。目に付いた時には引き返すに引き返せなくて、見事に不良のターゲットとなってしまった。
「おい、兄ちゃん」
 数人の若い男達がくたびれた公園のベンチから立ち上がり、僕の逃げ道を塞ぐように取り囲んできた。僕は不良の顔を見るのも怖くて、俯いてギュッと仕事用のカバンを握りしめる。
「こんな時間に何してんの?」
「ばっか、それは仕事だろ!」
「お勤めご苦労様でーす!」
 不良たちは僕をからかうように笑って、肩を軽く叩いてきた。それだけで体が震え、ビクリと身を強ばらせてしまう。
「なーに? ビビってんの? 大丈夫大丈夫、ボクらお兄さんが言う通りにしてくれたら何にもしないからー」
「ねね、お金持ってんでしょ? ちょっと俺らに財布渡してくれるだけで良いから」
 そう言ってゲラゲラと下品に笑いながら、僕のカバンに手を伸ばしてきた。普段の僕なら言う通りにするだろう。しかし、今日は生憎給料日。今どき手渡しなのは会社を辞めづらくする為だろうけど、手渡しの給料は僕のカバンの中。薄給の僕には生きていくのがやっとの給料で、貯金など無いに等しい。家賃や生活費を今全て取られると生きて聞けなくなる。僕はカバンを取られまいと咄嗟にカバンを胸の中に抱き抱えて来た道を全速力で逃げようとした。が、しかし、そんな僕の行動を分かっていたかのように、不良の1人が僕の首根っこを掴んで、ベンチの方へと勢いよく放り投げた。それが、最悪の出来事だった。
 僕は後ろから引っ張られた勢いで体のコントロールが上手くできず、そのまま運悪く、ベンチの角に頭を打ってしまったのだ。物凄い痛みと共に視界が揺らぎ、視界が暗くなる。
「お兄さん逃げない逃げない」
「ね、聞い…る」
「お…い」
「なぁ…や……ね」
 不良たちの声も遠のいていく。音が静寂へと包まれる。視界は黒く染まり、僕の意識もはるか遠くへと遠のいていった。
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